用語集

プレイングマネージャーとは?意味やきついと言われる理由を解説!必読の本3冊も紹介

最近、現場と管理側の仕事を兼務する「プレイングマネージャー」という役職を耳にする機会が増えた方も多いのではないでしょうか。

プレイングマネージャーは、個人としての成果だけでなく、マネージャーとして部下やプロジェクトを管理するポジションです。そのため、今までとは異なる立場での働き方にとまどい、つらさを感じる人も少なくありません。

本記事では、プレイングマネージャーの意味や役割に加え、「きつい」と言われる理由や、自社に配置することのメリット・デメリットを解説していきます。
プレイングマネージャーの勉強にぴったりの本も複数紹介しているので、ぜひともご参考ください。

プレイングマネージャーの意味

プレイングマネージャーとは、「プレイヤーとマネジメント業務を両立するポジション」を意味します。

スポーツの世界でいうところの選手兼監督にあたるポジションといえばわかりやすいでしょう。選手(プレイヤー)として試合に出場しつつ、監督(マネージャー)としてチームを管理・牽引(マネジメント)する立場をプレイングマネージャーと呼びます。

ビジネスの世界において、プレイヤーとマネージャーは以下の意味を持ちます。
プレイヤー:会社へ利益をもたらすために、単独または上司の下について働く現場スタッフ
マネージャー:組織・チームの目標を達成するために、部下を育成・指導する管理スタッフ

上記の役割を兼任する立場が、プレイングマネージャーです。

プレイングマネージャーの仕事内容と役割

プレイングマネージャーの具体的な仕事内容は以下のとおりです。

【プレイヤーの側面】

  • 組織やチームの一員として、個人で掲げた目標を達成する
  • 自己啓発やスキルアップに取り組みながら、個人としての人材価値を高める

【マネージャーの側面】

  • 組織やチームのメンバーの意欲をかき立て、能力を発揮できる環境を整える
  • 組織やチームの目標を達成できるように、メンバーの管理や育成をする
  • プロジェクト遂行のために、業務計画の策定や問題解決に取り組む

プレイングマネージャーの場合、個人として成績を上げていくだけでなく、管理者として他のスタッフの業務やプロジェクトをマネジメントする必要があります。そのため、業務内容は多岐にわたり、現場と経営の2つの視点を持ちながらバランス良く働くことが求められます。

プレイングマネージャーはきつい?

産業能率大学が2018年に実施した調査では、以下のことが明らかになりました。

①課長職の99.2%がプレイングマネージャーである
②プレイヤーの業務活動が、マネジメント業務に支障をきたしている(①の60%が回答)
③「部下の人事評価が難しい」「部下が指示通りに動かない」など部下に関する悩みが多い

引用元:第4回上場企業の課長に関する実態調査 | 調査報告書 | 産業能率大学

こうした実態から、プレイングマネージャーの多くが、プレイヤー業務とマネジメント業務の両立を困難に感じていることがわかります。

プレイングマネージャーが必要とされる背景とは?

プレイングマネージャーが必要とされるようになった背景には、大きく2つの要因があります。

  1. 事業環境の変化
  2. 労働市場の変化
  3. 働き方の多様化

一つずつ見ていきましょう。

1.事業環境の変化

日本のビジネス界でプレイングマネージャーが登場したのは、1990年代のバブル崩壊後といわれています。

厚生労働省『平成25年版労働経済の分析』からわかるように、農林漁業中心の1950年代に比べて、2000年代以降はサービス業や小売業中心の産業構造となるなど、事業環境が大きく変化しました。

結果として、企業が生き残るためには「より顧客や消費者に近い存在となり、ニーズに短期間で対応すること」が重要になっていきました。そこで活躍し始めたのが、現場で働きつつも意思決定できる立場にあるプレイングマネージャーというポジションです。

