ページ上部バナー
(NO IMAGE)
(NO IMAGE)

みなさん、こんにちは!ミキワメ就活の大野です。

 

前回は商社の組織構造と人材について深掘りしましたね。

今回は、商社業界が直面している課題と、これからの展望について詳しく見ていきます。

就活生のみなさんにとって、この情報は面接での質問対策はもちろん、自分の将来のキャリアを考える上でも大切なポイントになるはずです。それでは、商社の未来に迫っていきましょう!

 


商社業界が直面する主要な課題


a) 資源価格の変動リスク

商社、特に総合商社の収益は資源価格の影響を大きく受けます。

例えば、2000年代の資源価格高騰期には多くの商社が好業績を記録しましたが、2010年代半ばの資源価格下落局面では業績に大きな打撃を受けました。

 

具体例:
ある大手商社は、オーストラリアの石炭鉱山に大規模投資を行い、中国向け輸出で大きな利益を上げていましたが、石炭価格の下落により多額の減損損失を計上することになりました。この経験から、同社は資源ポートフォリオの見直しと非資源分野への投資強化を進めています。

 

別の商社では、原油価格の変動に対応するため、上流(開発)から下流(販売)まで一貫した事業展開を行い、価格変動リスクの分散を図っています。

 

対応策:

  • ・資源ポートフォリオの多様化(石油、天然ガス、鉄鉱石、銅など複数の資源に分散投資)
  • ・非資源分野への投資強化(小売、ヘルスケア、IT・デジタル分野など)
  • ・デリバティブを活用したヘッジ取引の実施
  • ・バリューチェーン全体への関与による収益の安定化

 

 

b) 新興国市場での競争激化

BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)やASEAN諸国の経済成長に伴い、これらの国々での事業機会が拡大しています。

しかし同時に、現地企業や他国の商社との競争も激しくなっています。

 

具体例:
東南アジアのインフラ開発プロジェクトでは、中国の国営企業が積極的に参入し、日本の商社と激しく競合しています。中国企業は政府の後ろ盾を得た強力な資金力を武器に、多くのプロジェクトを獲得しています。

 

一方で、ある日本の商社は、インドネシアでの地熱発電事業において、現地企業とのジョイントベンチャーを設立。日本の高度な技術と現地企業のネットワークを組み合わせることで、競争力のある事業展開に成功しています。

 

対応策:

  • ・現地企業とのパートナーシップ強化
  • ・高付加価値サービスの提供(例:プロジェクトマネジメント、ファイナンスアレンジメント)
  • ・日本の技術力や品質管理ノウハウの活用
  • ・現地人材の登用と育成による、よりローカライズされた事業展開
  • ・政府間の経済協力枠組みの活用(例:日ASEAN経済連携協定)

 

c) デジタル化への対応

AI、IoT、ブロックチェーンなどのデジタル技術の急速な発展は、商社のビジネスモデルにも大きな影響を与えています。

 

具体例:
ある大手ITプラットフォーム企業が、クラウドベースの国際貿易プラットフォームを立ち上げ、中小企業向けに貿易実務のサポートサービスを提供し始めました。

これは、従来の商社の機能の一部を代替する可能性があります。

 

一方、ある商社は、ブロックチェーン技術を活用した貿易金融プラットフォームを開発。

従来は10日程度かかっていた信用状(L/C)の発行を、わずか2時間程度に短縮することに成功しました。

 

対応策:

  • ・デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進
    例:AIを活用した需要予測システムの導入、IoTによる資源開発現場の遠隔監視
  • ・スタートアップ企業との協業や出資
    例:フィンテック企業への出資、AgriTech(農業技術)ベンチャーとの共同事業
  • ・社内ベンチャー制度の導入
    例:若手社員によるデジタルサービスの開発を奨励し、事業化をサポート
  • ・デジタル人材の積極的な採用と育成
    例:データサイエンティスト、UXデザイナーの採用、全社員向けデジタルスキル研修の実施

 

 

d) サステナビリティへの取り組み

SDGs(持続可能な開発目標)の達成に向けた取り組みや、ESG(環境・社会・ガバナンス)を重視した投資の拡大は、商社の事業戦略にも大きな影響を与えています。

 

具体例:
石炭火力発電事業からの撤退を表明する商社が増えています。ある大手商社は、2030年までに石炭火力発電事業から完全撤退し、再生可能エネルギー比率を50%に引き上げる目標を掲げています。

 

また、別の商社は、アフリカでの小規模農家支援プロジェクトを展開。現地の農業生産性向上と収入増加に貢献しながら、安定的な農産物調達先の確保にも成功しています。

 

対応策:

  • ・再生可能エネルギー事業の拡大(太陽光、風力、地熱、水素など)
  • ・サーキュラーエコノミー(循環型経済)関連事業の強化
    例:プラスチックリサイクル事業、中古車リユース事業
  • ・サプライチェーン全体でのサステナビリティ推進
    例:サプライヤーの人権デューデリジェンス、持続可能な調達ガイドラインの導入
  • ・ESG情報の積極的な開示
    例:TCFDに基づく気候関連財務情報の開示、統合報告書の発行
  • ・社会課題解決型ビジネスの創出
    例:途上国での教育支援事業、フードロス削減プラットフォームの構築

 

 


商社の今後の展望


a) 事業投資モデルの進化

従来の「トレーディング」中心のビジネスモデルから、「事業投資」を重視するモデルへの転換が進んでいます。

今後はさらに一歩進んで、投資先の価値向上に積極的に関与する「バリューアップ」モデルへの進化が期待されています。

 

