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今回お話を伺ったのは、2011年入省 厚生労働省 大臣官房人事課 課長補佐の笠井南芳さん(画像中央)と、2006年入省 厚生労働省 医政局地域医療計画課 課長補佐の久米隼人さん(画像右側)のお2人です。厚労省の中では中堅メンバーとも言えますが、お2人とも若手の中では非常に優秀でエネルギッシュに政策へ取り組んでいらっしゃいます。そんなキャリア官僚といわれる方々が歩んだ過去、そして現在、描いている未来はどのようなものなのでしょうか。

裁量権を持って経験を積んだ若手時代

笠井さんが厚労省へ入省したのは2011年の春、東日本大震災の直後でした。省内は震災への対応に追われ新人研修も中止されるほどの緊急事態となり、新人も即戦力として被災者からの問い合わせ対応に充てられました。笠井さんも実際に被災した介護施設からの電話に対応し、新人ながら必要な政策を立案して同期とともに上長へ提言しました。省庁は若手の意見が通りづらい印象も持たれますが、厚労省はとにかく若手に力を出してもらいたいという風潮もあり、若者が意見しやすく風通しの良い環境だったといいます。
 
一方久米さんは1年目から医療を担当し、主にアメリカと日本間における医薬品の価格交渉に従事していました。案作りから想定答弁までほぼ一人で作成し、審議官と共にアメリカ側との交渉へ赴いていたといいます。他にも医療の情報政策などを任され、各大学の教授へ自らの案を説明して回り、合意を得て案を推し進めていくといったこともしました。無茶振りとも思えるほどの裁量権ですが、その分経験を積んで成長の機会となったそうです。

留学制度を通した成長経験

国家公務員には派遣研修制度というものがあり、希望すれば給与に加えて学費なども国の負担で海外留学が可能です。笠井さんと久米さんも30歳前後で、それぞれフランスとロンドンへ留学を経験しました。また留学以外では国内の地方自治体へ出向し経験を積むことも可能だそうです。移民政策を担当していた笠井さん場合、急速にグローバル化する日本において国内の外国人に対してどのような政策が有効かを検証するため、移民大国であるフランスへの留学を決めました。
 
実際に政策を作っている立場としてアカデミックに歴史や制度を学ぶ経験は、現役大学生の時はまったく違った景色を見せてくれたといいます。学びが仕事に直結しているため、1日に何本も論文を読破してしまうほどインプットが楽しく感じられたといいます。また国家公務員という名刺を持っていることで海外の教授とも厚い信頼関係を築くことができ、海外の教授を大勢紹介して頂いたり、国際機関でのインターンを紹介してもらうなど一般の学生では得られないコネクションを得られたそうです。

困難だからこそ“やりがい”がある

そんな豊かなキャリアを歩み、現在は課長補佐として活躍されているお2人。最前線に立つ中で、これまで培ってきた経験、現場とのコネクション、制度の知識などが強力な武器となっているといいます。現在医療政策を担当する久米さんも、自ら考案した政策を実現するために関係者を説得しつつ法改正を進めていく中で、医療が良くなっていくのを実感し、やりがいを感じています。
 
ただ、ご想像の通り制度を変更というのは決して一筋縄ではいきません。医療政策ひとつ変えるにしても、現行の制度を理解しこれまでそれが実現してこなかった理由をしっかりと把握しなくてはなりません。それが技術の問題なのか、はたまた制度を変えることで儲けが減るなどの利害関係があるのか、政治に直結する案件であることも少なくないのです。その中で合意点を探り、理想に近づけていく交渉過程はスリルもあり、楽しくもあると感じるそうです。

今後のキャリアについて

笠井さんも久米さんも、「結局のところやりたいことができるか否か」だと口をそろえます。もちろん現在の仕事にはやりがいもあり楽しいと感じていますが、本質は政策を作ることだけでなくその先にある社会とそこにいる人々といかに繋がっていられるかです。現に、そこに携わるために外部の社団法人やNPO法人で理事などを兼業する官僚も多く存在し、他にも政策の効果を検証するために研究者としてアカデミックにそれを観測するという道もあります。
 
最後に久米さんは、厚労省に勤めている理由を「様々な事情で今苦しい思いをしている方々が、人生の終わりに良い人生だったと思えるような日本を作りたいから」と語りました。日本には虐待を受けた子どもや、寝たきりの高齢者、障がいや難病を抱えている方、様々な理由でつらく苦しい思いをしている人々がいます。そんな「人生を変えたい、生きづらい」と感じている人たちが最後「ああ良い人生だったな」と思って息を引き取ることができるよう、そう思える社会を作ることに関われる仕事をしていきたいといいます。

YouTubeで動画も公開中

厚生労働省でのキャリア設計について詳しく紹介して頂いた、現役厚労省キャリア官僚の久米さんと笠井さんとの対談模様はYouTubeでも視聴できます。記事には載せきれなかった貴重な話も聞けるので、ぜひレクミーチャンネルもチェックしてみてください。
【厚労省】キャリア官僚のキャリア設計