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【臨床心理士が語る】『性格検査ミキワメ』の開発背景

こんにちは。株式会社リーディングマークの組織開発事業部で、性格検査を使った企業様や受検者のサポート、および研究開発のお仕事をさせていただいています、佐藤です。もともと京都大学の教育学研究科博士後期課程を単位取得退学し、京都文教大学で臨床心理学を教えながら、臨床心理士としてのカウンセリングや研究を実践していました。2020年より当社にお呼びいただき、心理の専門家として、企業の皆様を支援しております。

今回は、私が開発に携わった性格検査の開発背景についてお話しできればと思います。

弊社の適性検査サービスである「ミキワメ」は、開発開始から6年ほどが経ちました。私はこの性格検査の作成と整備に学術的な立場から関わっており、最近では利用企業数1000社、40万人あまりにご利用いただいています。

本記事では

  • 性格検査「ミキワメ」がどのような想いに基づいて作られているか
  • 有効活用いただくためのポイント

についてお伝えしたいと思います。

ミキワメ性格検査、開発時の3つのこだわり

ミキワメの性格検査は、「1. 採用で重視する特性に特化」し、「2. 対策されにくく」「3. わかりやすく・ローコストで実施できる」ものです。

採用で重視される特性に特化

採用担当者が重視している性格特性というのは、トレンドがあるにしても、多くは何十年もあまり変わっていないことが、過去の研究で示されています。近年では主体性や成長志向、コミュニケーションが重視されるようになってきているものの、「チャレンジ精神」「バイタリティ」「意欲」「創造性」「行動力」などは長い間、上位に位置しています。

しかしこれらの抽象的な概念は、どうやって見極めているのでしょう?ほとんどは、面接者の経験や勘に頼っているのではないでしょうか。もちろん、それである程度妥当な場合もありますが、採否の根拠を提示しにくかったり、求職者の演技に乗ってしまったり、複数回の面接を実施するコストがかかったりと、課題は多くあるように思います。

そこで適性検査を利用するということになっても、受検コストが高かったり、受検時間が長くて候補者に負担をかけてしまうものが多いことが課題と捉えられてきました。

ミキワメでは、採用担当者が面接で重視する性格やマインドセットを、「コミュニケーション」「ストレスマネジメント」「バイタリティ」に集約し開発しました。加えて、受検者の負担を軽減するために、測定の信頼性が担保されるギリギリのラインまで質問項目を削っています。

少し脱線しますが、「コミュニケーション能力」という言葉について、みなさんはどのように考えるでしょうか。コミュニケーションは”能力”として測るべきものなのでしょうか。もちろん、自発的に会話をしようとしたり、相手の話に耳を傾けるよう意識して行動するコミュニケーション・スキルの考え方はあります。しかし一方で、人の自然な感覚としてのコミュニケーションには、特徴があるだけで、高いも低いもありません。社交的でも内向的でもそれぞれに良さがあり、活躍できる場面があるため、どちらをどれぐらいの割合で採用したいのかは各企業や職種、現場の要望などによって異なってきます。

加えて、意識すれば自己主張出来る人でも、それが自身の自然な感覚に反する方向であれば、無理して自己主張することがストレスの蓄積につながります。また、面接では意識して社交的に振る舞うスキルを持っている人も、入社後には自然な自分に従って内向的に振る舞う可能性もあります。ある程度のコミュニケーション・スキルも大切ですが、その人の自然なコミュニケーションの”特性”にも、面接で目を向けて見極めることが大切です。

対策されない構造〜心構えを変えたい〜

性格検査といえば、就活生にとっては「いかに良く見せるか」が大切なものです。何を詳しく見られているかわかりにくいぶん、その傾向は余計に強くなり、ついつい見栄が出てしまいます(これを「社会的望ましさの影響」と呼びます)。

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しかし、性格は本来、多義的なものです。長所が強調される特性にも、短所が必ずあります。チャレンジ精神のある人は、ずっと変わらない日常業務は退屈でやる気が出ないかもしれません。社交的で行動力のある明るい人は、孤独でじっとしていることに耐えられないかもしれません。何かの特性が高ければ完全にポジティブで良い、というわけではないのです。ミキワメでは、性格を各特性の「偏り具合」によって表現するため、どんな人にも長所・短所が見つかります。

ミキワメでは受検者向けのフィードバックを用意しています。受検前の段階でフィードバックがもらえること、性格に良し悪しがないことを受検者に案内することで、「素直に答える方が得である」「嘘を付くことが自分の不利益になる」という考え方を伝えるのです。

