用語集

デファクトスタンダードとは?事例からメリット・デメリットについて解説!

世の中には、同じ規格の商品が溢れています。
たとえば、キーボードの配列が会社によってバラバラだったとしたら、パソコンが使いづらくて仕方ありません。

しかし、実はキーボード配列には明確な規格が存在しません。
長い年月をかけて確立された共通認識による規格で、このような規格を「デファクトスタンダード」と呼びます。

当記事ではデファクトスタンダードについて、言葉の意味からメリット・デメリットまで詳しく解説していきます。

デファクトスタンダードとは?

デファクト(de facto)はラテン語で「事実上の」を意味し、デファクトスタンダードとは「事実上の標準」という意味です。
国内外の標準化機関が定めていないにもかかわらず、市場競争の結果、グローバルスタンダードが成立している場合をデファクトスタンダードとみなしています。

デファクトスタンダードは公的な基準ではないため、デファクトスタンダードから外れた製品を作っても問題ありません。
ただし、消費者に受け入れられるかどうかは別問題です。

後述するキーボード配列(QWERTY)などが良い例です。合理性がないにもかかわらず、デファクトスタンダードだからという理由でどの企業も同じ配列を採用しています。
一度浸透すると強力な影響力を発揮するもの、それがデファクトスタンダードといえます。

参考:デファクトスタンダードとは – コトバンク

市場競争に勝利することで勝ち取れる規格

あるメーカーの技術や仕様を使った製品が広く普及した結果、他社も追随して規格を揃えざるを得なくなることでデファクトスタンダードは成立します

デファクトスタンダードが確立した場合、自社規格が業界で幅広く使用されるようになるので、大きな利益を得ることが可能です。
ただし、デファクトスタンダードが成立するためには、シェアを圧倒的に獲得する必要があるため、簡単なことではありません。

多くの企業がデファクトスタンダードを目指して製品開発に取り組んでいます。しかし、新しい基準として認知されるには、莫大なマーケティングコストが必要であるため、豊富な資金力や綿密な経営戦略が必要です。

参考:デファクト・スタンダード | 用語解説 | 野村総合研究所(NRI)

複数の企業が協力して規格を作る場合もある

デファクトスタンダードは、1社のシェア拡大によってのみ成立するものではありません。
複数の企業が連携・協力して成立するケースも存在します

複数の企業が事前に規格を示し合わせて統一することで、消費者への利便性が高まり、シェア拡大に伴ってデファクトスタンダードになるケースもあります。
そのため、デファクトスタンダードの成立はシェア拡大だけでなく、消費者や製造業者をいかに取り込むかがポイントとなっています。

デジュールスタンダードとは?

デジュールスタンダードとは、ISOやJISなどの国際標準化機関などによって定められた規格のことです
デファクトスタンダードが事実上の規格であるのに対し、デジュールスタンダードでは標準化機関が規格を定めています。

デジュールスタンダードの例としては、乾電池などが該当します。特定の企業が基準を作ったのではなく、複数の企業や専門家、国際標準化機関の話し合いによって、サイズや使用材料などが統一されました。

参考:デジュールスタンダードとは – コトバンク

デファクトスタンダードのメリット

ここからは、デファクトスタンダードのメリットについて解説していきます。

主なメリットは、下記の3点です。

  • 市場に左右されなくなる
  • パテント料を取れる
  • コスト削減

それぞれ詳しくみていきましょう。

市場に左右されなくなる

デファクトスタンダードになれば、自社の規格が業界標準として確立されるということなので、市場の動向に左右する必要がなくなります

他の企業が適合する製品の開発に注力せざるを得ない状況の中、デファクトスタンダードを勝ち取った企業は、安定した収益を得ながら事業を進められます。

パテント料を取れる

パテント料が取れるというメリットもあります。
パテントとは、特許権を意味します。デファクトスタンダードの確立時に特許を取得しておけば、規格を使用する企業に対し、ライセンス料やロイヤリティーを取ることが可能です

