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院生(修士)の就活事情について紹介します。院生ならではの就活術や院生が就活で悩むであろうポイントについて、2019年卒の院生が解説していきます。研究とどうやって両立すればよいのか、院生だから有利・不利はあるのかといった疑問について記事にしました。

院生の就活

院生の悩み

院生共通の悩みは「研究との両立」でしょう。進学してすぐの修士1年の夏にはインターンシップがあるため、研究を新しく始めてすぐに就活を始めなければいけません。また、学会に参加する院生は、準備と並行して就活を行っているのも実情です。このような状況から、いかに効率的に時間を使い、就活と研究を両立させるかというのが院生就活のポイントになります。

院生と学部生

では、院生は就活で「有利」または「不利」になるのでしょうか。結論から言うと、院生であるから有利ということはありません。院生か学部かというよりも、新卒の採用においては、人柄とポテンシャルが評価されるのが通例であるため(企業側は新卒の学生を長期的に育て上げて戦力にしようと考えるため。詳細は下で説明します。)、そもそも専門的なスキルを求めていることが少ないのです。
ただし、理系技術職の場合などは実験等で培った専門的なスキルが求められることも多く、院生という括りで全体を見渡すと、有利になる場合も不利になる場合もあり、足し引きするとゼロに近くなります。以下で有利になる場合と不利になる場合について説明していきます。

院生が就活で「有利」になる場合

まず、有利になる場合ですが、院生は研究をメインにおこなっているため、論理的な思考力が鍛えられている場合が多いです。研究背景を踏まえ、仮説を立て、検証し、考察を行う、そして考察からさらに仮説を立て検証していくというサイクルを繰り返すため、意識せずとも学部生に比べると論理的な考え方が身についている可能性が高くなります。
筆者の場合、研究室や専攻の友人たちに比べれば論理的な思考力は劣っている方でしたが、就活で学部生とグループワークを行ったときには、人事から論理的な思考力を評価されて驚いたことを覚えています。

院生が就活で「不利」になる場合

一方、不利になる場合ですが、「院生だから」という謎の理由で期待値が高く設定されることもあります。院生は論理的な思考力が武器になると先に述べましたが、逆に言うと、論理的な思考力があるのは前提として考えられます。
したがって、ある程度、期待に沿うような思考力をアピールすることができなかった場合は、期待値が大きかった分、良い評価に繋がりにくくなります。例えば筆者の場合、特にグループディスカッションやグループワークでメンバーに学部生が多いときに、このような雰囲気を感じました。


筆者の場合、リーダーシップを発揮して力強くメンバーを引っ張っていくよりも、柔軟な思考でアイディアを出し、周りとの調和を大事に議論を進めていくタイプでしたが、最年長であるがゆえにリーダー的な役割を任されることも多々ありました。当然ながらいつもの自分とは違う立ち回りをせざるを得なかったため、就活を始めたばかりの時はそのギャップに苦しむこともありました。
数をこなすに伴い、その立場に慣れていきましたし、自分なりのグループ内での立ち振る舞い方も身に着けることができたので、良い経験だったと感じています。その他の院生就活の特徴としては、単純に、研究があるために就活に割く時間が確保しづらいこと、大学でも院生の母数の少なさから就活仲間を作りにくく、情報を得にくいということが挙げられます。例えば、同じ大学院における就活人口などは自分で左右することができませんので、自らができることとできないことの線引きをして、できる範囲内で効果的に活動することを意識していきましょう。

「専門性を活かしたい院生」と「ポテンシャル重視の採用担当」

専門性をどう活かすか(就活生の立場から)

院生は学部生と比べて、自らが専門とする分野についての専門的な知識を持っています。そのため、自分の専門分野を活かした仕事に就きたいと考える院生は非常に多くいます。私も大学院で都市計画について学んでいたため、就活を始めるときは都市計画・まちづくりに関われる行政やディベロッパーから見始めました。
結局、自分の性格等も考え、行政ではなく民間のディベロッパーを志望することに決めたのですが、都市計画やまちづくりについて何も知識のない学生よりは優遇されるのではないかと少し期待していました。しかし、実際は違いました。理系技術職は別ですが、総合職として就職をする際に優遇されることはほとんどなかったのです。

