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多能工とは一体何か?概要や活用するメリット・デメリットなどを詳細解説!

本記事ではこの多能工について、概要や活用するメリット・デメリットなどを詳細に解説していきます。多能工について知りたい方、多能工を導入してみたい方はぜひ最後まで読んでみてください。

多能工とは

多能工とは、複数の業務・作業、または複数の技能・技術を保有した作業員のことです。製造業において、一つの生産ラインで複数業務を行う作業員を「多能工」と呼んだのが始まりです。現在は製造業以外の業種でも多く利用されています。多能工は「マルチタスク」や「ジェネラリスト」とも呼ばれます。

参考:多能工とは – コトバンク

多能工の対義語は「単能工」です。単能工とは、1つの特定の業務に従事すること、または特定の技能・技術を保有した作業員のことです。


参考:単能工とは – コトバンク

多能工の起源は自動車業界

多能工の起源はトヨタ自動車の大野耐一元副社長(当時)だと言われています。自動車の製造現場では、作業員1人につき1台の機械操作で作業するのがデフォルトでした。しかし大野さんは「紡織工場では1人で数十台の織機を操作しているのに、自動車工場では1人が1台の機械しか扱っていないのはおかしい」と疑問に感じたそうです。そして1人が複数の機械を操作すれば、生産効率が高まると考えました。こうして複数の機械を操作できる作業員「多能工」が生まれたのです。

現在、多能工は幅広い業界で導入されており、

  • 労働力不足の解決
  • 労働生産性を向上すること
  • 働き手の市場価値を向上
  • 働き方改革ができること

などが期待されています。

参考:【多能工】製造業トヨタ自動車が発案・躍進|建設業ではどうなの? | 職人ちゃん

サービス業では多能工の需要が高い

近年は、消費者ニーズの多様化によって、企業側も様々な商品・サービスを提供しています。特にサービス業界においては、従業員が多能工でないと業務を回せないケースも少なくありません。

例えば老舗の総合リゾート会社、星野リゾートです。代表の星野佳路氏は「マリオットもヒルトンもハイアットも、同じ方法で運営されている。
彼らと同じ運営方法をしていては、規模の大きな外資系の運営会社に勝てない。大事なのは個々のホテルの生産性だ」と述べ、生産性向上の大切さを主張しています。

星野リゾートでは、従業員が「フロント」「客室」「レストランでのサービス」「調理補助」の4つの仕事を行えるような社員教育が実施されています。1人で多様なサービス業務の提供できるため、無駄な時間がありません。
このように、星野リゾート特有の旅館メソッドで生産性の高い運営をすることで、
投資家に選ばれる旅館を目指しているのです。

参考:星野流、規模100倍の外資ホテルとの戦い方 | レジャー・観光・ホテル
 

多能工を活用するメリット

多能工を活用するメリットとして下記の点が挙げられます。

  • 幅広い業務を従業員に任せられる
  • 従業員の負担を一律にしやすい
  • 従業員間のチームワークを高めやすい
  • 業務の引継ぎが容易になる
  • 時代に柔軟に対応できる

幅広い業務を従業員に任せらる

幅広い業務を従業員に任せることで特定業務への従事よりも成長スピードが早くなります。
また、担当外だった業務の視点も醸成できるので、人材育成にも繋がります。
さらに、各業務に精通することで従業員が活躍できる場も増えるので、会社全体の活気も高めやすいです。

従業員の負担を一律にしやすい

業務が分担されていると、一部の社員に負担が集中する可能性があり、業務効率の低下に繋がりかねません。多能工を活用すれば、従業員が複数の業務を担当するため、業務負担が均等になりやすいです。従業員の不平・不満も最小限にできるでしょう。

従業員間のチームワークを高めやすい

多能工はチームワークを強化するメリットもあります。他従業員の仕事への理解が深まり、自然とフォローできるようになるからです。社員同士で助け合う環境ができ、チームワークが向上するでしょう。相互理解も深まるので、不満やストレスが生まれるリスクも軽減できます。

業務の引継ぎが容易で業務が止まらない

多能工の従業員を増やすことで業務の引継ぎが容易になります。特定の従業員しかできない作業があると、その人が離職した際に部署全体の業務がストップしてしまいます。しかし多能工ですべての従業員が対応できれば、別の人がカバーできます。
業務内容を一から説明する手間が省けるので、スムーズに引き継げるでしょう。
そのため、部署全体の仕事の流れが止まりません。

時代に柔軟に対応できる

多能工を育成することで、時代や世の中のニーズに柔軟に対応できるようになります。
例えばトヨタ自動車の社員は、自社以外の機械も使いこなします。そのため、災害時には、他社の工場設備や機械の復旧に尽力します。昨今では、新型コロナウイルスの医療現場で使う、医療用ガウンの増産を助けました。

参考:トヨタの作業員は、なぜ専門外でも医療用ガウンを作れたのか 危機で活躍する「多能工」の大切さ

多能工を活用するデメリット

多能工を活用するデメリットもあります。事前にきちんと確認しておきましょう。

  • 業務工数が増えやすい
  • 人事評価が複雑になる
  • 多能工の育成に時間がかかる
  • マルチタスクに対応できない従業員も出てくる

業務工数が増えやすい

1人で複数の業務を行うため、業務内容が他人と重複することがあります。余計な工数によって、業務効率が下がってしまうケースも少なくありません。多能工同士、「誰がどの業務を進めているか」の情報共有が必要です。そのため、コミュニケーションコストもかかるでしょう。多能工間でも効率よく進むよう、業務内容を一元管理できる体制を整備することが大切です。

