用語集

ピーターの法則と創造的無能とは?概要と組織的な対策方法

一般に有能と言われる人材が集まる組織でも、個々がうまく活躍できず、組織不全になることがあります。組織の成功には適材の採用のみでなく、配置も重要です。

人材の配置において知っておきたい要素として「ピーターの法則」と「創造的無能」があります。両者について解説します。なお、本記事では「無能」は「仕事において成果を出せない人材」を指すとします。

ピーターの法則とは

ピーターの法則とは「能力主義の階層組織では、能力を発揮して昇進すると人材が成果を出せず、組織全体が無能な人材の集まりになる」という法則です。

ピーターの法則は南カリフォルニア大学のローレンス・J・ピーターが小説家のレイモンド・ハルとの共著「ピーターの法則-創造的無能のすすめ―」で提唱した階層社会学の理論です。彼は世界中に無能な人材がいることを指摘し、階層社会がその形成要因であると論じています。

同時に、組織が機能するのは創造的無能を発揮している人材がいるからだとも指摘しています。昇進を繰り返して限界に達した人ではなく、部下として限界に達していない人が組織を機能させているというのがピーター博士の理論です。

創造的無能とは

創造的無能とは「できない能力・領域を故意にそのままにし、無能かのように振る舞うこと」です。

昇進すると組織での役割が変わり、以前とは異なる業務を遂行しなければなりません。現場で活躍できる人材がマネジメントでも力を発揮するとは限らず、困難さがあります。仕事に対するモチベーションも人によって異なり、昇進を好まない人もいます。

現状が自分に最適だと考えて、昇進しないように巧妙に立ち振る舞うのが創造的無能の特徴です。昇進してくすぶるよりも、今の立場で最大限の手腕を振るおうと判断した個人が、組織の成長や成果に貢献しているとピーター博士は説いています。

ピーターの法則が成立する流れ

階層組織でピーターの法則が成立していくプロセスは下記です。

成果を上げて昇進する

有能な人材は組織に大きく貢献する成果を上げます。成果が評価されると昇進の機会を得て、上位のポジションに就きます。新しいポジションに順応してさらに大きな成果を上げるでしょう。

これを繰り返し、彼らは高いポジションに就きます。リーダークラスからマネージャークラスへと、さらには経営層に至ることもあります。

能力値の限界まで昇進する

しかし、どんな人にも能力の限界はあり、適性の問題も発生します。あるタイミングで成果が止まり、昇進できない状況に陥るでしょう。以前のポジションでは有能だった人材も、このポジションでは無能(=成果を出せない)な人材となります。

限界に達した人材が同じ地位に留まる

降格の少ない組織では成果が出せない人材も同じポジションに留まります。その結果、組織全体の生産性が低下し、業績の低迷につながります。無能になった人材がそのポジションに留まる限りは新しい人材が昇進してくることもなく、生産性が改善することもありません。

不適切なマネジメントが続く

優秀な人材の多くはマネージャークラスまで昇進し、部下のマネジメントを担います。しかし能力の限界に達している場合、不適切なマネジメントが続くため、部下も成果を挙げることが困難です。有能な部下の流出にもつながります。

無能と化した人材が高いポジションに留まり、ポテンシャルのある人材が失われる状況となります。結果として組織がうまく回らず、企業業績は低迷する一方になります。

ピーターの法則への対策方法

ピーターの法則を回避するにはどうしたら良いのでしょうか。ここでは人事の視点から、対策方法を紹介します。

限界に到達しないように組織を整える

現状成果を出せていない社員でも、成果を出せていたポジションがあります。限界に達していない段階に配置された人材で、組織が構成されるようにすることを目指しましょう。これは新規採用・昇進問わず、留意すべきポイントです。社員が能力を最大限に発揮できるポジションに配置されるように制度の整備を進めることが重要です。

昇給を中心にした人事評価制度を策定する

昇進のみでなく、昇給によって成果をたたえる人事評価制度を策定することで、人材が無能化しない環境を整備できます。

同じポジションでもグレードによって基本給が変わる人事評価制度にすれば、成果を上げられる有能な人材を、業務内容を大きく変えずに厚遇することができます。評価では昇給を中心にして、現在のポジションで力を発揮してもらえるようにしましょう。

昇進前に人材育成を実施する

組織の機能にはリーダーやマネージャーの存在が欠かせません。プレイヤーとして優秀な成果を上げた人材を昇進させるだけでは無能化するリスクがありますが、人材育成に力を注ぐことで、昇進後も活躍できる可能性が高まります。

リーダー研修やマネジメント研修を実施するだけで、昇進後の働き方を理解し、新しいポジションの役割に応じて適切に対応できるようになります。成果を出せる人材は学習意欲や向上心に溢れる可能性も高く、研修による成長が期待できます。

新しいポジションの仕事は誰もが未経験です。人材育成の研修を実施して知識やノウハウを与え、昇進後も活躍できる基盤を整えるようにしましょう。

降格基準を明確化する

昇進した結果として新しいポジションで能力を発揮できない場合、降格させて元のポジションで働かせるのが理想的です。降格基準を設けておき、成果が上がらなかったときには元のポジションに戻す仕組みを整えるのも、ピーターの法則に抗う効果的な対策です。

日本では降格に対して強い抵抗感を持つ傾向があります。しかし、成果を上げられないポジションで無理に働くのは本人にとっても大きな負担です。元のポジションで活躍できた方がモチベーションも上がるでしょう。

降格させる際は、明確な基準のもと、客観的な評価によって降格させるのが重要です。不満による退職で、良い人材が流出するリスクがあるからです。降格後のフォローの体制も整えるのが理想的でしょう。人材教育研修を実施し、成長した暁には再度昇進する機会を得られるようにすれば納得して働き続けてもらえる可能性が高くなります。

ピーターの法則に抗える体制を整えよう

組織のマネジメントを円滑に進めるには、階層構造を作るのが効果的です。しかし、階層組織はピーターの法則が成立しやすい問題があり、組織を無能化させてしまうリスクがあります。人事評価制度を適切に整備し、研修や降格を駆使することがピーターの法則を回避するための重要な対策方法です。

階層組織で会社を経営する限り、有能な人材の無能化の問題は常に付きまといます。新たに優秀な人材を採用しても、人材の無駄遣いをしてしまう例は珍しくありません。昇進による評価がもたらすリスクを理解し、昇給を中心にした人事評価制度を整えるのが安全策です。

ピーターの法則を念頭に置きつつ、採用した人材が成長していつも能力を発揮できる環境を整えるのが重要です。

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