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新聞記者の仕事
新聞記者の仕事

新聞記者という仕事を身近と感じる人はあまり多くないのではないでしょうか。新聞の記事を書く仕事と漠然と捉えている人も多いと思います。しかし、「記事を書く仕事」という一言では言い表せないような仕事なのです。この記事では、新聞記者がどのような仕事であるか紹介した後に、新聞記者の具体的な仕事内容から残業に関することまで解説していきます。

新聞記者とは

新聞社の編集部門に属する社員

新聞社は複数の部門に分けられており、「編集(記者)」「営業(広告・販売)」「総務(経理・人事)」「技術」で分けている社がほとんどです。そのうち、編集部門に属する社員が記者ということになります。基本的には部門ごとで採用を行っています。

新聞記者の中でも、実際に取材し記事を書く「取材記者」と、「内勤記者」(紙面に記事を配置したり見出しを付けたりする「整理記者」や校閲作業を行う「校閲記者」のこと)がいます。編集部門のほとんどが取材記者として働くことになります。内勤記者として採用時から分けている社もあれば、編集部門で一括採用しジョブローテーションの中で配属する社もあります。この記事では、多数を占める取材記者を中心に記事を書いていきます。

新聞記者の使命

新聞記者ないしは新聞の使命は、民主主義の基盤となることです。「第四の権力」として時には権力を厳しい目で監視するチェック機能を担います。そして、権力を持つ者の姿勢を正す役割を果たすのです。
また、国民の「知る権利」に答えることもまた、民主主義を支える基本です。さまざまな情報、時には隠されていた情報を掴み、それを広く国民に知らせるという使命が新聞記者にはあるのです。
ただ、これはあくまでも全新聞社の記者に言える一般的なことであり、さらにそれぞれの新聞社・新聞記者で別個の使命を持って働く社・人も多くいます。

新聞記者になるには

基本的に新聞記者になるためには、各新聞社が行う定期採用試験に合格する必要があります。定期採用試験の受験資格は企業によって異なりますが、ほぼ全員が四年制大学を卒業することが前提です。
定期採用試験では、独自の筆記試験(時事問題・一般常識・語学など)と作文・論文試験、面接が課されます。中には、取材実技試験、模擬記者会見取材、グループディスカッションなどの試験を課す社もあります。
高度で幅広い知識と文章力が求められ、筆記試験と作文・論文試験で7~9割の受験者が落とされると言われています。企業数と採用数がともに限られており、採用倍率も非常に高いことで知られています。内定を勝ち取るためには、新聞を複数紙熟読したり文章を書いたりするなどの早めの対策が鍵になります。

新聞記者の仕事内容

取材をして記事を書く仕事

新聞記者は、政治・経済・社会・国際問題・スポーツなど多岐にわたるさまざまなテーマを対象として取材を行い、記事を書きます。ただ、一人の記者がすべてのテーマを網羅して記事を書くわけではありません。適性や希望に応じて、それぞれ政治部や経済部・社会部に配属されることになります。ただ、全国紙の新人記者は基本的に入社後数年は各都道府県の支局に配属され、複数のテーマを横断して記事を書きます。

記者クラブと実地取材

日本には日本特有の「記者クラブ」という制度があり、記者はそこを拠点に取材活動を行っています。記者クラブは、各役所や業界団体の中に設置された取材機関で、新聞記者やテレビ記者らによって構成されています。基本的に、記者クラブでさまざまな発表が行われ、質問もしながら記者は発表された内容をもとに記事を執筆します。

ただ、記者クラブで発表される内容は後に世に出るものや、立場上曖昧に話さざるを得なかったものが多いです。さらに、記者クラブで発表されたものだけを記事にしているようであれば、どの新聞にも同じ内容しか載りません。したがって、記者は他に自ら関係者や専門家、政治家の元に足を運んで取材をかけます。新聞記者にとって大事なのは、むしろ自ら足を運ぶ「実地取材」なのです。自ら複数の人の元に足を運び、地道な取材を重ねた結果、独自取材記事を書くことができたり、時にスクープと言われる情報を掴むことができるのです。スクープは世の中を大きく動かすこともあり、社内でも評価されます。

夜討ち朝駆け取材

独自取材記事を書いたりスクープを掴んだりするために、行われる取材手法に「夜討ち朝駆け」というものがあります。夜討ち朝駆けとは、アポ無しで深夜と早朝に取材対象者の自宅前に張り込んで取材を行うことです。
新聞記者が取材対象とする政治家や警察、会社役員などは簡単には口を開いてはくれません。夜討ち朝駆けは、秘密を聞き出しスクープを掴むために記者が昔から行ってきたものなのです。帰宅と出勤を待ち続けたものの、門前払いされるようなことは日常茶飯事です。しかし、泥臭い努力がいつかスクープになると信じて、記者は夜討ち朝駆けを続けるのです。
機密を漏らした公務員に対する罰則を強化する特定秘密保護法も成立し、秘密を聞き出すのはさらに難しくなってきました。だからこそ、アポ無しかつ非公式の取材である夜討ち朝駆けの重要性は高まっていくと考えられます。

記事の執筆

記者の仕事は情報を掴み、それを記事という形に残すことです。一応入社試験に作文・論文試験が課されていますが、記事の書き方は入社してからデスクによって一から厳しく叩き直されます。入社間もない頃は、必死に書いた原稿もほとんど跡形もなく直されると言われています。新人記者が一人前の記事が書けるようになるには3年~5年ほどかかるのが一般的です。

新聞記者の残業

新聞記者の仕事は激務

前述した内容から想像がつくように、新聞記者は激務だと言われています。取材対象あっての仕事なので、自分の論理で動く仕事ではありません。そして、24時間365日ニュースがあれば駆けつけるのが新聞記者です。帰宅後や就寝中、休日にニュースが起きれば、上司から電話が鳴り、呼び出されることは日常茶飯事なのです。このように、新聞記者は仕事とプライベートの境目がほとんど無い仕事と言うことができます。

残業は当たり前

世の中にある職業の中でも、新聞記者の残業時間の長さはトップクラスだと言われています。夜討ち朝駆けで、朝5時に家を出て夜中の1時に帰宅するというようなことは珍しくありません。さらに、大きな事件・地震などが起こった時や、選挙の時などは帰宅することができないこともあります。このような仕事の仕方であるため、残業時間の過労死ラインと言われる100時間もゆうに超えます。

裁量労働制を採用

ほとんどの新聞社は、働く記者に対して裁量労働制という仕組みを採用しています。裁量労働制とは、業務の性質を考慮して、実際の労働時間の長さに関係なく、労働者と使用者の間での協定(労使協定)によって決められた時間を働いたものとみなして賃金を支払う仕組みです。
この仕組みでは、労働時間は労働者の裁量に委ねられており、長時間労働が「しやすい環境」ができているのです。最近では働き方改革により長時間労働に見直しの動きも出てきていますが、新聞記者という職種の特性上避けられないものと言うこともできます。

それでも新聞記者は必要な仕事

新聞記者は民主主義の基盤を支え、時に権力に対峙する職業であり、大きな使命を持って取り組むことができる仕事です。仕事内容は大きく「取材」と「記事執筆」に分けることができますが、やはり取材の部分の重要性が高いと言うことができます。新聞記者は残業も非常に多く、決して楽な仕事ではありません。しかし、自分の仕事が世の中を動かすこともあるという非常に大きなやりがいは何にも代えがたいものでしょう。