用語集

ジョブローテーションとは?目的からメリット・デメリットなどを徹底解説

ジョブローテーションをご存知でしょうか。

ジョブローテーションを正しく活用できれば、社員の業務への理解や認識を深めることが可能です。

一方、理解せずジョブローテーションを行ってしまうと業務の効率低下を引き起こすこともあります。当記事で詳細に解説していますので、ぜひ最後までご一読ください。

ジョブローテーションとは?

まずはジョブローテーションの定義や広まった背景を解説します。

言葉の意味

ジョブローテーションは「社員の能力を開発するために、計画に基づいて行われる戦略的人事異動」を意味します。

一昔前は、終身雇用を前提とする日本企業固有のは仕組みと考えられていましたが、現在では社員育成のために導入する場合が多いです。

参考:ジョブローテーションとは – コトバンク

ジョブローテーションに対する考え方の変化

ジョブローテーションに対する考え方は、昔と現在で異なります。

以前の考え方

かつての日本企業は、長期雇用を前提とした「企業内ゼネラリスト」を育成するためにジョブローテーションを実施していました。企業内ゼネラリストはいわゆる経営の幹部候補です。企業の内部事情や人脈を幅広く有する社員が、将来の経営幹部として異動を繰り返す傾向にありました。

現在の考え方

しかし、現在のジョブローテーションに対する考え方は違います。

事業の多角化や、技術力が高度なものになっている背景があり、「ジョブローテーション=戦略的な人材育成」という考え方にシフトしています

  1. 適正な人員配置をするため:社員に複数の業務を経験させることで、適正に合った人員配置がしやすくなります。
  2. 高度な人材を育成するため:現在は、社員に様々な現場を経験させることで、視野が広がり、より高度な業務を行える人材に成長します。
  3. 社員の業務マンネリ化を防ぐため:ジョブローテーションは業務のマンネリ化防止やモチベーション向上にも繋がります。

ジョブローテーションのメリット

ジョブローテションのメリットは、企業側・従業員側の両面があります。

それぞれについて解説していきましょう。

企業にとってのメリット

企業にとってのジョブローテーションのメリットは下記です。

社員の能力が幅広くなる

会社の全体像を把握し総合的な判断のできる社員を育てることができます。視野の広い社員によって、新しいアイディアの創出や、課題の発見がされます。

社員の適正を見極めやすくなる

社員に様々な職種や業務を経験させることで、社員の強みと弱みが明確になります。適材適所の人材配置が実現し、会社の生産性や利益の向上に繋がります。

業務の属人化を防止できる

一つの業務に対し複数の社員が対応できるようにする環境が整います。そのため、業務の滞りや社員の負担を軽減することができる。社員に対し平等に仕事を与えることでワークライフバランスの調和も推進できます。

部署間の連携が深まる

社員に複数の部署を経験させることで異なる部署間での円滑なコミュニケーションが促進されます。社内の横断的なネットワークが構築されると、風通しの良い職場となり、仕事を円滑に進めていくことができます。

参考:ジョブローテーション制度とは?目的やメリット・向いている企業 | ボクシルマガジン

従業員にとってのメリット

社員(従業員)にもメリットがあります。

さまざまな部署・業務を経験でき、柔軟な思考が身に付く

多角的な視点を持ち、応用力のあるスキルを身につけることができます。

複数部署での業務経験によって、視野が広くなり、他部署との連携を意識して業務を遂行できるようになります。

自分の向き不向きを発見できる

自分のやりがいや得意不得意を発見できる機会になります。自身の新しい能力を開発でき、最大化することが可能です。そのため、社員にとって働きがいを見つけられる期間となるでしょう。また、自身を正しく理解できるため、適正がある業務や部署に配属される可能性が上がります。

広い人間関係を構築できる

特定の部署に限らず、広い人間関係を構築できます。様々な部署とのコミュニケーションが円滑に行われ、うまく業務連携ができ、仕事がスムーズに進むようになります。

ジョブローテーションを導入することで、幅広い人脈・知識・経験を身につけられることから、社員の能力の底上げが可能になります

加えて、適正のある部署を見極めやすくなり、自分にとって最も力を発揮できる業務を見つけやすいのもジョブローテーションのメリットです。

ジョブローテーションのデメリット

一方、ジョブローテーションにはデメリットもあります。

企業・従業員それぞれにデメリットがありますので、両方を紹介しておきましょう。

企業にとってのデメリット

まずは企業にとってのデメリットです。

スペシャリストを育成できない

ゼネラリストを教育するには効果的なジョブローテーションですが、スペシャリストを育成するには不向きです。一定の期間で業務内容が変わるため深い知識や豊富な経験を得ることができないからです。スペシャリストが必要な部署、特に専門性が非常に高い場合は、ジョブローテーションを避けましょう。

人員コストがかかる

ジョブローテーション実施後は再教育が必要です。新しい業務を覚えるにはある程度の時間がかかるため時間的にも人員的にもコストがかかってしまいます。また該当社員が退職した場合、今までの教育コストはかなり大きい損失にとなります。