2.労働市場の変化

バブル崩壊後、多くの企業が注力したのが、人件費の削減や経営の効率化です。リストラや非正規社員の登用などが積極的に展開されるようになり、プレーヤーとマネージャーの数が大幅に減少しました。

その結果、少ない人員で組織やチームを維持・管理する必要が生じ、プレイヤーとマネージャーを兼ねるプレイングマネージャーを配置する企業が増えていきました。

このように、労働市場の変化もプレイングマネージャーの需要を高めた一因といわれています。

3.働き方の多様化

働き方の多様化も要因の一つです。これまでの年功序列から、「自分の好きな働き方」を重視する時代になりました。年齢・性別に関係なく、本人が最大限能力を出せる働き方の実現が活発になっています。
その選択肢の一つとして、プレイングマネージャーがあります。

プレイングマネージャーに求められる能力とは?

プレイングマネージャーには、次の3つの能力が求められます。

  1. コミュニケーション能力
  2. 成長意欲
  3. バランス感覚

一つずつ見ていきましょう。

1.コミュニケーション能力

プレイングマネージャーは、組織やチームの目標を達成するため、メンバーに働きかけ、時に協力を仰ぐ立場にあります。メンバーのサポートを得たり、行動を促したりするためには、コミュニケーション能力が欠かせません。

コミュニケーション能力に秀でているプレイングマネージャーは、メンバーに対して組織の方向性や委任する仕事内容を明確に伝達できます。結果として、メンバーが自立的に業務に取り組むようになり、プレイングマネージャーは自身の業務に集中できます。

2.成長意欲

個人の目標を達成するだけではなく、組織やチーム全体が成果を出せるよう働きかけるのがプレイングマネージャーです。

周囲から1人のマネージャーとして認められ、信頼を得られなければ、チームのメンバーを巻き込むことはできません。

したがって、常に自分自身のスキルアップや自己研鑽に励むなど、成長し続ける努力がプレイングマネージャーには求められます。

3.バランス感覚

プレイングマネージャーは、業務の進捗、組織の方針やメンバーの負荷など、さまざまな要因を俯瞰で見て、必要に応じて自らの手を動かす場面も出てきます。そのため、働く際にはプレイヤーとマネージャーの業務に偏りなく取り組めるバランス感覚が求められます。

リクルートワークス研究所の調査によると、プレイヤーとしての業務割合を20%以上30%未満とした時に、チームの成果が最も高まるそうです。

業務の両立に苦慮するプレイングマネージャーは、業務バランスを見直す指標として参考にしてみてください。

プレイングマネージャーとマネージャーの違いとは?

プレイングマネージャーと通常のマネージャーでは、どのような違いがあるのか見ていきましょう。

端的に言えば、通常のマネージャーは「プレイヤーとしての業務」がないため、以下のマネジメント業務に専念できます。

  • 部下やメンバーの育成
  • 業務進捗の管理
  • 組織やチームの目標達成
  • 仕組み化やナレッジ化(スキルの体系化)

ただし、通常のマネージャーはプレイングマネージャーに比べてメンバーと接する時間が短いため、「情報共有の不足」や「現場のリアルな声が聞けない」という弱みを持っています。

プレイングマネージャーのメリット

プレイングマネージャーを組織に配置するメリットとして、生産性の高い組織となる点が挙げられます。

プレイングマネージャーがコミュニケーションを密に取り、メンバーのモチベーションや成長意欲を刺激できれば、チーム全体を底上げできます。

また、現場経験に基づいた知識をメンバーに共有したり、自ら対処する姿を見せたりできれば、「この人に付いていけば大丈夫だ」とチームの団結感が増していきます。

優秀なプレイングマネージャーが機能すれば、チームの組織力が向上し、生産性を高めていくことが可能です。

プレイングマネージャーのデメリット

メリットがある一方で、プレイングマネージャーには、以下の2つのデメリットが存在します。

  1. プレイヤーとして業務過多になる
  2. 評価やフィードバックが疎かになる

一つずつ見ていきましょう。

デメリット1.プレイヤーとして業務過多になる

産業能率大学が実施した調査では、「業務量が増加している」と答えた課長職が58.9%でした。さらに、別の調査では、プレイングマネージャーの役割を担う人は「月200時間以上の長時間労働者の割合が最も高い傾向にある」ことも明らかになりました。