総合職志望の新卒には専門性を求めない(採用担当の立場から)

私が勘違いしていた点は大きく2つありました。1点目は都市計画・まちづくりに関する知識は新卒採用の場で求められていなかったこと、2点目はディベロッパーで都市計画やまちづくりの知識を活かすことができるのは一部の部署だけだということでした。


1点目に関して、技術職を除くいわゆる総合職を志望する際は、どの業界を受けるにしても「就活時には」専門知識はあまり求められません。なぜならば、企業側の方針としては、新卒で採用する学生は長期的な視野で育成し、中途採用で即戦力を獲得するというのが一般的だからです。したがって、採用担当も新卒の学生には専門的な知識は期待しておらず、どちらかというと今後の伸びしろを見定めることになります。
「就活時には」と書いたのは、もちろん専門的なスキルが不要なのではなく、入社後に研修等を通して身に着けることができるという意味です。院生就活の場では、このような就活生と採用担当の考え方のずれが起きやすく、結果的に就活がうまくいかないケースが見受けられます。このようなずれがあることを認識したうえで、エントリーシートや面接に臨むことが重要だといえるでしょう。


2点目に関して、そもそも総合職で入社する場合は、大学院で習うような専門的な知識をそのまま活かせることはほぼなく、活かせるとしても一部の部署に限られるという現実を認識しておく必要があります。総合職の場合、例えば営業を行う部署に配属されるかもしれませんし、人事、財務・経理、業績管理などに回る可能性もあります。大学で経理について学んでいた学生などは別ですが、基本的にこのようなスキルは入社後に身に着けることになります。
筆者が志望していたディベロッパーでも、都市計画やまちづくりに直接かかわることができるのは一部の部署で、基本的には土地を仕入れるための地権者との交渉や、お金周りの計算、テナント誘致のための営業活動などがメインとなっており、空間のデザインの構成などに携わることができるのは一部の社員だけでした。このように、学生がその業界や企業に対して持つイメージと実際の社内の状況にはずれがあるため、注意が必要です。筆者の場合、イベントやOB訪問などを通してこのずれを埋めるために実際のエピソードを聞くようにしていました。

院生が就活でアピールできる点

なぜ大学院に進学したのか/大学院で何を得たのか

ここまで、院生が就活の場で、スキルを強みとして押し出そうとするとうまくいかない理由を説明してきました。では、エントリーシートや面接ではどのように大学院でのエピソードを表現すればよいのでしょうか。突き詰めていくと、採用担当はあくまで学生の「人柄やポテンシャル」を知りたいため、「大学院に進んだ理由」や「大学院で得たこと・考え方」を論理的に示すことが効果的だと言えます。
修士の学生の場合、2年間で何を得ることができたのかを考え、そこに至るまでの過程を深堀していきます。自分が大学院に進学した理由まで行き着いたら、出てきた事象や考え方を時系列に並べ直し、簡潔に整えてエピソードとして語れるようにしておきましょう。そのエピソードの一部に、目的に至るための「手段としてのスキル」が位置づけられることになります。どうしてもスキルをアピールしたい場合は、このようなかたちでエピソードに入れ込むか、突き抜けた結果を残して定量的に示す必要があるでしょう。

修士院生の就活事情まとめ

以上が、院生の就活に関する解説でした。基本的に新卒採用の場で、院生と学部生の違いはないものと考えてよいでしょう。ただし、上記で述べたような院生と採用担当者の意識のずれを認識したうえで、学部生より数年多く研究した理由やプロセスについて語れるようにしておくと、「しっかり考えて過ごしてきた」ことをアピールできるでしょう。