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「東急」と「東急不動産」の違い
「東急」と「東急不動産」の違い

2019年、東京急行電鉄株式会社は「東急株式会社」に社名変更し、鉄道事業を切り離して「東急電鉄株式会社」として子会社化。しかし、「東急」と「東急不動産(東急不)」の主力事業は重複…。悩めるデベロッパー・交通業界志望の就活生のために東急の沿革から現状をやさしく紐解きます。

改名の意味

「東京急行電鉄」株式会社が「東急」株式会社に社名を変え、新たに「東急電鉄」という持株100%の子会社を設立しました。「事業環境を取り巻く環境の変化へいっそうのスピード感を持って対応するため※」と説明しています。これが意味することは、「東急」本体は不動産事業を主力事業にするということです。

とはいえ、同じ東急なら「東急不動産」株式会社(東急不)があるはずです。どういうことでしょうか。
※参考:商号変更および定款一部変更、子会社(鉄道事業の分社化に向けた分割準備会社)の設立に関するお知らせ
|東京急行電鉄株式会社

東急も不動産事業をしていた

実は、東急(東京急行電鉄)も不動産事業に取り組んでいました。東急は住民の社会インフラとして鉄道を運営してきたという側面から、東急不に比べるとどちらかというと住宅街の「街づくり」を重点に置いて不動産事業を進めてきたように見受けられます。これまでに開発してきた多摩田園都市地区などはその代表例です。

渋谷スクランブルスクエアも

その転換期が訪れたのが同エリアでの2015年の二子玉川ライズ完成・開業です。そこから4年の月日が流れ、2019年11月には渋谷スクランブルスクエアをオープンさせ、新しいエリアへの本格進出、不動産事業の本格化を感じさせます。スクランブルスクエアはJR東日本・東京メトロ・東急、そして3社が共同出資している渋谷スクランブルスクエア株式会社の4社が運営している複合施設で、渋谷再開発を象徴する超高層ビルです。渋谷の持つイメージに反し、意外にも東急不動産は関わっていません。

東急不の不動産事業

一方で東急不はスクランブルスクエアには携わっていないものの渋谷再開発に注力するほか、東急プラザがある銀座エリア、羽田・東京湾・そして東京・品川にも近い浜松町エリアにも現在力を入れています。かつての東急の不動産事業と比べるとオフィス街や人口が多い地区を再開発して新たなランドマークを創出しようとする傾向が見られます。

両社の力関係

もちろんこれまで紹介した以外にも両社さまざまな事業に取り組んでおり、些細な違いなどもありますが、大方の事業内容と地盤は類似しているようです。その両社の力関係はどのようになっているのでしょうか。

東急は上述の不動産事業を行いつつも持株会社であり、東急不動産ホールディングスに15%前後出資しています。東急電鉄に対しては100%出資し完全子会社化しています。

営業利益では東急不に軍配

このように、もともとはその名の通り東急が親で、東急不が子のはずでした。しかし、不動産事業に絞って言えば、営業利益は東急不が大きく差をつけて勝っています。東急不の2019年3月期の営業利益は約802億円であるのに対し、東急の不動産事業の営業利益は約320億円となっています。

参考:業績ハイライト|東急不動産ホールディングス株式会社
参考:セグメント別情報|東急株式会社

合併?協力体制?

小さい親が大きな子を合併させようという流れは今のところなく、ここしばらくはグループ統合には向かわないと思われます。ただし、互いに東急沿線の土地を所有しているため、協力しあうプロジェクトは今後も増えるでしょう。その理由は丸の内や港区などは三井不・三菱地所などが既に着手しているためで、現に二子玉川エリアでは両社が協業して開発を進めており、特に上述の渋谷再開発では両社の最大の見せ場となるはずです。スクランブルスクエアでは両社の協業はありませんでしたが、超大規模再開発でのタッグが両社の命運を握っているでしょう。

選考への影響

総合デベロッパーの選択肢が増えた

東急と東急電鉄に分社し、前者が不動産事業に注力することで、デベロッパー志望の就活生にとっては選択肢が1つ増えたことになります。特に東急不動産はもちろん、三井不動産や三菱地所、野村不動産といった総合デベロッパーを受検する予定だった学生にとっては魅力的な受検企業になるでしょう。

ただし、東急と東急不での志望動機の書き分けはより難しくなり、企業研究に要した時間や熱意の差が如実に表れるのではないでしょうか。実際に説明会に足を運んで将来像や社風の僅かな違いを肌で感じることが大切です。

東急での職種

今までの東急では新卒採用は総合職コースのみで選考フローの中で鉄道・不動産事業のいずれに就きたいかを話していましたが、新生・東急の採用では総合職コースと鉄道エキスパート職コースに分かれています。これにより、鉄道に関わりたかったのに不動産の部署に配属されるミスマッチのケースは少なくなるでしょう。ただし、総合職コースと鉄道エキスパート職コースの併願はできないようですのでご注意ください。

併願して通過率をアップ!

両社を併願することで志望動機の一部を共有することができますし、両社の違いも顕著に見えるはずです。片方の選考で得た知識や経験がもう一方の選考を通過するためのカギを握るといったケースが今後も増えるでしょう。経営形態が変わって間もない時期、就活戦略を練るのが大変かとは思いますが、とにかく自分の足で行動して肌で雰囲気を感じ取ることが大切です。