このように、ミキワメではライスケール(嘘をついているか見抜く質問項目)を混ぜる手法ではなく、適性検査の構造や心構え自体を変えようとするスタイルをとっています。

昨今は人材不足も叫ばれており、「見極める」ことに加えて、自社の魅力を伝え「惹きつける」ことも重要であると言われています。受検者に利益を提供し、受けてよかったと思ってもらえる検査体験が提供できることが大切です。候補者との腹の探り合いは、無駄なコストを産んでしまいます。採用担当者と候補者が信頼関係を結び、双方に利益のある検査文化が醸成されることを推進したいと思っています。

ローコストでわかりやすい

企業側の視点になりますが、ミキワメの検査は質問を約100問に絞っているため、実施はオンラインで1人10分です。また候補者受検は1回500円となっており、検査市場では最安水準になります。結果の出力は、心理学の専門家ではなくてもわかるような説明を心がけています。また、社内受検や組織分析を実施していれば、社内の誰に似ているかが一目でわかるようになっています。詳細はぜひお問い合わせください。

適性検査を有効活用するための3つの心得

こうした特徴や工夫によって生まれたミキワメの性格検査ですが、検査は実施するだけではなく、適切に「解釈」することが最も重要です。

性格検査は万能ではなく、解釈を間違えると、誤った決めつけや思い込みなど、人を不当に扱ってしまうことや、個人の不利益につながってしまいます。最後にこの点を少しまとめておきたいと思います。

心得その1 心の数値 

検査結果は性格そのものの数値ではなく、回答者が自身を省みて感じている数値です。自分で思う自分と、人から見られる自分は異なっています。そういったメタ的な視点で検査結果を見る必要があります。この点を見誤ると、貴重な人材を見逃してしまう恐れもあります。

心得その2 状況による変化 

検査で測定している特性は、性格のように変わりにくいものもあれば、行動や価値観のように変わりやすいものもあります。人は変化する生き物で、ライフステージや立場、状況によって検査結果が変わってきます。就活生が受検する場合は、あくまで就活という状況のもとで受検したものであることを忘れてはなりません。

心得その3 目に見えないことのリスク 

本来は見えないものが数値化されると、わかった気になってしまって、無意識に偏見や決めつけが生まれます。検査結果はあくまでもその人らしさの氷山の一角を記述したもので、その人の全てを示すものではありません。

加えて、いうまでもなく検査結果は貴重な個人情報です。検査結果が自分の知らないところで見られてしまうことは、受検者にとって大変リスキーなことなのです。したがって検査結果データは、候補者が自己開示してくれたことに敬意を示し、慎重に扱う必要があります。

個人の結果を利用するのは役員や人事、採用担当者やオンボーディング担当者など、必要最低限にとどめることを徹底すべきです。また、結果を、偏見に左右されず解釈し、「受検者本人や会社の利益のために使える人」でなければなりません。そうでない場合、人間関係の悪化や、パワハラなど別の問題に繋がってしまう可能性があることを肝に銘じるべきでしょう。

こういった悪影響は、目に見えづらい、自覚を持ちづらいということが最もリスクになります。常に注意を払って、結果を生産的に扱えるようになることが大切です。

最後に

いかがでしたでしょうか。適性検査やそのリテラシーについて少しでも理解を深めていただいていれば幸いです。性格検査は、互いに長所を伸ばし合い、短所を補い合う、そんな人間関係を構築するために使われなければなりません。性格情報を大切にし、個人の可能性を最大化し、社内で良い関係を築き合い、事業を促進し合う。そういった文化が、適性検査を使う全ての企業に拡がっていけば良いなと切に願っています。

参考文献

岩崎暁・西久保日出夫(2012)大学新卒者採用における「求める人材像」の業種別傾向に関する研究―企業ウェブサイトの発信メッセージ分析を通して―, コミュニケーション科学, 35, pp179-207.

ABOUT ME
佐藤 映
株式会社リーディングマーク プロダクト企画室 組織心理研究所 所長
兼 組織開発事業部 シニアコンサルタント

臨床心理士・公認心理師。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程単位取得退学。修士(教育学)。
京都文教大学で教鞭をとった後、2020年にリーディングマークに入社。
「ミキワメ」の性格検査、ウェルビーイングサーベイの設計責任者を務める。

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