現在は働き方が多様化し、フルタイムだけではなく時短勤務やパート勤務などで働く人も少なくありません。一方で、企業間の競争やビジネスのスピードは日に日に激化しているため、労働力不足に陥る企業も多く見られます。

こうした状況下であっても組織の成果を上げる必要があるため、部下に仕事を任せられず業務過多となるプレイングマネージャーも存在します。

デメリット2.評価やフィードバックが疎かになる

産業能率大学の調査によると、プレイングマネージャーは部下に関する悩みを多く抱えている傾向にあります。

・部下の人事評価が難しい(31.9%)
・部下にフィードバックがうまくできない(11.7%)

引用元:産業能率大学|第4回上場企業の課長に関する実態調査

プレイングマネージャーは個人の業務をこなしつつマネジメントの時間を確保しなければならないため、部下の評価やフィードバックが疎かになりがちです。

プレイングマネージャーを配置する際の注意点とは?

組織やチームにおいてプレイングマネージャーは重要な役割を担っていますが、一方で、業務過多や評価が疎かになるなど、デメリットも存在しました。

それでは、どのような点に注意して、プレイングマネージャーを組織に配置すればよいのでしょうか。注意すべきは以下の2点です。

  1. メンバーの自立と協力を目指した環境作り
  2. OJTやOFF-JTで支援する

一つずつ見ていきましょう。

1.メンバーの自立と協力を目指した環境作り

プレイングマネージャーが負担なく業務を遂行するためには、メンバーの自立と協力が重要です。

具体的には以下のような取り組みで、自立心や協調性を促していきます。

  • 仕事のルールや進め方をマニュアル化する
  • 情報共有しやすい仕組みを作る
  • メンバーに権限を与える(業務範囲を広げる)

プレイングマネージャーが不在であっても、メンバーが自立的かつ協力して課題を解決できれば、パフォーマンスを低下させることなく業務を遂行できるでしょう。

2.OJTやOFF-JTで支援する

OJTやOFF-JTを通じたプレイングマネージャー自身の育成や、メンバー・部下の教育支援も重要な取り組みの一つです。

プレイングマネージャーの多くが、管理業務に関する知識や経験を持たずにマネジメントを任されるため、企業側は意識して彼らに学びの機会を与えるよう心がける必要があります。

また、メンバーの教育や指導をプレイングマネージャー1人に任せると、教育・指導以外の業務が疎かになります。プレイングマネージャーが本来の業務に集中するためには、組織全体でメンバーを育成する体制づくりが大切です。

実務を通じて行うOJTは、プレイングマネージャーやメンバーに具体的な業務イメージをわかせるのに効果を発揮します。
社内研修だけで不十分な部分は、外部講習やセミナーなどのOFF-JTで補完していきましょう。

プレイングマネージャーとしてスキルアップする方法

他の人よりも一歩先を進むプレイングマネージャーになるために、スキルアップする方法を3つご紹介します。

方法1.成果に対するフィードバックを行う

ドイツの情報通信会社の社員を対象に実施された「業績と従業員の満足度」に関する調査によると、業績や成果に対してフィードバックを行うリーダーが率いるチームは業績が良く、メンバーの満足度が高い傾向にあります。

適切なフィードバックは業務改善やメンバーのモチベーションアップに繋がるため、意識的に時間を設け、成果に対して十分なフィードバックをするよう心がけましょう。
フィードバック時間の確保が難しい場合は、「毎週金曜の午前中はフィードバック時間」などと、予定を固定化させておくのも一案です。

