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こんにちは。ミキワメ運営局の大野です!

 

新卒で日系大手グローバルメーカーに入社し、グローバルマーケティング及びプロダクトマネージャーを経験した私が、製造業を徹底解剖していきます!


はじめに


前回の記事では、製造業の多様な部門構造について学びました。

今回は、これらの部門がどのように協働して価値を生み出し、利益を上げているのかという全体像に迫ります。

 

ビジネスモデル(儲けの仕組み)とバリューチェーン(価値創造のプロセス)という二つの概念を理解することで、企業の強みや課題、そして将来性を見抜く力が身につきます。

さらに、自分のスキルや興味をどこで活かせるかを具体的にイメージできるようになります。

 

この記事では、これらの概念を就活生の皆さんにも分かりやすく解説します。面接対策や企業選びに直接役立つ知識を身につけていきましょう。

 

製造業の「儲けの仕組み」と「価値創造のプロセス」を解き明かしていきましょう!


製造業のビジネスモデル


製造業のビジネスモデルは、一言で言えば「モノを作って売る」ことで利益を得る仕組みです。しかし、実際にはもっと複雑で多様な要素があります。

 

主な収益源:

  • ・製品販売:最も基本的な収益源
  • ・アフターサービス:保守・メンテナンス、消耗品の販売など
  • ・ライセンス収入:特許や技術のライセンス供与

 

利益の源泉:

  • ・原価管理:効率的な生産システム、サプライチェーン管理
  • ・価格戦略:高付加価値製品の開発、ブランド力の構築
  • ・イノベーション:継続的な研究開発投資

 

例えば、自動車メーカーは車の販売だけでなく、アフターサービスや金融サービスでも収益を上げています。

一方、スマートフォンメーカーは、ハードウェアの販売に加えて、アプリストアやクラウドサービスなどのエコシステムで収益を得ています。

 

このように、製造業といっても多様なビジネスモデルが存在します。

次のセクションからは、これらのビジネスモデルをより深く理解するためのツールである「バリューチェーン」について詳しく見ていきましょう。


バリューチェーンって何?


3.1 バリューチェーンの基本概念

バリューチェーンとは、企業が製品やサービスを提供する過程で、どのように価値を付加していくかを示す概念です。

マイケル・ポーターが提唱したこの概念は、企業活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、各段階での価値創造を可視化します。

 

主活動:

  1. 調達物流:原材料の調達、在庫管理
  2. 製造:製品の生産
  3. 出荷物流:完成品の保管、配送
  4. マーケティング・販売:広告、販売活動
  5. サービス:アフターサービス、顧客サポート

 

支援活動:

  1. 全般管理:経営戦略、財務管理
  2. 人事・労務管理:採用、教育訓練
  3. 技術開発:研究開発、製品設計
  4. 調達活動:購買、サプライヤー管理

 

3.2 製造業のバリューチェーンの特徴

 

製造業のバリューチェーンには、以下のような特徴があります:

  1. 製造工程の重要性:主活動の中心が「製造」にあり、ここでの効率化が競争力に直結します。
  2. サプライチェーンの複雑さ:多くのサプライヤーや協力企業と連携する必要があります。
  3. 研究開発の重要性:技術革新が競争力の源泉となるため、「技術開発」が重要な支援活動となります。
  4. グローバル展開:調達から販売まで、グローバルなバリューチェーンを構築することが多いです。

 

3.3 バリューチェーン分析の手順:就活生でもできる簡単な方法

就活生の皆さんも、以下の手順で簡単にバリューチェーン分析を行うことができます:

 

  1. 企業の公開情報を収集する:アニュアルレポート、ウェブサイト、ニュース記事など
  2. 主活動と支援活動を特定する:収集した情報から、各活動の内容を整理
  3. 各活動の特徴や強みを分析する:他社と比較して、どこに特徴があるか考察
  4. 全体的な競争優位性を考察する:各活動がどのように連携し、価値を生み出しているか検討

 

3.4 分析結果の活用法:志望動機作成や面接での活用ポイント

 

バリューチェーン分析の結果は、以下のように就活に活用できます:

