用語集

ピボットとは?ビジネスシーンでの意味や成功事例について解説

ピボットとは、事業を方向転換・路線変更させることです。
これまでに多くの会社がピボットを行い、その中には大成功を収めた企業もあります。

しかし、タイミングやアプローチ方法を誤ると、逆に事業が悪化する可能性もあります。
本記事では、ピボットについて、成功事例や考え方、注意点について解説します。
メリット・デメリットも紹介するので、是非判断材料にしてください。

ピボットとは?ビジネスシーンでの意味

ピボットとは、本来「回転軸」という意味ですが、近年のビジネスシーンにおいては「方向転換」や「路線変更」を表す用語として使われています。事業の方向転換や路線変更の経営判断そのものを「ピボット」と呼びます。

特にスタートアップ企業の場合、新たなビジネスモデルの開拓に挑戦することが多々あります。
事業の好調を維持するのは難しく、軌道修正を余儀なくされるケースも少なくありません。
資金力のないスタートアップ企業ほど、早い段階で路線変更を検討する必要があるのです。

参考:
ピボットとは – コトバンク
ピボットとは | 人事用語集・辞典 | 人事のプロを支援するHRプロ

ピボットの成功事例

ピボットは必ずしも悪いことではありません。ピボットによって成功した事例は沢山あります。
具体例を解説します。

Instagram

「Instagram」は、写真や動画を共有できるSNSです。
若者を中心に、トレンドの発信地としても活用されています。 元々は「Burn」という名前でした。Burnは現在地や写真を共有できる位置情報アプリとして開発されましたが、あまりヒットしませんでした。
しかしその後、「写真の共有に特化する」というピボットによって大成功を収めました。

ミクシィ

「ミクシィ」は、かつての大人気SNS「mixi」を運営していた企業です。
他のSNSサービスの台頭によって衰退したため、「主力事業をスマホゲームにする」というピボットを行ないました。 その結果、大ヒットゲーム「モンスターストライク」を生み出し、ゲーム会社として大きく成長しました。

TSUTAYA

「TSUTAYA」は、カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社が手掛けるレンタルビデオ店です。
当初はレンタルビデオ事業のみを展開していましたが、Tポイントカードを使ったマーケティング事業も行なうようになりました。 様々な店舗でTポイントを使えるようにすることで、顧客データを企業に提供しました。
「BtoCからBtoBへの転換」というピボットによって、さらに大きく成長したのです。

参考:CCC カルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社

プレイステーション

「プレイステーション」は、株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメントによって開発されたゲーム機です。
当初はCD-ROMを読み込むゲーム機でしたが、「ネットワークと接続する機能を搭載する」というピボットによって、家庭用エンターテインメントプラットフォームへと進化を遂げたのです。 ゲームをするだけでなく、音楽や映像も楽しめるようになり、ターゲットの拡大に成功しました。

富士フイルム

「富士フイルム」は、写真フイルムの大手メーカーです。
元々は写真フイルム事業だけでうまくいっていましたが、2000年代にデジタルカメラが普及したことによって、需要が激減しました。 市場の縮小によって売上が伸び悩んでいましたが、「写真フイルムの技術を応用し、医薬品及び化粧品メーカーに転換する」というピボットによって、再び業績を好調に戻しました。

参考:
ピボットで事業を転換させるには?言葉の意味や成功事例、成功させるポイントを解説 | HR大学

ピボットの10個の型

ピボットの考え方として、10個の型が用意されており、それぞれに特徴があります。

Zoom-in pivot(ズームイン・ピボット)

製品の機能の一部を主要プロダクトに変える手法のことです。
ライバルが多い市場において、一つの機能に特化することで、他社との差別化を測ることが可能です。

Zoom-out pivot(ズームアウト・ピボット)

顧客ニーズに応じて機能を強化・拡大し、製品全体の主要機能に変える手法のことです。

Customer segment pivot(顧客セグメント・ピボット)

ターゲットとするユーザーが定まった時に、顧客層を変える手法のことです。

Customer need pivot(顧客ニーズ・ピボット)

顧客自体を見直すことによって、自社製品やサービスの課題を再検証する手法のことです。

Platform pivot(プラットフォーム・ピボット)

アプリケーションをプラットフォーム化したり、プラットフォームを放棄する手法のことです。

Business architecture pivot(ビジネスモデル・ピボット)

収益の構造を「高い利益率で少量売る」という戦略から、「低い利益率で大量に売る」に変える手法のことです。もしくはその反対を指します。

Value capture pivot(収益モデル・ピボット)

広告による収益やサブスクリプションなどといったように、定期収入の発生源を変える手法のことです。

Engine of growth pivot(成長エンジン・ピボット)

成長エンジンの考え方を変える手法のことです。 成長エンジンとは、企業が持続的に成長し続けるための原動力です。
企業の成長率を測る尺度として用いられます。 エリック・リースは、自著「リーン・スタートアップ」において、成長エンジンのタイプとして、粘着型・ウイルス型・支出型の3つを掲げています。

参考:リーン・スタートアップ

Channel pivot(チャネル・ピボット)

販売経路や流通経路を変える手法のことです。先述のTSUTAYAの事例がこれに当たります。

Technology pivot(テクノロジー・ピボット)

