就活市場で人気高まるコンサルティングファーム。人気とは裏腹に、実態は分かりにくい業界です。「興味はあるけど、残業が大変そう」「転職しやすいって本当?」と気になる就活生も多いはず。そこで今回は、外資・日系コンサルティングファームの内定者である筆者が業界の仕事内容、残業時間、転職を中心に紹介していきます。
Summary
コンサルティング会社の仕事内容
コンサルタントは具体的にどのような業務をこなしているのでしょうか。
仕事内容はクラスによって下流から上流へ
コンサルティング会社では、コンサルタントを中心とする【一般社員】と、マネージャー以上の【管理職】で仕事内容が違います。共通するのは、プロジェクト単位で業務を遂行することです。
一般社員(アナリスト・コンサルタント)
一般社員は、プロジェクトの中で割り振られた個別の業務に従事するようです。若手社員であれば、資料作成や議事録の作成などを担当します。IT案件では、クライアント企業で詳細なシステムの機能を相談・設計する業務が多い印象です。経験の浅い若手社員は上司のもとでさまざまな役割を与えられ、成長していきます。
大まかな傾向は以上の通りです。しかし、コンサルタントの行う業務はプロジェクトによって大きく異なります。クライアントに新システムの解説をしたり、各部署にヒアリングするなど上流・前面に出ていく業務も担えるそうです。
管理職(マネージャー・パートナー)
一般社員が個別の業務に従事していた一方、管理職はプロジェクト全体の業務管理を行います。一般社員と異なるポイントは営業を行うことです。コンサルティング会社はクライアントからプロジェクト(案件)を受注し、遂行することで対価を得ています。このプロジェクトの受注を行うために、クライアントと話し合いを行うのが管理職です。受注が決まると、会社内のフリーのコンサルタント(available状態といいます)からメンバーの選抜を行い、プロジェクトがスタートします。プロジェクトが始まると管理職は全体の進捗を管理し、必要に応じて修正を行います。プロジェクトを創出し、完遂するという大事な役割を担っているわけですね。
コンサルティング会社は激務なのか?
「プロジェクトによる」というあるある回答
「コンサルタントは激務!」というイメージは強いですよね。興味がわいても、激務と聞くと躊躇する就活生も多いはず。気になって「何時に帰りますか?」「残業は多いですか?」と質問すると、95%の確率で「プロジェクトによる」と答えられます。これは事実なのでしょうが、就活生のモヤモヤは残ります。ここからは、【残業時間の概観】【案件の時期】【ポジション】に関して傾向をお話しします。
会社ごとに異なる労働時間
上の図はコンサルティングファームの月間平均残業時間をグラフにしたものです。おおむね、【40~80時間】の水準に収まっています。戦略系コンサルティングファームは少数精鋭であるため、総合系に比して残業時間が長くなる傾向があるようです。アクセンチュアやアビームなどITに強みを持つファームの残業時間が短いことも興味深いですね。
働き方改革により短縮されつつある業務時間
「コンサルティングファームは激務!」というイメージは未だに残っています。しかしながら、働き方改革により残業時間は着実に短くなっています。上のグラフは主要コンサルティングファームの2014年と2019年の残業時間を比較したものですが、いずれのファームでも大幅な残業の減少がみてとれます。特にアクセンチュアは積極的な働き方改革の推進を行っており、現在は月間平均34時間へ残業を圧縮しています。他社の現役コンサルタントに話を伺ったところ、
「アクセンチュアの働き方改革が成功しすぎて、弊社から人材が流出している」
とおっしゃっていました。人材を集めるためにも、各ファームでこれからも積極的な取り組みが進められる見込みです。しかし一般的な事業会社に比べて「残業が少ない!」と言える水準では必ずしもないため、注意が必要です。
プロジェクトの時期によって状況が異なる
プロジェクトはスタートしてから終わるまで、さまざまな行程に分かれています。一般的な傾向では、【プロジェクト後半】になると忙しくなるケースが多いようです。これはなんとしても納期に間に合わせる必要があるためです。現役コンサルタントの方は「夏休みの宿題と同じ」という表現をされていました。実際にコンサルティングファームのインターンシップに参加すると、納期に追われながら資料作成をする体験ができます。一方プロジェクトが完了するとアサインされていない時期に入るため、自由に休みを取れるようです。現役のコンサルタントでは海外旅行に行かれる方が多い印象でした。
役職が上がると忙しい
一般的な事業会社にも言えることですが、ポジションが上になるほど忙しく傾向にあるようです。特にマネージャーからは管理職になり、プロジェクトを完遂する責任を負います。管理職になると残業代が出ない(年俸制など)ことが多く、一般社員より忙しくなると伺いました。以下のグラフは各社の「コンサルタント」と「マネージャー」の役職ごとの残業時間です。やはりマネージャークラスの方が比較的残業時間が長めになる傾向があります。
「Openwork」のデータより筆者作成
コンサルティング会社に就職すると転職しやすい?
行先は【同業界・事業会社・起業】が主流
コンサルティングファームから転職される方の大半は上記3つのキャリアパスを選択します。これらの選択肢の中でも特に多いのが、意外にも同業界への転職です。元のコンサルティングファームから他のコンサルティングファームへ転職するわけですね。特に深刻な人手不足に陥っている近年は業界内で人材の引き抜き合戦となっているようです。業界内で転職をする場合、若手はさまざまな職種で採用されますが、管理職は異なります。元の会社で所属していたサービスラインや知見のあるインダストリーへ配属されることが多いようです。特にテクノロジー系の人材は各ファームで枯渇しており、SIerなどIT系事業会社からも人材を集めています。
コンサルタントから事業会社というキャリアパス
「コンサルは転職価値があるから、とりあえず入社しよう」という就活生の方も多いでしょう。しかし、安易に「コンサル=転職しやすい」と考えるのは危険です。かつてはコンサルタントも少数精鋭で、労働市場における経営コンサルタントは売り手市場でした。しかし近年はコンサルタントの採用数が拡大し、また経営だけでなく業務やITのコンサルタントが増加しています。経営コンサルタントを主に募集している事業会社では戦略コンサルタント出身者でなくては不利になる可能性があります。メーカーならSCMコンサルタントの需要が高い、など身につけた専門性によっても選択肢は変わってきます。「いずれ事業会社に…」とお考えの方は、どの業界・企業に何を武器にして入社するのか、具体的なビジョンを立てておきましょう。
十二分な業界研究を
コンサルティングファームは黒子の職業であるため、なかなか実態が見えません。チャレンジング・高負荷な仕事であることは事実です。イメージや待遇だけでなく、実態を調べてから入社をご検討ください。