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ホーソン実験って何?|概要と現代のビジネスに活かす方法を解説

「ホーソン実験」についてご存知でしょうか?

ホーソン実験は今から100年ほど前におこなわれた労働生産性に関する実験であり、その成果は現在のビジネスにも活かせるものです。

当記事ではホーソン実験の概要や、現代のビジネスで活かす方法を解説していきます。

ホーソン実験とは何か

ホーソン実験とは、アメリカの電話・通信機器メーカーであるウェスタン・エレクトリック社のホーソン工場で1924年から1932年にかけておこなわれた、労働生産性についての実験です。

全体で8年間にわたる実験でしたが、大きく2つの時期に区分されます。

  • 第一期(1924年11月〜1927年4月):照明実験
  • 第二期(1927年4月〜1932年5月):リレー組み立て実験など

第一期には照明と労働生産性との因果関係を明らかにすべく、「照明実験」が実施されましたが、失敗に終わりました。

その後、ハーバード大学の産業心理学者メーヨーや、経営学者レスリスバーガーが加わり、労働生産性についてより多くの実験・調査がおこなわれました。この時期は第二期と呼ばれます。

参考:ホーソン実験とは – コトバンク

ホーソン実験が実施された背景とその目的

ホーソン実験が開始された1920年代、アメリカは個人消費が急拡大する好景気でした。1914年〜1918年に起きた第一次世界大戦にて、連合国側に物資を輸出するなどして巨額の利益を手に入れ、債務国から債権国へと変わったのです。特に自動車や、家庭で使う電化製品を中心とした大量生産・大量消費が広まっていました。

そんな大量生産・大量消費の時代に利益を出し続けるために重要だったのが、「効率」と「労働生産性」です。効率や生産性が上がらなければ、大量の消費需要があったとしても生産が追いつかず、機会損失になってしまうからです。

そのような背景のなか、あらゆる条件下での生産性の変化を調べるホーソン実験が実施されました。

参考:『詳説世界史研究』

ホーソン実験の内容

ここからは、ホーソン実験で実際におこなわれた内容と、その結果について見ていきましょう。

ホーソン実験の具体的な内容は以下のとおりです。

  • 照明実験
  • リレー組み立て実験
  • 面接調査
  • バンク(電話交換機)配線作業実験

照明実験

最初に実施されたのが、照明実験です。照明と生産性との関係を調べるため、被験者は以下の2つのグループに分けられました。

  • 常に照明の明るい環境で作業するグループ
  • 100ワットから25ワットまで段階的に照明が暗くなる環境で作業するグループ

両グループともコイルを巻く作業をおこない、それぞれの作業速度を調べました。当初は「照明の明るい環境のほうが生産性は上がるだろう」と予想されていましたが、実際には「照明は生産性に影響しない」という結果が得られました。

また当初の予想に反し、照明が暗くなっても生産性が上がるケースも見られたのです。

参考:組織の人間関係の重要性!ホーソン実験とは?仕事場への生かし方も紹介 | ピポラボ | ピポラボ

リレー組み立て実験

労働条件と生産性との関連を調べたのが、リレー組み立て実験です。以下のような労働条件を変化させながら、ランダムに選ばれた6人の女性に継電器のリレー作業をおこなわせました。

  • 休憩時間
  • 軽食の有無
  • 賃金
  • 作業する部屋の温度

この実験では、労働条件が改善するにつれて生産性の向上が見られました。しかし、労働条件を元に戻しても、生産性は悪化することなく向上し続けたのです。そのため、「労働条件は生産性に影響しない」という結論が出ました。

参考:【人間関係論】ホーソン実験の実験内容とは?人間関係論が注目された背景とは – 人事担当者のためのミツカリ公式ブログ

面接調査

続いてメイヨーが中心となり、2万人以上の作業員に対するインタビュー調査が実施されました。

その結果、作業員の満足度や意欲は、賃金や労働時間といった労働条件によってはあまり左右されず、個々人の経歴や現場での人間関係に大きく影響されていることがわかりました。