方法2.メンバーに任せる

リクルートワークス研究所の調査結果によると、プレイングマネージャーのプレイヤー業務が20%〜30%の時、チームの成果は最も高くなります。

個人としての能力も高いプレイングマネージャーではありますが、業務を必要以上に背負い込もうとせず、時にはメンバーに任せる意識が大切です。

方法3.チームが抱える業務量を3割減らす

プレイングマネージャー自身が抱えている業務をメンバーに引き継ぐだけでは、チーム全体の業務量は変わりません。
むしろ、能力の劣るメンバーへ依頼することで、チーム全体の残業時間が増える可能性があります。

実は仕事の中には本来必要のない業務も多いため、不要と感じた業務は思い切ってカットするのも効果的です。
削ってみて成果や業績に影響が出ないのであれば、全体で必要な業務量を減らせます。3割程度減らすことでチーム全体の能率が大きく変わっていくので、3割減を目標にチーム全体の業務を見直してみましょう。

プレイングマネージャー必読の本【3選】

最後に、プレイングマネージャーとしての働き方を学ぶために最適な本を3冊ご紹介します。

1.スタンフォード式 最高のリーダーシップ

スタンフォード大学医学部で教鞭を執る著者によるリーダーシップ論が学べる本です。

「チームに変革をもたらす強いリーダーにはどうなったらなれるか?」「プレイングマネージャーに求められるリーダーマインドを学びたい」と思っている方は、ぜひ本書を手にとってみてください。

スタンフォード式 最高のリーダーシップ

2.新 コーチングが人を活かす

日本のコーチング第一人者である著書が、初めて学ぶ方にもわかりやすくコーチング手法を解説したものが本書です。

プレイングマネージャーがマネジメント業務に集中するためには、メンバーの自立が欠かせません。本書には、メンバーの自主性を引き出すコミュニケーション技術がイラストを交えて解説されています。

コミュニケーションの質を高めたい方にイチオシの一冊です。

新 コーチングが人を活かす

3.心理的安全性のつくりかた

米グーグルが明らかにした「心理的安全性」の重要性とその環境づくりの方法が書かれた本です。

心理的安全性が高い職場とは、気軽に意見を言える環境であったり、失敗を恐れず次々と挑戦できたりする環境を指します。こうした職場は離職率が低く生産性が高いということで、心理的安全性を意識した社内改革を試みる企業も増えてきました。

創造的なチームづくりを目指すプレイングマネージャーに一読してほしい一冊です。


心理的安全性のつくりかた

まとめ

本記事では、プレイングマネージャーの意味や役割、会社に配置するメリット・デメリットについて解説してきました。

個人として現場で働きつつも管理職としてチームをマネジメントするプレイングマネージャーは、現場の意見を反映しながら迅速な意思決定を行う重要なポジションです。
しかし一方で、個人業務とマネジメント業務の両立に苦戦し、思うような成果を上げられず途方に暮れてしまう方も少なくありません。

「プレイングマネージャーとして自信を持って働きたい」と思っている方は、本記事で紹介したスキルアップ方法やおすすめ本を参考に、ワンランク上のプレイングマネージャーを目指してみましょう。

本記事が皆さんのお役に立てば幸いです。

参考:平成25年版 労働経済の分析 -構造変化の中での雇用・人材と働き方-|厚生労働省
参考:プレイングマネジャーとは|増えている背景から抱えている課題まで解説 | JMAM 日本能率協会マネジメントセンター
参考:プレイングマネージャーとは?必要なスキルやマネージャー(管理職)との違いを解説! – エンゲージ採用ガイド
参考:東洋経済ONLINE|「管理職とプレイヤー」を両立する人が陥るワナ
参考:東洋経済|「自分でやりたい中毒」から今度こそ抜ける方法
参考:レイングマネジャーの時代|Works Report|リクルートワークス研究所) 
参考:プレイングマネージャーとは?増えた背景や仕事内容を解説 | ソリューションサイト

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