デファクトスタンダードになれば、他社の規格が市場へ参入しにくくなるだけでなく、パテント料も取れるので、会社の利益をさらに増やせるでしょう。

参考:デファクトスタンダードとは?意味・事例・対義語・ポイントを解説 | 識学総研

コスト削減

デファクトスタンダードになれば、自社製品が消費者に広く知れ渡るため、CMや広告を打ち出さなくても商品販売が可能です。
つまり、マーケティングコストを最小限に抑えられるということです。

市場が大きいほど競合との顧客獲得争いが激しいため、マーケティングコストの負担が多くなります。デファクトスタンダードになるまでのコストを先行投資と考え、自社規格のPRや普及活動に注力する企業が存在する背景には、将来的なコスト削減が理由の1つとなっています。

デファクトスタンダードのデメリット

安定的な収益やコスト削減が期待できるデファクトスタンダードですが、デメリットも存在します。

デファクトスタンダードを目指す企業は、以下の3点に気をつける必要があります。

  • 消費者にとってメリットになるとは限らない
  • 模倣品への対応に追われる場合がある
  • 独占禁止法に抵触する危険性もある

それぞれ詳しく解説していきます。

消費者にとってメリットになるとは限らない

企業側にメリットが多いのは事実ですが、消費者にとってデファクトスタンダードは選択の自由を奪われる可能性を秘めています

たとえば、パソコンのOSであるWindowsはデファクトスタンダードですが、Windowsのシェアが大きいために、ほとんどのソフトがWindows準拠で制作されています。
そのため、Windowsを使いたくない人でも、ソフトが使えないから仕方なくWindowsを使用する人が少なくありません。

特定の製品にシェアが偏っていくと、その製品を使用しないと利便性が得られないため、消費者の購入選択肢が限定されてしまうことがあります。

模倣品への対応に追われる場合がある

デファクトスタンダードになると、多くの他社製品が規格に沿って作られるようになります。
他社からパテント料を得られる点は魅力ですが、中には模倣品を作成して利益を上げようとする悪質企業も存在します。

その場合、デファクトスタンダードを勝ち得た企業は、著作権侵害・特許権侵害などで訴訟対応をしなければいけないケースも出てくるでしょう
デファクトスタンダードの範囲が国際レベルである場合は、世界中で模倣品が作られるリスクが生じるため、対応も煩雑になっていきます。

独占禁止法に抵触する危険性もある

デファクトスタンダードは、事実上の業界基準となる規格です。
しかし、あまりに市場を独占しすぎると、独占禁止法に抵触する危険性があります。

独占禁止法とは、大企業が市場を独占し、価格操作や不公正な取引を行なうことを防ぐための法律です。
独占禁止法に抵触しないようにする方法として、全てを自社で抱え込むのではなく、ある程度オープンに規格の特許権などをコントロールして、他社の参入を促進する方法が挙げられます。

もちろん、全てをオープンにしては自社のメリットが無くなってしまうため、一部は特許権をしっかり握っておくなど工夫し、独占禁止法に触れないよう経営する必要があります。

デファクトスタンダードの事例

ここからは、具体的なデファクトスタンダードの事例を紹介していきます。

以下が、デファクトスタンダードの一例です。

  • Windows
  • USB端子
  • DVD・Blu-ray
  • キーボード配列
  • Microsoft Office

それぞれ詳しく紹介していきます。

Windows

Windowsは、デファクトスタンダードとして世界中で使用されているパソコンのOSです。
多くのソフトウェアがWindowsを基準に作られているため、ソフトウェアの利用目的でWindows製品を選ぶ消費者も少なくありません。

昨今ではMacユーザーが増えているものの、国内・国外共に約7割のシェアをWindowsが握っているのが現状です。
一度デファクトスタンダードになると、多少の市場変動では揺るがない利権を得られることがわかる事例といえます。