以上から、「客観的な職場環境や労働条件よりも、個々人の主観的な感情が生産性に大きく影響する」という結論が得られました。

バンク(電話交換機)配線作業実験

ここまでの3つの実験・調査から、「現場には小規模のグループが存在しており、集団での作業に影響を与えているのではないか」という仮説が立てられました。その検証としておこなわれたのがバンク(電話交換機)配線作業実験です。

この実験では、現場で「インフォーマル・グループ」と呼ばれるグループが形成されており、共同作業に影響を与えていることがわかりました。インフォーマル・グループとは、上司・部下や作業での役割分担とは無関係に形成されたグループを指します。

実験のなかでは、インフォーマル・グループの状況に応じて作業者が作業量を減らす現象が見られました。また、監督者との関係が良好であるほどミスが起こりにくいという結果が出ています。

つまり、「インフォーマル・グループと、監督者との個人的な関係が生産性に影響する」ことがわかったのです。

ホーソン実験でわかったこととその影響

ホーソン実験でわかったことは、「感情に配慮した経営が生産性向上のために重要」ということです。

そしてホーソン実験から得られたこの教訓は、現在のビジネスシーンにも影響を与えています。

これらについて詳しく見てみましょう。

感情に配慮した経営が重要

ホーソン実験では、客観的な作業環境や労働条件よりも、むしろ個々人の主観的な感情こそがそれぞれの生産性に大きく関わっていることがわかりました。

実験がおこなわれた当時は、エンジニアで経営学者であったフレデリック・テイラーが提唱した科学的管理法に基づく経営が主流でした。この方法はフォード社の大量生産方式などで成果を出していたものの、人間の感情にはあまり目を向けていませんでした。

科学的管理法に基づく合理的な経営は確かに有効で成果が出ますが、労働者の生活水準が上がると、感情面への配慮なしには思うように働いてもらえなくなってしまいます。

  • 客観的な労働環境や労働条件は生産性にあまり影響を与えない
  • 作業の役割分担とは無関係に形成されたインフォーマル・グループが生産性に大きく影響する
  • 周囲からの注目・評価が生産性に影響を与える

ホーソン実験で明らかになった上記3点を踏まえ、生産性を上げるために感情に配慮した経営が目指されるようになりました。

参考:ホーソン実験とは?4つの実験と経営に深い影響を及ぼす人間関係論を解説 – Jobrouting

ホーソン実験に影響を受けたさまざまな取り組み

ホーソン実験はその後、心理学者アブラハム・マズローの自己実現理論など、理論分野に大きな影響を与えました。

もちろん理論分野だけでなく、現在のビジネスにおけるさまざまな取り組みにも活かされています。実際にさまざまな企業で、ホーソン実験の影響を受けた以下のような取り組みがおこなわれています。

  • メンター制度
  • フリーアドレス制
  • さまざまなメンタルヘルスサポートやケアなど

ホーソン実験の結果をビジネスに活かすには?

ホーソン実験の結果、仕事における生産性は労働環境や労働条件よりも、個人の感情に左右されやすいことがわかりました。

そのことを踏まえ、現在のビジネスで生産性向上のためにできる取り組みを紹介します。

何でも相談できる環境をつくる

個人の感情が生産性に大きく影響するため、メンバーが悩みや不安を一人で抱え込まないよう、相談・解決できる環境を用意することが大切です。メンバーが安心できるようになれば、より生産性が向上するでしょう。

まずは上司・部下との関係を強くするため、1on1ミーティングを取り入れることなどが効果的です。

またホーソン実験では、上司・部下という縦の関係だけでなく、インフォーマル・グループ、つまり横の関係も重要であることがわかりました。

上下関係や担当業務・部署などに縛られない、第三者的な相談窓口を設けるとよいでしょう。もちろん、公式な窓口だけでなく、何でも相談できるような活発なインフォーマル・グループをつくっていくことも大切です。

コミュニケーションが活発になる機会をつくる

インフォーマル・グループをつくり、コミュニケーションを活発にしていくためには、次のような企画が役立つでしょう。

  • 同好会やサークル活動
  • 食事会
  • スポーツ大会
  • 旅行
  • 懇親会
  • 社会活動(地域の取り組みへの参加など)

