用語集

ゼロベース思考は優れた思考法!メリットや成功事例、トレーニング法を紹介

現代のビジネス現場は変化のスピードが早いため、新たな視点や柔軟な発想が欠かせません。
また、競合他社との競争は、日に日に激しさを増しています。他社に負けないイノベーションや画期的なアイデアを生み出すためにも、既存の枠組みや一般常識にとらわれない思考法が必要です。

そこで注目されている思考法が「ゼロベース思考」です。ゼロベース思考は、過去の成功体験を忘れ、物事を柔軟に考えるときに効果を発揮します。
本記事では、ゼロベース思考とは何か、メリットや企業の成功事例、トレーニング法などを解説していきます。

ゼロベース思考とは?

ゼロベース思考とは、先入観や思い込みをなくし、ゼロから物事を考える手法です。

私たちは普段の生活で、過去の経験や価値観、知識などに基づいて物事を考えたり、判断したりしています。しかし、先入観や思い込み、一般常識などに縛られて、柔軟な発想や革新的なアイデアを生み出せないことがあります。また、枠組みや価値観の固定化によって、課題を解決できないケースも少なくありません。

そこで、柔軟な発想や課題解決の手法として注目されているのが、ゼロベース思考です。

ゼロベース思考が注目される理由は?

ゼロベース思考が注目される理由は、価値観や働き方の多様化です。

消費者ニーズや価値観が多様化する現代において、企業間の競争は激しさを増し、製品の生産・消費サイクルも一段と早まっています。過去の成功体験に縛られた企業は生き残れず、イノベーションや画期的なアイデア、他社との差別化が必要なビジネス環境となっています。

また、終身雇用や年功序列が崩壊し、成果主義やジョブ型雇用を重視する企業も増えました。特に2020年以降は、テレワークや在宅勤務が浸透したことで、働き方の多様化が拡大しています。

多様化する価値観や働き方へ適応するために、先入観を捨てて新たな視点で物事を考えるゼロベース思考が注目されるようになりました。

ゼロベース思考のメリット

ゼロベース思考の主なメリットは、次の3点です。

  • 新しいアイデアを創出できる
  • 複雑な問題を解決できる
  • 顧客視点で考えられる

ひとつずつ解説していきます。

メリット1:新しいアイデアを創出できる

ゼロベース思考を用いれば、過去の経験や知識、先入観や枠組みを捨てて考えられるため、新しいアイデアを創出しやすくなります。

例えば、企業の商品開発において、前提知識や固定観念があると、他社と類似した商品やサービスが生まれることも少なくありません。
新しい商品や画期的なサービスを生み出すためには、過去の経験や事例を参考にするのではなく、ゼロ(白紙)の状態から考えることが大切です。

発想の妨げとなる「できない」や「不可能」などの否定的な意見を除外して考えると、革新的なアイデアが生まれやすいでしょう。

メリット2:複雑な問題を解決できる

ゼロベース思考では、どんな問題に対しても「解決策がある」という前提で考えるため、複雑な問題でも斬新な解決策を見出せます。

過去の経験や思い込みは思考に小さな枠組みを作ってしまうため、枠のなかでしか問題の解決策を考えられません。ゼロベース思考では、枠組みを取り払い、目の前の問題を見つめ直すため、問題の本質を理解できるようになります。
これまで見えなかった解決策や、思いつかなかった発想が生まれるのです。

複雑な要素が絡み合った問題でも、ゼロベース思考を使えば解決の糸口や可能性が見出せるでしょう。

メリット3.顧客視点で考えられる

ゼロベース思考が身につけば、「会社が売りたいもの」ではなく「顧客が求めているもの」を第一に考える視点が得られます。

ゼロベース思考を活用すると、顧客目線での発想や思考を得られるようになり、これまで自社が推してきた商品やサービスが、本当に求められているものかを見つめ直せます。
例えば、スマートフォンのカメラ性能で満足する人が、画素数の向上をウリにしたデジタルカメラを購入する可能性は低いでしょう。

また、過去に売れていた商品やサービスであっても、時代や価値観が変われば、やがて売れなくなります。過去の実績や古い価値観を捨て、今求められているものを顧客視点で考えられるのがゼロベース思考の特長です。

