ページ上部バナー

2019年8月、厚生労働省の若手を中心とした厚労省改革チームが「厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言」を厚生大臣に提出しました。近年、多くの民間企業で働き方が見直され、個人の適正やその能力を重視し、より高いパフォーマンスを発揮させる働き方へと社会全体でシフトしつつあります。そんな中出された厚労省の緊急提言。いま、省内で何が起きているのか、若手の活躍や改革の実態を、実際に改革に携わった若手メンバーの声を基にお伝えします。

「このままでは厚労省が危ない」議論はそこから始まった

なぜ提言は厚生労働大臣に提出するまでに至ったのか、そして、なぜこの大規模な改革提言で若手が活躍しているでしょうか?

厚生労働省の特性と問題点

厚生労働省はその特性上、抱えている政策が非常に広く、業務も多岐にわたります。しかし、その仕事量に対して人手が圧倒的に不足しているのが現状でした。一人が担う仕事量が増えれば、負担は増えますし、効率も下がります。ここ数年、厚労省の様々な不正が明るみとなり大きな波紋を呼びましたが、これらの問題もその繁忙さゆえに拍車がかかってしまったのではないかといいます。

若手のチカラで人手不足と働き方にメスを入れる!

そのような現状を受け、当時の厚労省担当であった小泉進次郎氏と厚労省前大臣の根本匠氏が改革を決意。その時白羽の矢が立ったのが、省内の若手メンバーでした。省員が本来の能力を発揮し、高いパフォーマンスを発揮させるべく、若手から改革提言をあげさせることになったのです。ここから若手省員たちの奮闘がはじまります。

厚労省がよくなるための提言を

改革提言をまとめるまでの過程はどのようなものだったのでしょうか?その道のりは決して易しいものではありませんでした。(提言案は厚生労働省のホームページで閲覧可能です)

各分野のスペシャリストを集めた

実は、以前にも厚生労働省の改革案が出されたことはあったのですが、一部の省員が一部の部署のために作るだけに終わってしまい、成功には至りませんでした。前述したように、厚生労働省の仕事は多岐にわたり、色々な立場の人達がさまざまな仕事をしています。一般的な事務仕事があるのはもちろん、部署によっては医師や看護師といった仕事があることからも分かるように、部署が違えば仕事内容も関わっている人もまったく異なるのです。そこで、ありとあらゆる部署からスペシャリスト40人を集め、痛みもともなう事になるであろう省全体の改革に備えました。

若手からベテランまで全員に意見を聞く

改革を進める第一歩として、約4,000人の全省員へ二度にわたりアンケートを実施、加えて、次官から係員まであらゆる役職の人たちからもヒアリングを行いました。様々な立場の人からあらゆる意見を吸い上げ、問題点はどこにあるのか、若手は何で苦しんでいるのかを明らかにするため、「どんなことでもいいから、変えた方がいいことは何でも教えてくれ」という広いスタンスで行ったといいます。もちろん、長年にわたり厚労省を支えてきた省員たちからの意見も真摯に受け止め、問題や反対が起こる度に一つずつ潰していくことに努めました。

とにかく職員を大事にできる組織に

さまざまな意見が出た結果、提言をまとめるのは非常に困難な作業となりました。たとえば、年功制度や役職にとらわれない人事など、能力主義に関する改革については厳しい意見も多く、現状よりも仕事が増えてしまうことに難色を示す人もいました。それらの壁にぶち当たった時、改革チームはモットーとしていた「とにかく職員を大事にできる組織に」を譲れない軸として、「これを実現した暁には日本も良くなる」と信じてそれに資するものであれば、たとえ痛みを伴う組織改革であろうとも果敢に取り組みました。

提言を実現するまでが仕事

若手チームがなんとかまとめ上げた提言ですが、最後にはそれを大臣に受け渡すという最後の難関が残っていました。

これは変わるための提言だ!

提言を大臣、つまり政治家に渡してそれを受け取ってもらうということは、政治責任が発生するということです。政治の責任で実現するということを約束する訳ですから、一部の幹部からは「こんな提言を出したら、厚労省の体面に関わる」という意見もありました。しかし、それを次官や大臣は「これを出さなければ変わらない、これをスタートラインにして組織を変えるためにも、このまま出すように」と熱く後押ししたそうです。

改革を進めたことで得られたもの

若手として大規模な改革提言に取り組む中で、多くの批判を受け止め、つらいこともあったといいます。しかし、意見を聞いていく中で若手からあふれ出た「我々が変わらなければ、霞ヶ関は終わる。日本を変えていかなければならない」という熱い思い。そしてそれを受け止め、提言をそのまま提出するように指示した大臣の決意を受けて、これまで声なき声を上げることができなかった省員たちに少しでも報いることができた、そして自分ができることはもっとやっていこうと感じたといいます。

改革は始まったばかり

提言を作ることにも相当のエネルギーがいりますが、それをきちんと実行することはより大変な作業です。2019年12月からは改革を実現させるため、実行計画・工程表を作成し、行動に移していくフェーズへとなりました。いま、厚生労働省はもちろん省庁で活躍したいと考えている就活生の方は、このような熱い思いで仕事をしている公務員の方々がいることを知る機会になったのではないでしょうか。そして、厚生労働省はこれから入省するみなさんをより良いかたちで迎える準備をしていくことでしょう。

YouTubeで動画も公開中

厚生労働省の笠井さんと久米さんのインタビューの様子はYouTubeでも視聴できます。記事には載せきれなかった貴重な話も聞けるので、ぜひレクミーチャンネルもチェックしてみてください。
【厚労省】若手改革チーム緊急提言の舞台裏 | 「このままでは霞が関が終わる!!」

「厚生労働省の業務・組織改革のための緊急提言」リンク

https://www.mhlw.go.jp/content/11600000/000540047.pdf