人事評価が複雑になる

多能工は人事評価が複雑になりやすいです。業務によって評価基準が異なることが多く、人事側の負担が増えてしまいます。また、すべての仕事内容を適切に評価しないと、クレームがくる可能性もあります。多能工を活用する場合は、対応した人事評価制度も整備しなければなりません。

多能工の育成に時間がかかる

多能工は複数の業務スキルを身に付けなければならないため、一般的な社員育成よりも時間がかかります。複雑な業務ほど一朝一夕でスキルを習得することが難しいです。そのため、特殊な事業を運営している企業にとってはデメリットになりかねません。研修担当の人件費や機会損失も発生する可能性があります。
時間・コストをかけてでも多能工の育成価値があるのか、事前に検討することが重要です。

マルチタスクに対応できない従業員も出てくる

人には向き・不向きがあります。多能工に向いていない従業員もいるでしょう。そのような人は、現場のマルチタスクに対応できず、精神的に負荷がかかってしまう可能性もあります。
また、多能工では、入社時希望していた仕事に従事できないケースも生じてきます。「本来やりたかった仕事ができない」というミスマッチで離職する人もいるかもしれません。

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多能工を導入する手順

多能工の導入手順は企業によって様々ですが、大まかに下記の手順で導入していくのがおすすめです。

  • 業務内容・作業工程を確認する
  • 業務・作業のマニュアル化をする
  • 多能工の育成計画を立てる
  • 多能工の育成・研修を実施する
  • 多能工を現場に導入する

業務内容・作業工程を確認する

まず自社の業務内容・作業工程を確認して、優先順位を明確しましょう。
全業務の多能工化は効率的ではありません。どの業務・作業を多能工に任せるか決めてください。その中で、削減できる業務・作業が見つかることも多いです。会社全体の業務効率を上げることを第一に、見直しを進めてください。

業務・作業のマニュアル化をする

多能工が幅広い業務をスムーズに進めるためには、業務・作業のマニュアル化が必須です。マニュアルは文字のみではなく、図や表を多く用いて、読みやすくしましょう。
完成したら実際に現場で働いている従業員に確認してもらい、見やすさ・使いやすさのフィードバックを受けてください。適宜修正・加筆を加えてブラッシュアップしていきましょう。

例えば輸送用器具機械製造業の株式会社イズラシは、全社で社員の多能工化に取り組んでおり、担当者自身が作業マニュアルを作っています。
その際、

  • 未経験者が読んで作業を完了できるか
  • 写真や吹き出しを活用しているか
  • 平易な言葉を使い、手順をわかりやすく説明しているか

が重視されています。

参考:【フォーカス】イズラシ/多能工化へマニュアルつくる 写真や吹き出しを活用 |労働新聞ニュース

多能工の育成計画を立てる

マニュアル作成が完了したら、多能工の育成計画を立案します。この段階で、割り振る具体的な業務・作業内容まで決めましょう。担当業務に合わせて計画を立てれば、効率よく多能工の育成を進められます。立案では「いつ」「誰が」「誰に」「何を」「どのように」を意識すると良いでしょう。
また、座学メインよりも現場の実務メインのほうが、即戦力が育ちやすいです。現場の従業員の協力も必要になるので、事前に研修スケジュールの調整もしっかり行いましょう。

多能工の育成・研修を実施する

計画に基づいて実際に育成・研修を実施します。育成・研修を進める中で、従業員の課題や能力などが浮き彫りになるケースが多いので、配属後に備えて都度記録しておきましょう。

また多能工の適性が低い従業員がいたら、特定業務に従事するよう上手く誘導しましょう。あまり無理を強いるとモチベーションが低下してしまうので、従業員にもしっかり配慮し、慎重に育成を進めましょう。

多能工を現場に導入する

育成・研修が一通り完了したら、多能工を現場に導入しましょう。導入後も、問題なく稼働できているか、こまめに確認・評価を行ってください。また、多能工だからといって何でも押し付けるのは避けましょう。育成コストを無駄にしないためにも、コミュニケーションを密に取り、マルチスキルの定着化を図ってください。
合わせて、次の多能工育成に備えて、育成計画や研修内容を振り返り、改善点も確認ておきましょう。

多能工を導入する際は専門家に相談するのもおすすめ

多能工の導入が初めての企業は、育成計画や人事評価制度に迷うことも多いでしょう。その時は経営コンサルタントなど、多能工化の専門家に相談するのがおすすめです。自社の業種や業務・作業内容に応じた多能工の導入をサポートしてもらえます。

ただ経営コンサルタントといっても様々な会社がありますので、多能工導入の実績があるところに依頼しましょう。例えば下記です。

まとめ

多能工は幅広い業務・作業をマルチにこなしていく役割を担います。昔は製造業で使われていた名称ですが、現在はサービス業・流通業など他の業種でも使用されています。多能工はゼネラリストとして稼働できるので、従業員数が限られている部署や組織で有効に活用できます。

ただし、マルチタスクに適性がない人だと多能工として働くのは難しいです。育成・研修の段階で多能工に向いているかどうか見極める必要があります。
多能工を育成・導入する際に、本記事で解説した内容を参考にしてもらえると幸いです。

参考:「多能工化」とは?メリット・デメリットや取り組み方を徹底解説

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