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源泉徴収とは?計算方法や、納付方法を解説

給与や報酬などの所得の支払者は、支払いの際に給与などの所得税を差し引いて国に納める「源泉徴収」が必須です。源泉徴収の義務があるにもかかわらず期日までに納付しなかった場合は、ペナルティとして不納付加算税が課せられます。

本記事では、源泉徴収の意味や計算方法、納付方法について解説します。

源泉徴収とは

源泉徴収とは、給与や報酬などの所得の支払者が、所得税をあらかじめ差し引いて国に納めることです。差し引いた所得税は、原則として支払い月の翌月10日までに国に納める必要があります。

そもそも所得税とは

所得税とは、その名の通り個人の所得に対して課せられる税金のことです。1年間の所得金額から、所得控除を差し引いた課税所得金額に規定の税率を適用し、所得税額を計算します。

所得控除には、災害等にあった場合に受けられる雑損控除や、医療費を支払った場合に受けられる医療費控除、所得税法上の控除対象扶養親族がいる場合に受けられる扶養控除などがあります。

なお、所得税には超累進課税が採用されており、所得が多ければ多いほど税率が高くなる仕組みです。

参考:所得税のしくみ|国税庁

所得税の源泉徴収が必要な理由

本来であれば、納税者本人が所得税額を計算し、確定申告を行う必要があります。

しかし、納税者全員が確定申告を行うとなると、計算ミスや申告漏れなどのトラブルが起こりかねません。給与所得者に関しては、給与の支払者が従業員全員の所得税をまとめて計算・申告する方が効率的です。

このような理由から、所得の支払者が所得税をあらかじめ差し引く源泉徴収が行われています。

給与所得者は年末調整で所得税を精算

前述の通り、所得税は1年間の課税所得金額に規定の税率を適用し計算するものです。しかし、給与所得者の場合、毎月の給与から所得税の概算金額が天引きされているため、本来支払うべき所得税額と既に支払った所得税額に差額が生じる可能性があります。この差額を精算するため、年末調整手続きが必要です。

年末調整では、従業員に以下の書類を提出してもらいます。

  • 扶養控除等(異動) 申告書
  • 基礎控除申告書 兼 配偶者控除等申告書 兼 所得金額調整控除申告書
  • 保険料控除申告書

ほかにも、住宅ローン控除を適用する場合は住宅借⼊⾦等特別控除申告書、年度の途中で転職した場合は以前の勤務先の源泉徴収票などを提出してもらう必要があります。

源泉徴収税額を計算する際は、これらの書類をもとに、従業員にどのような控除が適用されるのかを確認します。

源泉徴収の計算方法

給与所得に関しては、おもに給与・賞与・退職金が源泉徴収の対象となります。外部に業務委託する場合は、報酬・料金も源泉徴収の対象となることがあります。

ここでは、それぞれの源泉徴収税額の計算方法について解説します。給与計算ソフトを利用すれば税額を自動で計算できますが、業務理解を深めるためにも仕組みを理解しておきましょう。

給与の源泉徴収

まず、給与の源泉徴収税額の計算方法は以下の通りです。

従業員の甲乙区分を確認する
1ヶ所のみから給与を受け取っている場合は「甲欄」、2ヶ所以上から給与の受け取っている場合や「扶養控除等(異動)申告書」を提出していない場合は「乙欄」となります。甲乙区分によって源泉徴収額が異なるため、注意が必要です。

給与から社会保険料を差し引く
源泉徴収税額は、給与から厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などの社会保険料を控除した金額を用いて計算します。額面を用いて計算しないよう注意しましょう。

源泉徴収税額を算出する
上記2. から算出した金額を、国税庁の定める「給与所得の源泉徴収税額表(月額表および日額表)」に当てはめ、源泉徴収税額を算出します。

なお、給与として支払われる通勤手当や特殊な給与は、非課税のため源泉徴収の対象となりません。税額計算に含めないよう注意しましょう。

参考:令和3年分 源泉徴収税額表|国税庁

賞与の源泉徴収

次に、賞与の源泉徴収税額の計算方法は以下の通りです。

従業員の甲乙区分を確認する
「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」の「給与所得者の扶養控除等申告書」を提出している場合は「甲欄」、提出していない場合は「乙欄」となります。給与と同様、甲乙区分によって源泉徴収額が変わるので注意が必要です。

前月の給与から社会保険料を差し引く
前月の給与から厚生年金保険料、健康保険料、雇用保険料などの社会保険料を控除した金額を算出します。

源泉徴収税額を算出する
まず、上記2. から算出した金額を、国税庁の定める「賞与に対する源泉徴収税額の算出率の表」に当てはめ、賞与の金額に乗ずべき率を求めます。
この税率を、賞与から社会保険料を差し引いた金額に乗じて、源泉徴収税額を算出します。