USB端子

USB端子もデファクトスタンダードの一例です。
一昔前は、USBケーブルといえばUSB-A端子でした。電子機器はUSB-A端子に対応した製品が流通し、USBケーブルの製造業者もUSB-A端子の生産に注力していました。

しかし、昨今ではUSB-C端子が主流になりつつあるのが現状です。以下のニュース記事のように、EUでは電子機器類の充電を、A端子からC端子へ移行する動きがあります。

欧州連合(EU)の執行機関である欧州委員会は9月23日(現地時間)、スマートフォンをはじめとする電子機器類の充電方法をUSB Type-C(以下EUにならって「USB-C」)に義務付ける法案を提出した。対象はスマートフォン、タブレット、カメラ、ヘッドホン、ポータブルスピーカー、モバイルゲーム端末。

引用元:電を「USB-C」に統一する法案 Appleは「イノベーションを抑制する」 – ITmedia NEWS

世界のデファクトスタンダードが変われば、当然日本のデファクトスタンダードも変更を余儀なくされます。
デファクトスタンダードの影響を受けやすい業界は、世界の動向にも目を向ける必要があるといえるでしょう。

DVD・Blu-ray

かつてビデオといえばVHSが主流でしたが、現在ではDVDがデファクトスタンダードとなっています。
また、昨今ではBlu-rayのシェアも伸びており、近いうちにDVDと入れ替わるのではないかと予想されています。

とはいえ、Blu-rayが出始めてから、比較的長い時間、DVDとBlu-rayが共存している状況です。
Blu-ray専用の再生環境を整えなければならないほどDVDが衰退しているわけではないため、しばらくはDVDとBlu-rayが共存する状況が続くでしょう。

キーボードの配列

意外に思われるかもしれませんが、キーボード配列(QWERTY)もデファクトスタンダードです。
QWERTYはキーボード左上の並びを示しており、タイプライターの頃に設定されたQWERTY配列がパソコンにも引き継がれています。

タイプライターには最適な配列だったかもしれないQWERTYですが、パソコンにおいてQWERTYのメリットはほとんどありません。
しかし、すでにデファクトスタンダードとして浸透しているため、タイピングしやすい配列のキーボードを開発しても、一部のコアなユーザーにしか利用されないのが現状です。

合理性を欠いた配列だとしても、デファクトスタンダードとして浸透しているQWERTY配列は、今後も市場シェアの多くを占めるでしょう。

デファクトスタンダードのメリット・デメリットがよくわかるのがQWERTY配列の事例といえます。

Microsoft Office

ビジネスには欠かせないMicrosoftのOfficeも、デファクトスタンダードの一種です。
Officeには大きく分けて、

  • PowerPoint:プレゼンテーションソフト
  • Excel:表計算ソフト
  • Word:文書作成ソフト

の3種類のソフトが存在します。

MicrosoftのOfficeは今や、世界中の企業・教育機関で使用されているため、世界のデファクトスタンダードです。

ただし、Officeの類似ソフトも数多く出回っています。
Googleドキュメントやスプレッドシートなどは、Officeと似た仕組みになっています。Officeとかけ離れたソフトだと、いくら便利でも消費者へ普及することは難しいため、競合他社はOfficeと互換性のあるソフトで市場へ参入しているのが現状です。

まとめ

デファクトスタンダードとは、「事実上の標準」という意味です。
明確に公的機関が基準を設けたわけではありませんが、広く知れ渡っているため、基準となった規格のことを意味します。

市場の動向に左右されにくく、パテント料も取れるため、安定した利益が期待できるのがデファクトスタンダードのメリットです。

ただし、デメリットとして独占禁止法との兼ね合いが挙げられます。あまりにも市場を独占してしまうと、独占禁止法に抵触して処分される可能性があるため、規格や技術をある程度オープンにしておくことが重要です。

デファクトスタンダードの特徴を深く理解したうえで、業界のデファクトスタンダードを目指していきましょう。

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