ゼロベース思考のトレーニング法

ゼロベース思考は、自分の思考を客観的に見ることが重要です。ただし、言葉では簡単ですが、実践となると容易ではありません。

そこでここからは、ゼロベース思考を身につけるためのトレーニング法を紹介します。

トレーニング法1:自分の前提に疑問を持つ

思い込みや先入観など、自分のなかに前提が隠れていないか疑問を持ちましょう。
思い込みや先入観は意識しないと自分でも気づかないため、常に自分の考えに疑問を持つことが重要です。

おすすめの思考法が、クリティカルシンキング(批判的思考)です。普段受け入れている事柄でも「なぜ正しいと言えるのか?」と客観的に考えながら結論を出していきます。クリティカルシンキングを鍛えれば思考の精度を高められるため、思い込みや先入観を捨てて物事を見る力が向上します。

トレーニング法2:論点を忘れない

いろいろと考えているうちに、いつの間にか論点が変わってしまうこともあります。時間をかけて解決策や結論を出してみても、そもそも論点がズレてしまっていては本質的な解決が困難です。

「今考えるべきことは何か」「何が問題なのか」などを常に意識して、解決すべき問題の論点を忘れないよう意識しましょう。

トレーニング法3:全体像と物事のつながりを把握する

ゼロベース思考では、物事の全体像とつながりを把握することも重要です。

論点がズレないように配慮しながら、「何が何と関係するのか」「因果関係はあるのか」などを注意深く見極め、思考を整理しましょう。

トレーニング法4:身近な物事で考える癖をつける

普段の生活で触れる情報、友人や家族の話などを題材にして、ゼロベースで考える癖を身につけましょう。

例えば、新聞やテレビで報道されたニュースを鵜呑みにせず、ひとまずフラットに考えます。「少子高齢化問題」「老後の年金問題」「営業成績を上げるための方法」など、気になったテーマを日頃から考えるよう意識すれば、自然とゼロベース思考が鍛えられるようになるでしょう

ゼロベース思考と比較される思考法

ゼロベース思考と比較されるものとして、以下の2つの思考法が存在します。

  • 仮説思考
  • トレンド思考

ビジネスシーンで誤用されることも多いため、正しく使い分けられるようにそれぞれの理解を深めておきましょう。

ゼロベース思考と仮説思考の違い

仮説思考とは、目的や目標を達成するために仮説を立て、検証して最善策を追求する思考法です。

仮説に基づき検証と修正を素早く行うことで、効率的な問題解決を図れます。ただし、仮説以外の可能性を捨てて検討していくため、ほかの可能性を見落としやすく、イノベーションが生まれにくい特徴があります。

過去の知識やデータをスタート地点として考える仮説思考に対し、前提知識や条件を排除して考えていくのがゼロベース思考です。

ゼロベース思考とトレンド思考の違い

トレンド思考とは、過去の経験や知識をヒントに結論を出す思考法です。

トレンド思考では、過去の成功事例や出来事からアイデアや解決策のヒントを得ようとします。つまり、過去をベースに改善と改良を繰り返すことで、課題解決の糸口を探す方法といえるでしょう。

ただし、過去の経験や知識をヒントにするため、画期的・革新的なアイデアが生まれにくいデメリットも存在します。

ゼロベース思考の成功事例

ここからは、ゼロベース思考の代表的な成功事例を3つ紹介します。

  • ユニクロのヒートテック
  • JRの湘南新宿ライン
  • ドトールコーヒー

ひとつずつ解説していきます。

事例1:ユニクロのヒートテック

ゼロベース思考の成功事例として、ユニクロの保温インナー「ヒートテック」は有名です。ヒートテックは、東レとユニクロの共同開発で生まれた大人気ウェアです。

もともと「モノづくり」を重視していた東レは、「消費者が求める新しいサービス開発」へと発想を転換し、ユニクロと提携する方針を打ち出しました。

ユニクロからの情報に基づき、東レが消費者ニーズに合った素材を開発し、これまでの常識とは異なるデザインと機能性を兼ね備えたヒートテックが生まれました。
共同開発を通じて大胆な発想転換に成功した結果、ヒートテックは大人気商品へと成長したのです。