普段の業務とは異なる取り組みを設けることで、メンバー同士の相互理解がより深まり、枠組みにとらわれない人間関係がつくられる可能性があります。その結果、仕事に対する満足感や労働意欲が高まり、生産性の向上にもつながるでしょう。

社員同士でお互いを評価しあう機会をつくる

定期的に社員同士でお互いを評価しあう機会をつくると、「他者に見られている」という意識を醸成でき、ホーソン効果をうまく活用できます。

例えばディズニーの「ファイブスタープログラム」や「スピリッドオブ東京ディズニーリゾート」の制度です。

スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート:自分が素晴らしいと思うキャストの名前をカードに書き、カードの内容や枚数により「スプリットアワード」が開催される。

ファイブスタープログラム:素晴らしい活動をした評価された人は「ファイブスター・カード」がマネジメント側から渡される。これをもらうと、特別なパーティーに参加できる。 これらの制度は、キャスト同士や上司との関係性を高め、生産性の向上に繋がっています。

参考:アワード | 東京ディズニーリゾート キャスティングセンター

リーダーの育成

ホーソン実験の結果を活かしてビジネスの生産性を上げていくには、リーダーの育成も欠かせません。インフォーマル・グループができたら、そのなかでリーダーシップを発揮し、全体を好ましい方向に動かしていく人材を選びましょう。

グループにリーダーがいることで、ほかのグループとの連携がスムーズになります。またグループ内で行き違いなどのトラブルが生じたとしても、リーダーがうまく調整することで解決しやすくなります。メンバーはより安心して業務に集中できるはずです。

リーダーシップを醸成する研修を社内で企画したり、社外で実施されているリーダーシップ研修への参加を推奨したりするのも良いでしょう。

参考:組織の人間関係の重要性!ホーソン実験とは?仕事場への生かし方も紹介 | ピポラボ | ピポラボ

ホーソン効果とは

ホーソン実験と似たことばに「ホーソン効果」があります。これは人間の心理的な特徴をあらわす言葉であり、ホーソン実験によって明らかになりました。

ここではホーソン効果の意味と、ホーソン効果によく似た心理効果である「ピグマリオン効果」との違いを確認しましょう。

注目されることで成果に対する意欲が向上する効果

ホーソン実験では、作業員が周囲の人から注目や評価をされることで、より成果を上げようとする傾向が確認されました。この心理的な現象を「ホーソン効果」と呼びます。

参考:ホーソン効果とは – コトバンク

ピグマリオン効果との違いは?

ホーソン効果によく似た心理用語に「ピグマリオン効果」があります。ピグマリオン効果は、教師が生徒に期待をかけることで、実際に期待をかけられた生徒の成績が向上する現象です。

ピグマリオン効果の場合には、期待する側(教師)と期待される側(生徒)の間に上下関係があります。しかしホーソン効果の場合、期待する側とされる側の間に上下関係があるとは限りません。

参考:ピグマリオン効果とは – コトバンク
ピグマリオン効果とは? 効果を最大限引き上げるためのポイント | 記事・トピックス一覧 | 法人のお客さま | PERSOL(パーソル)グループ

まとめ

ホーソン実験は、労働生産性に影響を与える要因を見出すために行った調査です。この実験で主にわかったことは、以下の3点です。

客観的な労働環境や労働条件は生産性にあまり影響を与えない
作業の役割分担とは無関係に形成されたインフォーマル・グループが生産性に大きく影響する
周囲からの注目・評価が生産性に影響を与える

この実験から、人間の労働生産性は客観的な労働環境や労働条件よりも、個人の主観的な感情の影響を受けやすいことが判明し、感情に配慮した経営が重視されるようになりました。

現在のビジネスシーンにも、ホーソン実験の結果を踏まえた取り組みは数多くあり、実際に成果を出しています。個人の感情に配慮し、より生産性が高まるような取り組みをぜひ取り入れてみてください。

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