新たなテクノロジーを駆使して、従来の課題解決にアプローチする手法のことです。

参考:ピボットで事業を転換させるには?言葉の意味や成功事例、成功させるポイントを解説 | HR大学

ピボットピラミッドでアプローチ部分を明確にしよう

事業においてどこをピボットするか、視覚的にガイドするのが「ピボットピラミッド」です。
ピボットピラミッドは下記5項目が階層関係にあるとし、ステージごとにアプローチ方法が異なるとしています。

(https://coralcap.co/2020/11/pivot-pyramid/より引用)

顧客(Customers)のピボット

ピボットピラミッドの最下層に位置します。「誰の課題を解決するのか」ということです。
タイミング次第では、ピボットピラミッド全体を見直し、大きく事業転換をする必要があります。

課題(Problem)のピボット

ユーザーヒアリングや顧客マーケティングを重ねていくと、「当初課題だと思っていたことが実は違った」「さらに大きな課題が別にあった」という結論が出ることは少なくありません。この場合、ターゲットは変わらずにアプローチする課題を変える必要があります。

ソリューション(Solution)のピボット

ピボットピラミッドの中間層に位置します。サービスに対する市場の反応がいまいちだったり、プロダクトが思ったほど導入されないときは、ソリューションの適切さを疑いましょう。
解決すべき課題を正しく把握し、ユーザーのニーズに正しく応えるプロダクトへ変更する必要があります。

テクノロジー(Tech)のピボット

テクノロジーの選択を誤ると、グロースが遅れる恐れがあります。例えば
「ニーズに合ったサーバーを準備できない」などです。ユーザーの爆発的な増加によるプログラミング言語を切り替えるケースもこれに当てはまります。

グロース(Growth)のピボット

ピボットピラミッドの頂点に位置します。有名な事例は初期のDropBoxです。プロモーション手法をオンライン広告から紹介キャンペーンに変更したことで、爆発的に成長をはじめました。チャネルの飽和やコストがかかりすぎることを避けるために、経営者はフレッシュな戦略を考えなければなりません。

参考:「ピボット・ピラミッド」という考え方―、何を変えて、何を変えないのか | Coral Capital

ピボットを行なうメリット

ピボットはけして悪いことではありません。いわば「市場とのすり合わせ」です。
たとえやりたい事業でも、赤字が増え続ける一方であれば、できるだけ早めに撤退する必要があります。そのため、適切な方向転換の判断ができる点は大きなメリットと言えます。
また、新規の顧客やユーザーを獲得できる可能性などもあります。

ピボットを行なうデメリット

ピボットにはデメリットもあります。
まず、今までの顧客やユーザーが離れてしまう懸念です。


ユーザー数を増やし、売上拡大を図ることを目的としてピボットを行なったにもかかわらず、結果的にピボット前よりも利用者が減少する可能性も0ではありません。

また、頻繁にピボットを行なっていると、投資家からは粘り強さや信念のない企業だと判断されるケースもあります。 そのため、慎重にメリット・デメリットを考えてから判断しましょう。

参考:ビジネスにおけるピボットとは何か?意味や事例、メリット·デメリットについて解説 – ITツール・Webサービス比較サイト| STRATE[ストラテ]

ピボットを行なう際の注意点

ピボットの注意点を紹介します。

ピボットをするタイミング

タイミングは非常に重要です。一般的には市場が成長してきた丁度良いタイミングが良いとされています。

自社製品やサービスのペルソナを変更する際、市場の成長が不十分であれば顧客の数は少なく、良いものを生み出しても利益を多く出すことは難しいです。
一方、市場が成長しきっていると、競合他社に勝てません。
タイミングをきちんと見極めましょう。

ユーザー視点で行なう

自社がやりたいことだけでなく、ユーザーの視点を考えることが重要です。
ユーザーが期待していない事業を開始したり、勝手に製品やサービスの仕様を変更したりしてしまうと、利用者が減少します。
定期的に意見を直接聞く機会を設けるなど、顧客がどういったものを求めているのかを明確にした上で実行しましょう。

参考:ピボットで事業を転換させるには?言葉の意味や成功事例、成功させるポイントを解説 | HR大学

経営理念や軸まで変える場合もある

一般的にピボットは事業方針の転換を指します。しかし、同タイミングで経営理念も変え、会社の軸自体を方向転換させる場合もあります。

例えばリクルートです。
同社は、新しい市場やニーズに答えるために、企業の存在意義から見直しを実行しました。そして新しい経営理念を「私たちは新しい価値の創造を通じ、社会からの期待に応え、一人ひとりが輝く豊かな世界の実現を目指す」にし、
「2020年までにHR領域(人材資源の確保と育成)でグローバルNo.1へ」「2030年までにマーケティングメディア事業No.1へ」という目標を掲げています。

参考:アクセンチュアの成長戦略「賢明なピボット」は日本企業にも可能か | Going Digital インタビュー(4/5)|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー

まとめ

本記事では、ピボットについて、ビジネスシーンでの意味や成功事例について解説しました。
ピボットを行なうにあたっては、10個の型をうまく活用し、ピボットピラミッドを考えることが大切です。
メリットやデメリット、そして注意点も合わせて把握しておくことで、理想的なピボットを実施できるでしょう。

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