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新聞記者の就活対策
新聞記者の就活対策

新聞記者になるためには、新聞社・通信社の記者職の採用試験に合格する必要があります。新聞社・通信社の採用試験の選考には、その社オリジナルの筆記試験が課されることがほとんどです。新聞記者になるために必要な筆記試験対策に関する記事を、一般常識編と論作文編に分けてお送りします。この記事では、論作文試験の概要と対策について解説していきます。

論作文試験の概要

選考における論作文試験のウエイトは高い

筆記試験において論作文が占めるウエイトは、社によって異なりますが、半分から半分以上とも言われています。つまり、一般常識試験で点数があまり取れなくても、論作文試験で挽回することも可能だということです。しかし、逆に言えば、一般常識試験が割とできたとしても、論作文試験の出来によっては合格点に達しない可能性も十分あるのです。
また、筆記試験以降の面接では、面接官の手元に受験者が書いた論作文が置かれるということも多いです。その論作文をもとに質問がなされたり、場合によっては評価もされたりします。
以上を踏まえて、論作文試験の重要性は非常に高いということが分かります。

全国紙5紙と通信社2社の論作文試験

・読売新聞社(HPに過去問掲載)
【編集記者職】
論文、60分800字以内
テーマは「理想」(2018年)、「EU」(2017年)、「選挙」(2016年)など
【業務職】
作文、60分800字以内
テーマは「交流」(2018年)、「教養」(2017年)、「寛容」(2016年)など

・朝日新聞社(過去問非公開)
小論文、60分800字以内
テーマは「平成」(2018年夏)など

・日本経済新聞社(HPに過去問掲載)
作文、60分800字以内
テーマは「保護主義、品質不正、平成」(2018年夏・午前)、「貿易戦争、スタートアップ、災害」(2018年夏・午後)など
※3つのテーマから1つを選択する形式
・毎日新聞社(過去問非公開)
作文、60分800字以内
時事系のテーマが多い

・産経新聞社(過去問非公開)
作文、60分800字以内

・共同通信社(HPに過去問掲載)
作文、60分800字以内
テーマは「気」(2017年春)、「窓」(2016年春)、「争い」(2016年夏)など

・時事通信社(一般常識・英文和訳・和文英訳のみHPに過去問掲載)
作文、60分800字以内
以上のように、どの社も60分で800字を書き上げることを求めています。普段から文章を書くなどしていない限り、対策をしていないと書き上げることも難しいかもしれません。

論文と作文の違い

読売新聞社と朝日新聞社は論文形式、その他は作文形式をとっていますが、論文と作文の違いについても解説しておきます。
論文は、書き手の意見や主張を表明し、その論拠を筋道立てて説明しながら相手を説得する文章です。「論理性」や「説得力」がポイントとなり、作文よりも堅い文章と言えます。
作文は、書き手の経験を感想や心境などを織り交ぜながら表現豊かに書く文章です。自分らしさを存分に伝えることがポイントです。

論作文試験を課す目的

全国紙5紙、通信社2社が論作文を課すのはどのような目的からなのでしょうか。

基本的な文章力があるかどうか

記者という仕事は、記事を書くのが仕事です。もちろん入社後、研修やOJTを通して文章力は徹底的に鍛えなおされます。しかし、選考段階でも論作文試験によって、基本的な文章力を測ります。基本的な文章力について具体的には、文章構成力、語彙力を含めた表現力、誤字脱字しない注意深さ、分かりやすさなどが挙げられます。

自分の意見・考えを持っているかどうか

論文と作文のどちらにも言えることですが、自分の意見や考えを持っているかどうかも重要視されます。論文であればテーマに対してどのような意見を持っているか、作文では書き手が体験の中でどのような考えをもっているかなどです。
記者は、自ら問題意識を持って働く職業です。普段から「自分はどう思うか」と考える癖のある人かどうか見極められていると言ってもいいでしょう。

根拠づけしながら論理的に文章を組み立てられるかどうか

主に論文についてですが、表明した意見や主張を論拠を織り交ぜながら、説得力のある論理的な文章を組み立てる力が見られます。いわゆる「論理性」と「説得力」です。読売新聞社や朝日新聞社が、作文ではなく論文を課す理由はこの点にあると言えます。

時事問題にアンテナを張っているかどうか

論文や作文のテーマは時事問題に関するものが多く、そうでなくとも時事問題に絡めて論を展開したり、作文を書いたりすることが多いです。一般常識の試験でも、時事問題に関するアンテナの高さは見られますが、論作文試験でも同様に見られていると考える必要があります。

その他(社によって異なる)

社によっては、独自の視点から採点をするところもあります。論文は基本的に論理性と説得力が大きなウエイトを占めると考えられます。しかし、作文を課す社は、それぞれで重視するポイントも異なります。発想力や、経験と時事問題を結び付けて考える力などです。
どういった点に特に着目するかについては、採用担当者や働くOB・OGに聞くのが手っ取り早いでしょう。社によっては、作文セミナーのようなものを開催していることもあります。事前に受ける社の採点ポイントを押さえておけると、対策もしやすいはずです。