退職に繋がるリスクがある

希望としないジョブローテーションにより社員のモチベーションが低下することがあります。最悪の場合、退職に繋がりかねません。これを防ぐためには、社員への期待をきちんと伝えたり、意思確認をする場を定期的に設けることが必要です。

従業員にとってのデメリット

従業員側にとってもジョブローテーションはデメリットがあります。

スペシャリストになれない

業務のスペシャリストは育ちにくいです。深い理解や経験は積みにくく、知識の蓄積が難しいからです。また、このような不満から社員のモチベーション低下にも繋がる恐れがあります。

希望していない部署に配属されるケースがある

ジョブローテーションは人材育成計画の一環で行われるため、希望以外の業務も一定期間従事しなければなりません。一つの部署で専門性を深く身に付けたくても、期間終了まで待つ必要があります。

ジョブローテーションの導入に向いている企業とは?

上記のメリット・デメリットを踏まえた上で、ジョブローテーションが向いている企業の特徴についてまとめました。

業務の流れが一貫している企業

業務の流れ(フロー)が一貫している企業はジョブローテーションが向いています。

たとえば製造業です。社員全員が作業フローを理解し、業務を円滑に進められるようになります。また、商品開発や基礎研究の業務を担当している社員を、営業などに異動させるのも良いです。お客様の生の声を聞くことは、モチベーションのアップにつながるだけでなく、本来の業務のヒントにもなりえるからです。

社員が多い企業

社員が多い企業も向いています。同等の能力を持った社員が数多く存在するため、異動が繰り返されても、業務効率を維持したまま社員育成ができるからです。

逆に小規模企業で行うと、部署間のパワーバランスが崩れ、業務効率が悪化することがあるので注意しましょう。

ジョブローテーションを効果的に活用するためのポイント

ジョブローテーションを効果的に活用するためのポイントについてまとめました。

目的を社員に理解してもらう

しっかりと目的を周知しておかなければ、社員からの反発があったり、業務に集中しない社員が出てくる可能性があります、ジョブローテーションの効果を最大限発揮するために、社員にきちんと理解してもらいましょう。

例えば、勤続年数や年齢をもとに対象者を選定し、候補者のキャリアプランを考慮した配属先にしましょう。実施目的を踏まえた上で実施期間と目標を設定し、対象者へ内容を正しく知らせてください。

そうすることで、対象者から了承が得やすくなります。

サポートを充実させる

サポートも重要です。

サポートの例

  • 現場が社員を受け入れる準備を整える:業務のマニュアル化
  • 異動社員への配慮:引っ越し費用の負担、余裕をもった内示期間
  • 実施中の定期的な面談:目標に対する進捗状況の確認やフィードバック

などが必要でしょう。

対象者によってサイクル期間を変える

新入社員や若手社員が対象なら、全体把握が目的のため、3~6ヶ月スパンが一般的です。しかし幹部候補の場合は、マネジメントスキル養成が目的のため、3~5年スパンで行われる傾向があります。対象者によって適切なサイクル期間を設けましょう。

ジョブローテーションの成功事例

ジョブローテーションの成功事例について解説していきましょう。

ヤマト運輸

ヤマト運輸は新入社員の育成プログラムとしてジョブローテーションが導入されています。後方支援をメインに行う社員も、現場のドライバーを理解することで、将来的な企業の運営に重要なこととしています。

富士フイルムホールディングス

富士フイルムホールディングスでは新入社員の研修でジョブローテーションが導入されています。

主な目的としては、ビジネスマナーなどの基礎知識・スキルを習得すること、特定分野の技術を追求する姿勢などを磨くためです。

どの部署に配属されても活躍できるような人材を育成します。

参考:人材育成と働き方 | 富士フイルム

人事異動とジョブローテーションの違い

一般的な人事異動とジョブローテーションは目的が異なります。

どちらも異動するという点では同じですが、

人事異動:部署の強化や人員の補充が目的

ジョブローテーション:部署の強化や人員補充に加え、人材育成も目的に入る

同じ異動でも、ジョブローテーションの方が広い意味を持つ言葉といえるでしょう。

社内公募とジョブローテーションの違い

社内公募は、会社が必要条件を社員に提示し、社員自らが志願する制度です。

ジョブローテーションとの違いは、「社員の意思が介在するかどうか」です。

社内公募では、社員自らの意思でポストを決定しますが、ジョブローテーションは社員の意思とは無関係に人材を選定します。

まとめ:ジョブローテーションを正しく導入しよう

ジョブローテーションは「社員の能力を開発するために、計画に基づいて行われる戦略的人事異動」です。

ジョブローテーションを行うことで、社員が業務フローを理解し、より効率的に作業を行えるようになるというメリットがある反面、スペシャリストの育成が難しいというデメリットがあります。

メリット・デメリットの両面を理解し、自社でジョブローテーションを導入した方がいいかどうかをよく検討することが重要です。

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