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就職人気ランキングの定番である「総合商社」業界ですが、その仕事内容について理解できていますか?総合商社志望の学生の皆さんに、抑えるべき基礎知識、そして5大商社の紹介とその違いをお届けします。

総合商社とは?

総合商社の仕事内容

総合商社のビジネス領域は「通信衛星からミネラルウォーターまで」と評されるほど、非常に幅広くなっています。その幅広さ故に、今いち商社がどのような仕事をしているのか想像しにくいと感じる学生が多いようです。
総合商社の仕事内容は主に二つに分けられます。一つが仲介業者として買い手と売り手を結びつける「トレーディング」、出資者として企業経営に参加する事業投資があります。

トレーディング

「トレーディング」は総合商社が伝統的に行ってきた 仕事方法です。商社独自の物流システムや 金融・保険機能、情報機能を利用して、売り手・買い手との仲介機能を果たすビジネスです。商社はこの仲介を果たすことで得られる手数料(コミッション)と供給者からの買値と需要者の売値の差額(マージン)によって、利益を得ています。
商社は商材の受け渡しをするだけでなく、この受け渡しを円滑にするために、輸送手段を準備、融資・保険機能の付与、情報提供を行っています。

 

 

事業投資

商社がとるもう一つの経営手法が「事業投資」です。事業投資ではまず、目をつけた企業の株式を買収し、その企業の大株主になります。事前にトレードの拡大や関連ビジネスからの収益拡大が実現可能かについても判断することで、企業を選定しています。トレーディングでは、商社は仲介役でしたが、事業経営では経営参画や子会社化などを通して、経営に総合的かつ継続的に参画します。一つ例を挙げてみます。

 

 

上の図では小麦の収穫からパンを製造・販売するまでの流れとそれに対して、総合商社がどのように関係しているかを示しています。原料の調達から製造、加工、販売までの一連の流れを「サプライチェーン」と呼びますが、商社はその過程の中でそれぞれの企業や業者に対して事業投資を行っています。業者・工場・小売店を出資や買収を通して、商社グループに取り込み、効率的な商流を形成しているのです。メーカーや小売業と違い、すべての段階で関わることができることが商社の特徴であり、魅力であるといえます。
また現在は、この事業投資が主な収益となっています。

5大商社とその違い

総合商社の中でもトップ5の商社を「5大商社」と呼びます。どの商社も事業内容は似ていますが、得意分野や力を入れている分野、社風は異なっています。志望動機を明確にするためにも、その違いをしっかり 理解しておきましょう。

三菱商事

組織の三菱」と呼ばれ、三菱グループとしての結束力の強さが特徴で、協調性や年功序列の社風があるとされています。バランスよく様々な事業を手がけて経営していますが、利益として高いのは天然ガスや金属などの資源分野でしたが、2016から2017年の価格変動の影響を受けて多額の損失を出したことをきっかけに、非資源分野に重きをおくようになったとされています。食料・生活消費財といった生活産業事業に力を入れ、ノルウェーの鮭・マスの養殖会社「セルマック」の子会社化やシンガポールのコーヒーやナッツなどの農産物会社の「オラム」への出資を行いました。2017年にはローソンへの出資比率が50%を超え、連結子会社となっています。2020年に入って事業環境が改善したこともあり、資源分野である再生可能エネルギー事業に改めて積極的に投資するなど、脱炭素に向けた動きに力を入れています。2023年3月期の連結決算は、初めて純利益が1兆円を超え、2年連続で過去最高益を更新しました。

 

「中期経営戦略2024」では、成長戦略の柱としてDX戦略エネルギートランスフォーメーション(EX)の推進などを掲げています。それを受け、ローソンをはじめとする食品流通で、AIを活用した新商品を含む需要予測・発注システムを開発しました。過去の販促計画やプロモーションの情報を読み込ませることで実現しており、コスト・エネルギー削減を目指しています。また2023年2月、低・脱炭素社会の実現に向けて、再生可能エネルギー市場を代表する電力会社のRWE Supply & Tradingと韓国の総合化学会社であるLOTTE CHEMICALの2社と、燃料アンモニアのサプライチェーン構築に向けた協力関係を結びました。

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三井物産

三井物産は個性を尊重する社風があり、「人の三井」と称されます。 三井物産はエネルギー・資源分野に強みがあります。現在も、天然ガスや鉄鉱石の事業への投資継続を打ち出し、「強い資源をより強く」する方針も出していることから、資源を強みとする姿勢には変わりはないようです。その一方で、シンガポール、マレーシア、インド、トルコをはじめ10カ国に広がるアジア最大級の民間病院グループIHH Healthcare Berhadでの病院経営といったヘルスケアの分野、穀物事業のマルチグレインへの投資といった非資源分野へも力を入れています。資源分野への依存から脱却しつつはあるものの、社会情勢の影響を受けた円安や資源高により資源分野が好調となり、2023年3月の連結決算では純利益が初めて1兆円を超えました。その結果、伊藤忠と競い合っていた業界2位の座を奪還しました。