事例2:JRの湘南新宿ライン

JRの湘南新宿ラインは、貨物・回送路線を旅客路線として使用することで、顧客ニーズの向上に成功しています。

首都圏を走る路線には多くの利用客がいるものの、運行数には限度があり、非効率な運行状況でした。
そこでJRは、貨物線を旅客線として活用する案を打ち出し、より多くの乗客輸送を実現しました。従来の固定観念では、貨物線を旅客線にすることは考えつかないアイデアでした。しかし、ゼロベース思考を用いて常識を取り払った検討をした結果、斬新な改善策が生まれたのです。

事例3:ドトールコーヒー

ドトールコーヒーは、喫茶店やカフェのコーヒー価格が1杯500円だった時代に、1杯150円でコーヒーを提供したことで有名です。

創業者・鳥羽博道氏の「消費者に負担のない価格で美味しいコーヒーを提供したい」という強い想いから、安くて美味しいコーヒーの提供に成功しました。
コーヒーの平均価格の半分以下という価格設定は、既存の考え方に捉われず、消費者目線の考えがあったからこそ思い浮かんだアイデアといえるでしょう。

ゼロベース思考を学べるおすすめ書籍

ゼロベース思考を体系的に学び、自身の思考法として定着させたい場合は、書籍による勉強が有効です。
ここでは、ゼロベース思考関連のおすすめ本を3冊紹介します。

  • 0ベース思考
  • イシューからはじめよ
  • ビジネススキル・イノベーション

それぞれ詳しく紹介していきます。

おすすめ書籍1:0ベース思考

『0ベース思考』は、シカゴ大学の教授であるスティーヴン・レヴィット氏が執筆した本です。
「仕事をやめるか、恋人と別れるか」といった身近な問題を挙げ、何事もバイアス(偏見や先入観)をゼロにして考えれば合理的な答えが出せる、と解説しています。

実例を踏まえながらゼロベース思考を学びたい人におすすめの一冊です。

おすすめ書籍2:イシューからはじめよ

『イシューからはじめよ』は、イシュー(重要なこと)の見極めの大切さを丁寧に解説している一冊です。

本当に解を出すべき問題は100個のうち2~3個であるため、すぐに解決せず、本当に解くべき問題(イシュー)かを見極め、解の質を上げることが大切、というのが本書の主張です。

ゼロベース思考やロジカルシンキングの基礎が身につくのみならず、問題解決のスピードと質を大きく向上させる一冊といえるでしょう。

おすすめ書籍3:ビジネススキル・イノベーション

本書は、時間・思考・直感を中心に67のビジネススキルを紹介した一冊です。ゼロベース思考を「前向きに進むカヌー」に例え、思考のイノベーションを生み出すスキルとして紹介しています。

著者は、優れた問題解決手法で数々の公共事業のコスト削減を実現させた、経営コンサルタントの横田尚哉氏です。
イラストが豊富で、ゼロベース思考以外のビジネススキルについてもわかりやすい内容となっています。

まとめ

ゼロベース思考は、先入観や思い込みを捨ててゼロから物事を考える思考法です。
ゼロベース思考を使えば、これまでの当たり前を新しい視点で見直せるようになり、斬新なアイデアの創出や複雑な問題への対応が図れます。

変化の激しい現代のビジネス環境において、過去に捉われず新たな視点を持てるゼロベース思考は、今後ますます重要になるでしょう。

ゼロベース思考ができる人材は、企業の成長に貢献できます。研修プログラムや教育カリキュラムに導入し、社内人材の育成を推進していきましょう。

参考:
東洋経済オンライン|ドトールのコーヒーが根強く愛される理由
amazon|0ベース思考—どんな難問もシンプルに解決できる
amazon|イシューからはじめよ ― 知的生産の「シンプルな本質」

ABOUT ME
ミキワメラボ編集部
ミキワメラボでは、適性検査、人事、採用、評価、労務などに関する情報を発信しています。

活躍する人材をひと目でミキワメ

ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。

社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。