  1. 志望動機の作成:企業の強みを理解し、自分のスキルや興味とどう関連づけられるか考える
  2. 面接での質問対策:「当社の強みは何だと思いますか?」といった質問に、具体的に答えられる
  3. 企業研究の深化:表面的な情報だけでなく、企業の本質的な競争力を理解できる
  4. 自己PR:「バリューチェーンのこの部分で貢献したい」など、具体的なビジョンを示せる

 

ここでは、製造業の代表的な2社、トヨタ自動車とソニーのバリューチェーン分析を行ってみましょう。

 


4.1 トヨタ自動車のバリューチェーン分析

主活動:

  1. 調達物流:「ジャストインタイム」方式による効率的な部品調達
  2. 製造:「トヨタ生産方式」による高効率・高品質の生産
  3. 出荷物流:ディーラーネットワークを通じた効率的な配送
  4. マーケティング・販売:地域に密着したディーラー戦略、ブランド戦略
  5. サービス:充実したアフターサービス、中古車販売

 

支援活動:

  1. 全般管理:「カイゼン」文化、長期的視点での経営
  2. 人事・労務管理:終身雇用制度、OJTによる技能伝承
  3. 技術開発:環境技術(ハイブリッド車)、自動運転技術への投資
  4. 調達活動:協力会社との長期的関係構築

 

トヨタの強み:

  • ・効率的な生産システムによるコスト競争力
  • ・品質管理と継続的改善の文化
  • ・グローバルな生産・販売ネットワーク
  • ・環境技術におけるリーダーシップ

 

4.2 ソニーのバリューチェーン分析

主活動:

  1. 調達物流:グローバルな部品調達ネットワーク
  2. 製造:高度な製造技術、一部の製造をEMS(電子機器受託製造サービス)に委託
  3. 出荷物流:効率的なグローバル物流ネットワーク
  4. マーケティング・販売:強力なブランド戦略、オンライン販売の強化
  5. サービス:ゲーム・音楽・映画などのコンテンツサービス

 

支援活動:

  1. 全般管理:多角化戦略、エレクトロニクスとエンターテインメントの融合
  2. 人事・労務管理:グローバル人材の育成、クリエイティブ人材の獲得
  3. 技術開発:イメージセンサー、ゲーム機器、AIなどの先端技術開発
  4. 調達活動:重要部品の内製化(例:イメージセンサー)

 

ソニーの強み:

  • ・ハードウェアとコンテンツの両方を持つユニークな位置づけ
  • ・イメージセンサーなど、特定の部品での圧倒的な技術力
  • ・PlayStationを中心としたゲームエコシステム
  • ・多様な事業ポートフォリオによるリスク分散

 

4.3 2社の比較から見える製造業の多様性

トヨタとソニーの比較から、以下のような製造業の多様性が見えてきます:

 

製品特性の違い:

  • ・トヨタ:高価格・低頻度購入の耐久消費財
  • ・ソニー:多様な価格帯・購入頻度の製品群

 

バリューチェーンの重点:

  • ・トヨタ:製造プロセスの効率化に重点
  • ・ソニー:製品開発とブランド戦略に重点

 

サービス戦略:

  • ・トヨタ:アフターサービスを重視
  • ・ソニー:コンテンツサービスを重視

 

グローバル戦略:

  • ・トヨタ:現地生産・現地販売モデル
  • ・ソニー:グローバルな製品開発と販売

 

この比較から、製造業といっても企業によって戦略が大きく異なることがわかります。

就活生の皆さんは、志望企業のバリューチェーンを分析することで、その企業の特徴や強みをより深く理解することができるでしょう。


最新トレンド:
製造業のビジネスモデル革新


製造業のビジネスモデルとバリューチェーンは、テクノロジーの進化や社会のニーズの変化に応じて、常に進化しています。

ここでは、最新のトレンドとその影響について見ていきましょう。

 

5.1 サブスクリプションモデルの台頭

従来の「製品を売り切る」モデルから、「継続的にサービスを提供する」モデルへの移行が進んでいます。

 

例:

  • ・自動車業界:車を販売するのではなく、月額制のカーシェアリングサービスを提供
  • ・工作機械業界:機械の稼働状況をモニタリングし、最適なメンテナンスを提供する subscription based サービス

 

就活生への影響:

  • ・サービス設計やカスタマーサクセスなど、新たなスキルセットが求められる
  • ・顧客との長期的な関係構築が重要になり、マーケティングや営業の役割が変化

 

5.2 プラットフォームビジネスへの進出

製造業企業が、自社の強みを活かしたプラットフォームビジネスを展開するケースが増えています。

 

例:

  • ・GEの「Predix」:産業用IoTプラットフォーム
  • ・シーメンスの「MindSphere」:製造業向けクラウドベースIoTオペレーティングシステム

 

就活生への影響:

  • ・ITやデータ分析のスキルがより重要に
  • ・エコシステム全体を俯瞰する視点が求められる

 

5.3 サーキュラーエコノミーへの対応

環境問題への意識の高まりから、製品のライフサイクル全体を考慮したビジネスモデルが注目されています。

 

例:

  • ・パタゴニアの「Worn Wear」:中古品の修理・再販売
  • ・フィリップスの「Light as a Service」:照明を製品ではなくサービスとして提供

 

就活生への影響:

  • ・環境問題や持続可能性に関する知識が重要に
  • ・製品設計から廃棄までの全プロセスを考慮する能力が求められる

 

5.4 デジタルツインの活用

実際の製品や製造プロセスのデジタルコピーを作成し、シミュレーションや最適化を行う「デジタルツイン」技術が普及しています。

 

例:

  • ・ボーイングの航空機設計:デジタルツインを用いた仮想テスト
  • ・テスラの工場:製造プロセス全体のデジタルシミュレーション

 

就活生への影響:

  • ・デジタルスキルとリアルな製造プロセスの理解の両方が求められる
  • ・データ分析や人工知能の知識が、製造業でも重要に

 

5.5 5Gとエッジコンピューティングの活用

5G通信とエッジコンピューティングの組み合わせにより、製造現場のリアルタイム制御や遠隔操作が可能になっています。

 

例:

  • ・ファナックの工場:5Gを活用したロボットの遠隔制御
  • ・BMWの工場:エッジコンピューティングを用いた品質管理システム

 

就活生への影響:

  • ・通信技術やネットワークに関する知識が重要に
  • ・リアルタイムデータ処理やセキュリティに関するスキルが求められる

 

これらのトレンドは、製造業のバリューチェーンとビジネスモデルを大きく変革しています。

就活生の皆さんは、これらの変化を理解し、自身のキャリアプランに反映させることが重要です。


就活生のための実践的アドバイス


ここまで学んだ知識を、実際の就活でどのように活用できるでしょうか。具体的なアドバイスをいくつか紹介します。

 

6.1 企業研究におけるビジネスモデルとバリューチェーンの活用法

a) 情報収集のポイント

  • ・アニュアルレポートや決算説明資料を読み込む
  • ・企業のプレスリリースや業界ニュースをチェック
  • ・企業のIR情報や製品ラインナップを確認

 

b) 分析のステップ

  1. 企業の主要な収益源を特定する
  2. バリューチェーンの各段階で、どのような特徴や強みがあるか考察する
  3. 競合他社と比較し、ユニークな点を見出す
  4. 最新のトレンドに対して、どのような取り組みをしているか確認する

 

c) 分析結果の整理

  • ・SWOT分析を用いて、企業の強み・弱み・機会・脅威を整理する
  • ・企業の将来性や課題について、自分なりの見解をまとめる

 

6.2 面接での活用:質問例と模範回答

Q1: 「当社のビジネスモデルについて、どのように理解していますか?」

模範回答:「御社は、高品質な電子部品の製造・販売を主力事業としつつ、近年はIoTソリューションの提供にも注力されていると理解しています。特に、センサー技術を活かしたスマートファクトリー向けのソリューションは、従来のハードウェア販売に加えて、継続的な収益を生み出す新たなビジネスモデルとして注目しています。この戦略により、安定した収益基盤を確保しつつ、成長市場での展開を図っておられると考えます。」

 