 

今後の成長戦略の一つとして、低炭素社会の実現を掲げています。2023年7月、太陽石油と、エタノールを原料にした持続可能な航空燃料、及び軽油の代替燃料であるリニューアブルディーゼルの製造に向けた共同検討を開始しました。2023年8月には、アメリカで再生可能天然ガスの生産・販売を手掛けるテレヴァ・リニューアブルズ社に33.3%出資参画しました。加えて博報堂との共同プロジェクトとして脱炭素アクションを促進する事業会社「Earth hacks」を設立し、メディア発信などを行っています。

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伊藤忠商事

野武士集団」と称され、周りに流されることなく挑戦する社風があるとされています。繊維卸商として事業を始めたことから、 食料や繊維、情報などの非資源分野が強みです。そのため、2015年のエネルギー資源の大下落の際も、影響はさほど受けず、安定的に利益を生み出し続けました。ファミリーマートや日本アクセルなどの国内流通網、Dole、プリマハムといった食料品関連が稼ぎ頭といえます。また、繊維関連ではアルマーニ、ポール・スミス、コンバース等など、多くのブランドビジネスで成功を収めています。多くの人が名前を知っている企業・商品を扱っており、消費者と接点があることは、流通の川上を担うことの多い他の総合商社とは異なる大きな特徴です。近年は、中国をはじめとするアジアの市場開拓を強化しており、中国の政府系企業CITICと、タイ最大規模の財閥であるCharoen Pokphandとの業務・資本提携しています。

 

2023年までの中期経営計略によると、基本方針として「マーケットインによる事業変革」と「SDGs貢献」を掲げています。2022年12月には、AI/IoTに関して高い技術力を持つIdein株式会社と資本・業務提携しました。共同開発したAIカメラを活用した顧客行動分析などを子会社のファミリーマート店内の広告に導入しました。伊藤忠の強みである消費者との近さを活かして他分野への横展開を進めます。2023年1月には、リサイクル・リユース事業を手掛ける株式会社エコミットに出資しました。繊維・ファッション領域の大量廃棄問題の改善、持続可能な成長を目指しています。

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住友商事

「自利利他公私一如」「浮利を追わず」を理念に掲げており、堅実で落ち着いた社風をもつとされています。そのためか、優しい社員が多いそうです。IT・メディアと不動産を強みとしてもちます。具体的には、メディア分野で JCOMを主軸に、「ケーブルテレビ、Wifi,電力」のパッケージ販売、テレビ通販大手のショップチャンネルに出資しBtoCのプラットフォームを作っており、他社の持っていない領域です。さらに、第5世代移動通信システム(5G)関連事業、デジタルメディア関連事業、DXやAIなどの新技術に関する分野を積極的に取り込んでいて、時代の変化への対応力があります。これまで培ったきた通信事業の知見やDXのノウハウを活用し、2022年10月からはエチオピアにサービスを提供しています。

 

2023年までの中期経営計画で重要視されているのが、DXによるビジネス改革です。2023年3月には、独立系投資会社のREVA株式会社に出資参画し、REVA社と共同で、中堅・中小企業のDX推進を軸としたファンドを組成しました。また、2023年6月には、北米における硫酸事業拡大に向けてSaconix社を完全子会社化しました。新たに米国西部、メキシコ湾岸地域で物流拠点を獲得し、全世界の海上輸送取引の約20%に相当する年間約350万トンの硫酸を取り扱うことになります。

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丸紅

非財閥系で、若手社員に対して、裁量のある仕事に挑戦させる社風があるとされています。電力事業に強みをもちます。2016年4月に導入された電力自由化を背景に、電力小売り事業にも参入しました。現在は世界21か国において、12GW以上の発電事業を運営しています。加えて食料事業にも強みを持ち、特に穀物の取扱高は業界トップの実績を誇ります。そこから派生したアグリ事業やフォレストプロダクツの分野でも大きな収益を上げています。

 

近年、環境問題への取り組みとしてサステナブルなグリーン事業の強化を掲げ、環境負荷の軽減や脱炭素社会への移行に注力しています。2022年2月上旬に保有する全3カ所のデータセンターで消費する全ての電力について、再生可能エネルギー由来への切替が完了しました。2023年7月には、世界で初めての取り組みとして、バイオ燃料技研工業株、田渕海運と共同で、グリーンメタノールとバイオマス系廃液を活用した国産バイオ燃料を高圧式LPG船での使用しました。一航海あたり約19%のCO2排出低減を実現します。

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5大商社比較分析のまとめ

総合商社の仕事内容解説と5大商社の特徴、最近の動向について比較を行っていきました。扱う商材や事業領域が多様で、その仕事内容をつかむのは大変ですが、その多様性こそ商社の魅力といえます。5大商社は似た要素も多くありますが、なぜ他の商社でなく自社を志望するのか尋ねることも多く、社風に合致しているかどうかも重要視しているため、この記事を参考にその違いを明確にしてみて下さい。