用語集

ティール組織とは?次世代型の組織としてのメリットやデメリット

次世代型の組織といわれるティール組織は、日本ではまだ浸透しておらず、実例の少ない状態です。
そのため、「ティール組織」という言葉自体は聞いたことのある方も、内容まで詳しく理解している人は少ないのではないでしょうか。

そこで本記事では、ティール組織について、メリット・デメリット、成功事例などを踏まえて解説します。

ティール組織とは

ティール組織とは、従業員が自ら意思決定をとりながら業務に取り組むフラットな組織形態を指します。

これまでの企業の形態は、上司がいて部下に指示を出す、いわゆるピラミッド型の組織が一般的でした。しかしティール組織では、社員それぞれに決定権があり、個人が意思を持って目的の実現を目指します。

そのような組織の構造上、ティール組織においては個人が企業の仕組みやルール、目的を深く理解していることが重要です。

ティール組織のメリット

ティール組織を導入すると、社員の主体性の強化や、生産性の向上が期待できます。
上司からの指示で動くのではなく、自らの判断と責任で業務するため、指示待ちの時間も短縮できるでしょう。

また、社員それぞれが指示や判断、作業といった一連の流れをすべて担当するため、必要な時に柔軟な対応を取りやすい組織づくりが可能です。

ティール組織のデメリット

ティール組織の導入には、社員の意識改革が必要です。
指示系統がないため、社員は自分で判断し、行動しなければなりません。そのような自主性を求められる職場環境は、指示待ち人間には苦痛となるでしょう。意識改革を進めていくなかで、会社を去る人間が出る可能性もゼロではありません。

ほかにも、それぞれの裁量で仕事をすることから進捗管理が困難になる点が、ティール組織のデメリットといえます。

組織進化の5段階とは

ティール組織の広がりは、フレデリック・ラルー氏が著書「Reinventing Organizations」において紹介したことが始まりです。

ティール組織になるためには、組織が段階的に進化していく必要があります。ラルー氏は著書のなかで、組織進化の段階を次の5つの色に分けて説明しています。

  • レッド:衝動型組織
  • アンバー(琥珀色):順応型組織
  • オレンジ:達成型組織
  • グリーン:多元型組織
  • ティール(青緑色):進化型組織

なお、「ティール」とは、英語で青と緑の中間色のような「鴨の羽色」という意味を持つ言葉です。
ここからは、それぞれの組織段階について解説していきます。

衝動型組織(レッド):リーダーが圧倒的権限を持つ組織

レッド組織とは、圧倒的な力を持ったリーダーが組織を支配している形態です。
リーダーに従属し指示を受けることで、組織の構成メンバーは安心感を得られます。ただし、リーダー個人の力に依存した組織運営となるため、短期的で再現性はありません。

レッド組織は、組織モデルのなかで最も未成熟な形態とみなされています。中長期的な目的のために段階を踏んで動くことより、衝動的な行動で目先の成果や利益を求める傾向にあります。

順応型組織(アンバー):ピラミッド型の構造を持つ組織

アンバー組織は、ピラミッド型の構造である点が特徴です。上下関係がはっきりしていることから、指揮命令の系統が明白な組織形態といえるでしょう。

アンバー組織では階層制で役割を分担しているため、レッド組織よりも依存度を下げることに成功しており、一定の環境下では持続的な組織運営が可能な形態です。
自発的な行動やアイデアの生まれにくい組織構造であることから、外部環境の変化や突発的なトラブルへの対応が不得意な傾向にあります。

達成型組織(オレンジ):目的の達成を重視した組織

オレンジ組織は、アンバーのような階層制の存在はあっても、成果を上げた個人が評価を得て出世できる組織形態です。

序列の変化があるため、才能・能力のある社員が力を発揮しやすい組織となっています。また、社員同士の競争が活発であることから、イノベーションが起きやすいのが特長です。
目的達成のために効率化が図られており、数値管理も徹底されています。そのため、社員同士の激しい競争が発生したり、過重労働を引き起こしたりするケースも見受けられます。

多元型組織(グリーン):社員の主体的行動が望まれる組織

グリーン組織は、上下関係はあるものの、主体性を発揮しやすく個人の能力や個性を活かせる組織形態です。

グリーン組織のリーダーには、社員が働きやすい環境を整備する役割があります。具体的には、ボトムアップ式の意思決定が下せる体制づくりや、ダイバーシティ(多様性のある働き方)の推進などです。

メンバー同士が尊重し合い、活発な意見交換を行える点が強みである一方で、合意形成に時間がかかるケースもあります。また、組織内での決定権はあくまでマネジメント側にあることもグリーン組織の特徴といえるでしょう。