なお、賞与から社会保険料を差し引いた金額が、前月の給与から社会保険料を差し引いた金額の10倍を超える場合や、前月の給与を支払っていない場合は、計算方法が異なるため注意しましょう。

参考:No.2523 賞与に対する源泉徴収|国税庁

退職金の源泉徴収

退職金の源泉徴収税額の計算方法は、「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合と、提出を受けていない場合で異なります。

「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けている場合の計算方法は、以下の通りです。

退職所得控除額を算出する
以下の表を用いて、退職者の勤続年数をもとに退職所得控除額を算出します。
ただし、特定役員退職手当等や短期退職手当等に該当する場合は、計算式が異なりますので注意が必要です。

勤続年数退職所得控除額
20年以下40万円 × 勤続年数
20年超800万円 × 70万円 ×(勤続年数 – 20年)

課税退職所得金額を算出する
以下の計算式を用いて、課税退職所得金額を算出します。

(退職金 – 退職所得控除額)×1/2

源泉徴収税額を算出する
上記2. から算出した課税退職所得金額を、国税庁の定める「退職所得の源泉徴収税額の速算表」に当てはめ、源泉徴収税額を算出します。

「退職所得の受給に関する申告書」の提出を受けていない場合は、一律20.43%の税率で源泉徴収が行われます。この場合、退職者本人が確定申告を行い、払い過ぎた所得税を精算します。

参考:No.2732 退職手当等に対する源泉徴収|国税庁

報酬・料金などの源泉徴収

源泉徴収の対象となる報酬・料金などは、以下の通りです。

  • 原稿料・講演料など
  • 弁護士や公認会計士など、特定の資格保有者に支払う報酬
  • 芸能関係の出演者に支払う報酬
  • プロ野球選手、プロサッカー選手などに支払う報酬
  • 広告宣伝のための賞金や、競馬の賞金

など

参考:No.2792 源泉徴収が必要な報酬・料金等とは|国税庁

報酬・料金などの源泉徴収税額は、業種によって計算方法が異なります。源泉徴収税額が記載された請求書を受け取った際は、計算に誤りがないか確認した上で報酬・料金を支払いましょう。

源泉徴収した所得税の納付方法

源泉徴収した所得税の納付方法には、e-Taxを用いたダイレクト納付、クレジットカード納付、金融機関や税務署の窓口納付などがあります。

源泉所得税の納付期限

源泉徴収した所得税は、原則として支払い月の翌月10日までに納付する必要があります。例えば、4月25日に給与を支払った場合、納付期日は5月10日となります。

源泉徴収の義務があるにもかかわらず期日までに納付しなかった場合は、ペナルティとして不納付加算税が課せられます。不納付加算税の金額は、源泉所得税の10%相当額です。ただし、納付漏れに気づいて自主的に納付した場合は、源泉所得税の5%相当額に軽減されます。

また、利息に相当する延滞税が課せられる場合もあります。延滞税の割合は、期限の翌日から2ヶ月を経過する日までは年7.3%、2ヶ月を経過した日以後は年14.6%です。

源泉所得税の納期の特例

給与を支給する従業員が10人未満の場合は、源泉所得税の納期の特例が適用され、源泉徴収税額を半年分まとめて納付することも可能です。1月〜6月までの源泉徴収税額を7月10日に、7月〜12月までの源泉徴収税額は翌年1月10日に納付することとなります。

この特例の適用を受けるには、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」の提出が必要です。

参考:No.2505 源泉所得税及び復興特別所得税の納付期限と納期の特例|国税庁

まとめ

源泉徴収とは、給与や報酬などの所得の支払者が、所得税を差し引いて国に納めることです。本来であれば、納税者本人が所得税額を計算し確定申告する必要がありますが、計算ミスや申告漏れなどのトラブルを防止するため、源泉徴収が行われています。

給与所得に関しては、おもに給与・賞与・退職金が源泉徴収の対象となります。また、外部に業務委託する際の報酬・料金も源泉徴収の対象となる場合があります。それぞれ計算方法が異なりますので、事前に確認しておきましょう。

源泉徴収した所得税は、原則として支払い月の翌月10日までに納付が必要です。源泉徴収の義務があるにもかかわらず期日までに納付しなかった場合は、ペナルティとして不納付加算税が課せられるため注意しましょう。

参考:
源泉徴収とは?種類としくみについて | ビジドラ~起業家の経営をサポート~
源泉徴収の基礎知識 | 起業マニュアル | J-Net21[中小企業ビジネス支援サイト]
源泉徴収の仕組みをわかりやすく解説!課税対象となる支払いや事務処理の流れをご紹介【クレジットカードのことならCredictionary】
源泉徴収の種類や注意点、フリーランスの場合も解説! | マネーフォワード クラウド
源泉徴収制度とは|知るぽると

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