具体例:
ある商社は、買収した海外の食品メーカーに対して、日本の製造技術を導入し、商品開発力を強化。

さらに、自社のグローバルネットワークを活用して販路を拡大し、企業価値を大幅に向上させました。

 

別の商社は、出資先のスタートアップ企業に対して、経営人材の派遣や、大企業とのアライアンス構築支援を行い、急成長をサポートしています。

 

今後の展望:

  • ・クロスインダストリー型の価値創造(例:自動車×IT×金融によるモビリティサービス)
  • ・長期的視点でのインパクト投資の拡大
  • ・投資先間のシナジー創出(例:複数の投資先を組み合わせた新規事業開発)

 

 

b) 新技術を活用した新規事業創出

AI、IoT、ブロックチェーンなどの新技術を活用した新規事業の創出に、多くの商社が注力しています。

 

具体例:

  • ・AIを活用した農業支援プラットフォームの構築
     ある商社は、衛星データとAI技術を組み合わせて、最適な作付けや収穫時期を提案するサービスを開発。
    これにより、農家の生産性向上と環境負荷低減を同時に実現しています。
  • ・ブロックチェーン技術を用いたトレーサビリティシステムの開発
     食品安全への関心が高まる中、ある商社はブロックチェーン技術を活用して、農産物の生産から消費者の手元に届くまでの全工程を追跡できるシステムを構築。消費者の信頼獲得と、サプライチェーンの効率化を実現しています。
  • I・oTセンサーを活用したインフラ保守管理サービスの展開
     橋梁やトンネルなどのインフラにIoTセンサーを設置し、リアルタイムで状態をモニタリング。
    予防保全による維持管理コストの削減と、インフラの長寿命化を実現するサービスを展開しています。

 

今後の展望:

  • ・5G/6Gを活用した次世代通信事業
  • ・量子コンピューティングの実用化に向けた取り組み
  • ・バイオテクノロジーと情報技術の融合による新産業創出

 

 

c) 社会課題解決型ビジネスの拡大

SDGsの達成に向けて、社会課題の解決と事業性の両立を目指すビジネスが増加しています。

 

具体例:

  • ・途上国における分散型太陽光発電システムの普及
     ある商社は、アフリカの無電化地域で、太陽光パネルと蓄電池を組み合わせた小規模発電システムをリース方式で提供。
    携帯電話決済を活用した料金回収システムと組み合わせることで、持続可能なビジネスモデルを確立しています。
  • ・食品ロス削減に向けたサプライチェーンの最適化
     AIを活用した需要予測と、フードシェアリングプラットフォームを組み合わせて、食品の廃棄量を大幅に削減。
    環境負荷の低減と、食品関連企業の収益性向上を同時に実現しています。
  • ・海洋プラスチック問題に対応したリサイクル事業の展開
     東南アジアにおいて、廃プラスチックの回収・リサイクルシステムを構築。
    現地雇用の創出と環境保護を両立させつつ、リサイクル原料の安定供給源としても機能しています。

 

今後の展望:

  • ・カーボンニュートラル実現に向けた包括的ソリューションの提供
  • ・高齢化社会に対応したヘルスケア・介護サービスの展開
  • ・教育格差解消に向けたEdTech(教育技術)ビジネスの創出

 

 

d) グローバルサプライチェーンの再構築

新型コロナウイルスのパンデミックや米中貿易摩擦を契機に、サプライチェーンの脆弱性が露呈しました。これを受けて、より強靭でフレキシブルなサプライチェーンの構築が求められています。

 

具体例:
ある商社は、自動車部品のサプライチェーンにおいて、従来の中国一極集中から、東南アジアやインドなど複数の地域に分散させる「チャイナ・プラスワン」戦略を推進しています。
これにより、地政学リスクの分散と、コスト競争力の維持を両立させています。

 

別の商社では、AIを活用した需要予測システムとグローバルな物流ネットワークを組み合わせ、在庫の最適化と供給の安定化を実現しています。
さらに、ブロックチェーン技術を活用して、サプライチェーン全体の可視化と透明性向上にも取り組んでいます。

 

今後の展望:

  • ・地域分散型のサプライチェーン構築(リスク分散と現地化の両立)
  • ・デジタル技術を活用したサプライチェーンの可視化と最適化
  • ・環境負荷を考慮したグリーンサプライチェーンの構築
  • ・3Dプリンティング技術の活用による、オンデマンド生産・供給体制の確立

 

 


「終わりに」


みなさん、ここまで商社業界について詳しく見てきましたが、いかがでしたか?

 

商社は、グローバルなビジネスの最前線で活躍する、ダイナミックな業界です。

その組織構造、直面する課題、そして未来への展望と、多岐にわたる側面を持っています。

 

これからの商社は、単なる仲介者ではなく、社会課題の解決者、イノベーションの推進者としての役割が期待されています。

デジタル化やサステナビリティへの対応など、新たな挑戦も待ち受けています。

 

就活生のみなさんには、この記事で得た知識を基に、自分の強みや興味と商社の特性をよく照らし合わせてみてください。

そして、「自分ならこの会社でこんなことができる」という具体的なビジョンを持って、面接に臨んでください。

 

商社の世界は奥深く、やりがいに満ちています。みなさんの中から、未来の商社を担う人材が生まれることを願っています。頑張ってください!