Q2: 「当社の強みは何だと思いますか?」

模範回答:「御社の強みは、バリューチェーンにおける “技術開発” と “製造” の部分にあると考えています。特に、長年培ってきた精密加工技術と、それを支える人材育成システムが、高品質な製品を生み出す源泉となっています。さらに、近年のデジタル技術の積極的な導入により、製造プロセスの効率化と品質向上を両立されている点も大きな強みだと思います。これらの強みが、御社の高い利益率と市場シェアにつながっていると理解しています。」

 

Q3: 「当社の課題は何だと思いますか?」

模範回答:「急速に変化する技術環境への対応が、御社にとって重要な課題の一つだと考えています。特に、AIやIoTなどのデジタル技術を既存の製品やサービスにいかに統合していくかが鍵になると思います。また、グローバル競争が激化する中で、新興国企業との差別化や、グローバル人材の育成も重要な課題ではないでしょうか。これらの課題に対して、御社がどのような戦略を立てているのか、非常に興味があります。」

 

6.3 インターンシップでの観察ポイント

インターンシップは、企業のビジネスモデルやバリューチェーンを実際に体感できる貴重な機会です。以下のポイントに注目してみましょう。

 

a) 業務プロセスの観察

  • ・各部門がどのように連携しているか
  • ・情報やデータがどのように共有されているか
  • ・意思決定のプロセスはどうなっているか

 

b) 社員とのコミュニケーション

  • ・社員が考える自社の強みや課題
  • ・最新技術やトレンドへの取り組み状況
  • ・部門間の連携や課題

 

c) 製品・サービスの理解

  • ・主力製品・サービスの特徴や競争優位性
  • ・新製品開発のプロセス
  • ・顧客ニーズへの対応方法

 

d) 企業文化の把握

  • ・イノベーションを促進する仕組みはあるか
  • ・継続的な改善活動はどのように行われているか
  • ・従業員の満足度や働きやすさはどうか

 

6.4 業界研究の進め方:おすすめの情報源

 

a) 業界レポート

  • ・日経BP「業界地図」
  • ・東洋経済「会社四季報業界地図」
  • ・MCVコンサルティング「業界分析レポート」

 

b) 専門メディア

  • ・日経ものづくり
  • ・MONOist(モノイスト)
  • ・EE Times Japan

 

c) 政府・団体の発行物

  • ・経済産業省「ものづくり白書」
  • ・日本機械工業連合会のレポート
  • ・JETRO(日本貿易振興機構)の産業レポート

 

d) 企業のIR情報

  • ・アニュアルレポート
  • ・決算説明会資料
  • ・統合報告書

 

これらの情報源を組み合わせて活用することで、製造業の最新動向や各企業の特徴を多角的に理解することができます。


製造業を深く理解して、
自己PRに活かそう


製造業のビジネスモデルとバリューチェーンを理解することは、単なる企業研究の枠を超えて、皆さん自身のキャリアプランニングにも大きく役立ちます。

 

  • ・自分の強みがバリューチェーンのどの部分に活かせるか
  • ・興味のある最新トレンドに関連する部署はどこか
  • ・長期的にどのようなスキルを磨いていくべきか

 

これらの問いに答えることで、より具体的で説得力のある自己PRや志望動機を作成することができるでしょう。

 

製造業は、デジタル化やグローバル化の波にさらされ、大きな変革期を迎えています。

しかし、それは同時に、新しいアイデアや skills を持った若い人材にとって、大きなチャンスでもあります。

 

皆さんには、この記事で学んだことを踏まえて、製造業の奥深さと可能性を探求し続けてほしいと思います。

そして、自分なりの視点で業界を分析し、どのように貢献できるかを考えてみてください。

そうすることで、面接官を唸らせるような、独自の洞察と熱意を持った就活生になれるはずです。

 

製造業は、日本のモノづくりの誇りであり、世界の人々の生活を豊かにする重要な産業です。

皆さんの新しい発想とエネルギーが、この産業の未来を切り開いていくことを期待しています。頑張ってください!

 

遂に次回が最終回!製造業でのキャリアと向いている人・向かない人を分析していきますよ!お楽しみに!