ポイントと対策

論文は「結論→本論→結論」を意識

前述したように、論文は「論理性」と「説得力」を特に重視しています。その二つのポイントを押さえる方法として特に有効なのが「結論→本論→結論」の型で書くことです。
まず初めに、「私はこう思う」という、そのテーマに対する自分の意見を書きます。続いて本論では、自分がそのような意見を持つ根拠や理由について論を展開します。その中で、自分の経験をそのような意見を持つに至った経緯などにつなげて論を展開することも非常に有効です。最後に本論を踏まえて、もう一度結論として自分の意見を表明しましょう。
最初と最後に結論を書くことで、「何が言いたいか」という部分をはっきりさせ、論理性と説得力のある文章にすることができます。
参考にしたいのが、各紙の「社説」です。それぞれの新聞社の意見を述べた文章なので、論文に近しいものになっています。また、社説を担当するのは「編集委員」と呼ばれる、いわゆる出世した記者です。どのような構成で、どのように論を展開しているかなど、非常に参考になるはずです。

作文は「起承(転)結」を意識すると良いが、割と自由

作文では文章を書く際の基本である「起承転結」を意識して書くといいでしょう。「起承転結」とは、「起」で読み手を引き込み、「承」で主題を展開し、「転」では視点を変えて読み手をさらに引き込み、「結」でまとめるという文章構成方法です。
新聞社の作文では必ずしも「転」じる必要はないですし、加えて「起承転結」に則って書く必要はありません。
しかし、「起承転結」を意識して書くと、構成としてもきれいな作文になるはずです。実際に、新聞の1面コラム(読売新聞の「編集手帳」、朝日新聞の「天声人語」、日経新聞の「春秋」など)は「起承転結」を意識した構成となっています。

書き始める前に構成を考える

テーマは試験開始と同時に発表されます。したがって、60分という制限時間の中で構成の組み立てもする必要があります。ここで時間が無いからと、構成を考えずにいきなり書き始めるのは賢明ではありません。
論文も作文も、テーマが発表された後は、800字をどのような構成で書いていくか決めましょう。時間としては5分から10分ほどかけていいです。構成がしっかりしていれば、読み手は全体の内容は何となく掴めるからです。メモ用紙などはもらえるはずなので、そこに構成を書いたうえで書き進めましょう。

一文の長さを意識

文章を書き進める中で意識したいのは一文の長さです。文を書きなれていないと、一文一文が長くなってしまいがちです。しかし、一文一文が長いと何を言っているかよく分からなくなります。美しい文章とも言えなくなります。
例えば、「私は中学時代、○○先生という、サッカー部の顧問であり国語教師であった人物に大きな影響を受け、彼は今でも私にとって恩師であり父親のような存在と言うことができるが、この前駅前で久しぶりに会った。」という文章です。
少し極端かもしれませんが、一文が長く非常に読みづらいです。修飾語が多いうえに、複数の文を無理につなげ、さらには接続後もほとんどありません。「一文一意」「40字以内」を意識してみると綺麗な文章になります。これらを意識して、先ほどの文を修正してみます。
「私には、恩師であり父親のような存在である人物がいる。中学時代の○○先生だ。当時はサッカー部の顧問として、国語の担当教師としてお世話になった。そんな彼に、先日駅前で久しぶりに会った。」
どうでしょうか。一気に読みやすくなったはずです。全く同じ内容を伝えているはずですが、一文の長さを意識するだけで全然違う文章になるのです。

作文も時事問題につなげる(社によっては不要)

論文はテーマが基本的に時事に関することですが、作文のテーマは抽象的なものが多いです。例えば、「空」「熱」「送る」などです。しかし、記者職の作文ではできるだけ時事問題に絡めて書きたいところです。
基本的には、「起承転結」の「結」の部分で、今まで展開してきた話を時事問題に当てはめるという方法が有効でしょう。新聞の1面コラムもその形をとっているものを数多く見かけます。
1面コラムは各紙の書くのが特に上手い記者が担当しています。作文の良い教材となるはずです。

制限時間を意識し何度も書き添削してもらう

論文も作文も、結局「練習あるのみ」です。書いた分だけ、実力はつくはずです。逆に、実際に書かなければ意味がありません。ペースは人それぞれですが、できるだけ早くから書く練習をしましょう。
ここで大事なのは、書いてそのままにしないことです。必ず誰かに見てもらいましょう。自分では気づかない点に気づくことができたり、自分とは違った視点からのアドバイスをもらえたりします。
一番良いのは、実際に記者の方に添削をしてもらうことです。記者は文章書きのプロであり、もちろん論作文試験を通過しています。OB訪問する際などに、書いた論作文を持ち寄り、添削をお願いしてみましょう。断られることはないはずです。記者の方以外にも、ゼミの先生や友人、親でもいいと思います。
ちなみに、作文はテーマが抽象的であることから、自分の持ちネタを5~10個用意しておけば、どのようなテーマでも対応することができると言われています。ぜひ、自信を持って書ける、いわゆる持ちネタを用意しておきたいところです。

マスコミ塾・マスコミ予備校に通う

世の中には、マスコミ受験に特化した就活塾があります。どこも新聞社・通信社の記者職に特化しており、数多くの内定者を輩出しています。特に、論作文試験は対策はしづらい部分かもしれませんが、そこもしっかりと対策してくれます。そういったマスコミ塾を活用することも一つの手でしょう。

新聞記者になるための筆記試験論作文対策

新聞記者になるために、論作文試験は一般常識試験と同様、一つの大きな関門です。大事なのは、とにかく多く書くことです。良い論文や作文は、一朝一夕では書けるようにはなりません。一般常識試験にも言えることですが、早め早めの対策が論作文試験突破のカギとなることを自覚しておきたいところです。