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総合商社は様々な事業を行っています。しかし、会社としてそれをきちんと管理しなければなりません。今回は少しマネジメントよりのお話ですが、実はみなさんにとっても割と早い段階で身近な話になる可能性もあります。

総合商社の事業管理

では、総合商社で事業を管理するというのはどういうことなのでしょうか?

みなさんがもし総合商社のマネジメントを行う人だったら、どうやって事業を管理しますか?

実際様々な考え方がありますし、全てを凌駕する考え方はないでしょう。例えば、会社の事業の成長性を見積もって管理することもできます。その事業の市場でのポジションを考えて管理することもできるでしょう。資産のことをアセットと言いますが、そのアセットを上手にマネジメントする必要があるのです。
今回はその中で、リスクリターンを考える方法をご紹介します。アセットからはどのくらい利益がでるのかが大切です。会社としても、自社の利益にどれくらい貢献するのか把握しておきたいわけです。一方で、世の中にはハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンという言われかたがなされるように、もうかる事業はそれなりにリスクを抱えていることが大きいです。つまり、ハイリスクのものばかり持っていても会社はそのリスクの大きさから不安定になりがちですし、ローリスクのものばかりでは全然収益があがらないのです。こうした考え方を元にして、各社はそれぞれ自社の特性に合わせて管理の方法を工夫しています。

三菱商事

三菱商事では「実質リスク」という考え方を取り入れています。これは、全体のリスクポートフォリオを上手に管理するために、資産ごとのリスクを定量化するという方法です。エクスポージャー(損失が発生する可能性がある資産の大きさ)に損失率を掛け合わせて求めます。あるプロジェクトの売掛債権が500あり、資産は200だとします。このとき、売上債権が1%の割合で貸し倒れ、資産も一年以内に倒産する確率が5%あるとします。この例の実質リスクは500*0.01+200*0.05=15です。これで社内のリスクをみやすく管理しているわけですね。
商社がリスクマネジメントをしっかりする理由はわかりますか?簡単ですね、それだけ様々なリスクにさらされてるんです。積極的に新興国で鉄道を敷設しているときに、それは国内の敷設と同じ感じで進行するでしょうか?違いますよね。もしお金を向こうの政府から頂いている場合は、政府の政治のリスクもプロジェクトで勘案しなければなりません。そもそも、工事に人が雇えるか分からないので、開発が遅延するリスクもあります。開発で必要なお金を調達する際に急にレートが変わればお金が足りなくなる為替リスクもあります。このように複数のリスクを考えなければならない一方で、多様なリスクを比較する必要もあるので、実質リスクのような独特な方法が用いられるのです。
こういう話が面白いと思った人は商社のコーポレート部門の働きについて深めてみましょう。どの商社にもある機能ですから、個社の志望動機を練るのは難しいですが、会社ごとの考え方の違いなども調べてみましょう。

リスクに他にどんな使い方があるの?

三菱商事の例を紹介しましたが、どの会社も自社でなんとかリスクマネジメントするために、工夫を凝らしています。そもそもそんなマネジメントを行う必要があるのか?と思われる方もいらっしゃると思います。
それは会社を運営する上で必要な機能です。リスクの自体はきちんと説明されることが重要です。株主に「こういうリスクもありますが、それを考えた上でもこの事業は魅力的なので取り組んでいます」という説明がなされる必要があるからです。
商社ではもう一つ役割があります。それは社内での信号機の役割です。つまり、たくさんの案件が舞い込んでくる中で、どれをやり、どれをやらないのか判断する時にリスクが重要になってくるんですね。これは黄色信号だけど、やろう!などというイメージです。昔、三菱商事ではエネルギー事業で、これがとん挫すれば三菱商事が何回か倒産できるというプロジェクトがありましたが、それは赤信号でも国益のため、将来のためにOKが出されたのです。
実際はそんなに簡単な話ではありませんが、総合商社にはそうした役割を担うことで会社の利益を支えている部門があるというのは是非知っておいてください。そしてこういう話に興味がある人は総合商社のコーポレートの機能を深めてみましょう