進化型組織(ティール):個人の意思決定が可能な組織

ティール組織は、組織に関わるすべての社員が、組織の目的を実現するために行動する組織形態です。

ティール組織には、上司や部下、リーダー、マネージャーのような概念はありません。社員の信頼関係に基づいて、ルールや仕組みを作りながら組織を運営していきます。

達成型組織(オレンジ)と「働き方改革」

現在の日本企業の組織構造は、達成型組織(オレンジ)が一般的です。
階層化された組織内に、権限を持つリーダーを中心としたグループが複数存在しています。

組織では指示に従う行動だけではなく、主体的な行動も求められています。自発的な行動によって得られた成果を高く評価する点が、達成型組織の特徴といえるでしょう。
ただし、常に成果を求められる職場環境であることから、社員は気の休まる暇もなく働き続けなくてはなりません。

その結果、機械的な労働スタイルや過重労働が問題として浮上し、達成型組織からの脱却を図る企業も現れてきました。
成果主義が招く過重労働は、人間らしい余暇の生活時間を奪うものです。プライベートの充実なくしては、アイデアやモチベーションも枯渇してしまうでしょう。

そこで、達成型組織での労働環境を是正するために、日本社会は「働き方改革」へ向けて官民が連携して動き始めたのです。
ティール組織は、こうした背景で注目されるようになったと考えられています。

ティール組織実現のための3つの必須要素

従来型の組織からティール組織になるためには、ラルー氏が提唱する以下の3つの要素が必要とされています。

  • 進化する目的
  • セルフマネジメント(自主経営)
  • ホールネス

それぞれ詳しくみていきましょう。

必須要素1:進化する目的

組織には、経営ビジョンやミッションに定めているように、到達したい目標や事業目的が存在します。従来の企業形態では、こうしたビジョンやミッションは経営層が設定し、固定化されているものでした。

一方、ティール組織では、企業の目標や目的を固定化せず、時代やビジネス環境の変化に応じて柔軟に変更していきます。また、変更の際にはトップダウン式の決定ではなく、組織全体の総意に基づいて判断しようと考えるのがティール組織の特徴です。

必須要素2:セルフマネジメント(自主経営)

ティール組織でのセルフマネジメントは、社員が意思決定できるように権限と責任を与えることです。

セルフマネジメントが実現すれば、社員はリーダーの指示を受けることなく、目的達成のために個人で判断し意思決定を下せるようになります。
最終的な意思決定は個人に委ねられるものの、適切な意思決定がとれるように相談やアドバイスのしやすい環境を整えることが、企業の役割といえるでしょう。

また、セルフマネジメントの推進には、企業側が会社の情報を社員に開示する必要があります。具体的には、経営戦略や方針、経理といった意思決定に必要な情報を社員へ共有していきます。

情報開示は、マネジメント側が社員へ信頼を示す手段としても有効です。「自分に期待してくれている」と感じた社員は会社の期待に応えようと意欲的になり、指示を出さなくても成果を生み出せる人材へと成長していけることでしょう。

必須要素3:ホールネス

ホールネスとは、「心理的安全性の確保」のことを指します。

心理的安全性とは、組織内で安心して自分の考えや意見を発言できる状態のことです。社員それぞれがフラットな関係性で、周囲の批判や評判を気にすることなく働ける職場が、心理的安全性の高い職場といえます。

心理的安全性が確保された環境であれば、社員が生き生きと能動的に働けるようになるため、生産性の向上やイノベーションの発生が期待できるでしょう。

ティール組織の事例

ここからは、実際にティール組織を導入した企業事例を2つ紹介します。

株式会社ネットプロテクションズ

株式会社ネットプロテクションズでは、ティール組織への進化を促進する人事評価制度「Natura」を導入しました。「Natura」は、上下関係の距離を縮め、協調を促進することを目指して導入された制度です。

また、ネットプロテクションズではマネージャー職を撤廃し、「カタリスト」という新しい役割を作りました。
カタリストは、社内の知識や情報を共有する役目を担っています。情報共有によって社員の自立を促進するカタリストは、フラットな組織づくりの鍵を握る存在です。

ほかにも、ネットプロテクションズではフェアな報酬ポリシーの設置や、全社員の評価グレードの開示を実施することでティール組織化を進めています。

ビュートゾルフ

オランダで在宅介護支援をしている非営利団体のビュートゾルフも、ティール組織の成功事例として有名です。
ビュートゾルフでは、数百もの専門チームが独立して機能しており、マネージャー職はありません。それぞれが目標に向かい、チームで意思決定をとりながら行動しています。

ビュートゾルフでは、「Buurtzorg Web」というITツールを活用しているところがユニークな点です。
「Buurtzorg Web」には複数の機能があり、そのなかのコミュニティ機能を用いて組織間・個人間の情報交換や情報共有の活性化を図っています。

ITツールの活用により、ティール組織の抱える進捗管理の課題をうまく解決した例がビュートゾルフの事例といえるでしょう。

まとめ

ティール組織とは、上下関係が存在せず、社員それぞれが主体となって意思決定をする組織形態です。

ティール組織を提唱したフレデリック・ラルー氏によると、組織には5つの形態があります。ティール組織はそのなかで最も成熟した組織とみなされており、導入により社員の主体性の強化や、会社全体の生産性アップが期待できるでしょう。

次世代型といわれているティール組織への理解を深め、自社に合った組織づくりを目指していきましょう。

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