用語集

インセンティブとは?種類や導入のメリット・デメリット、注意点

本記事では、インセンティブの種類や導入のメリット・デメリット、注意点、インセンティブ制度の設計方法、導入している企業の事例もご紹介します。

インセンティブとは?

インセンティブは英語の「incentive(刺激・動機・誘因)」に由来した言葉で、ビジネスでは業績に連動する報酬を意味します。

例えば、目標を達成した従業員に対して企業から贈呈される金銭や物品です。

社員の意欲を向上させ、事業活動を活発にさせることが目的です。

参考:インセンティブとは−コトバンク

インセンティブの種類

インセンティブの主な種類は以下のとおりです。

  • 報奨金
  • 物品報酬
  • 社内表彰
  • インセンティブ研修
  • インセンティブ旅行

報奨金

もっとも一般的なインセンティブです。毎月の固定給に上乗せされるパターンと、賞与に上乗せされるパターンがあります。

前者は、新規顧客獲得など月ノルマ達成の報酬として有効です。

後者は、目標達成からインセンティブ支給までの日数が空くため、長期的な従業員のモチベーション維持に有効です。

他にも、完全歩合制や、フルコミッション(インセンティブのみ支払われる業務委託契約)などもあります。

物品報酬

物品報酬は、金銭ではなく「物」を報酬とするインセンティブ形式です。例えばオーダースーツのギフト券やネクタイ、高級文房具など業務で必要となる物が贈られます。

社内表彰

社内表彰は、社長賞や年間MVP、成績優秀者などに贈られます。基準は各企業が独自で決定して表彰することが多く、社内表彰にあわせて金銭や物品報酬が贈られることもあります。

インセンティブ研修

インセンティブ研修は、優秀な従業員に対して学ぶ機会を与える制度です。新たなビジネススキルの獲得や資格取得のサポート、海外研修の実施などを行う企業もあります。

インセンティブ旅行

成績優秀者に旅行を贈呈します。費用は企業が全額負担するため、従業員のモチベーションアップに一役買っています。例えば大手旅行代理店JTBは、各企業のインセンティブ旅行実施目的を明確にし、企画〜運営〜効果計測まで行うパッケージを販売しています。

参考:インセンティブ旅行(報奨・招待旅行)

インセンティブ制度のある業種・職種は?

インセンティブ制度は、保険や不動産などの営業職で導入さることが多いです。売り上げに応じて報酬が与えられ、20代で年収1000万円を超えるケースも少なくありません。例えば大和証券なら、5年目で年収1100万円、うちボーナス+インセンティブが300万です。他にも大和ハウス工業なら入社5年目で年収1000万円、うちインセンティブが350万円です。

参考:20代で年収1000万円が狙える企業、商社や証券会社だけじゃない!

他にも、

  • 営業(保険、不動産、広告など)
  • 販売(アパレル、通信機器など)
  • 美容師
  • インストラクター(ジムなど)
  • タクシー運転手
  • 配送ドライバー
  • ライター

など、高単価の商材を扱う業界、自ら新規開拓が必要な業界に多い傾向があります。

インセンティブ制度のメリット

インセンティブ制度のメリットは以下のとおりです。

モチベーションが高まる

インセンティブ制度では従業員個人の成果や頑張りがダイレクトに反映されるため、成果を出せば出すほど自分に返ってきます。

そのため、従業員のモチベーション向上・維持が可能です。

目標や取るべき行動が明確になる

インセンティブには獲得基準があるため、社員のやるべきことや取るべき行動が明確になります。方向性が定まれば仕事の生産性も高まり、企業全体の業績アップが実現します。

競争を促すことができる

従業員一人ひとりがインセンティブ獲得に向けて切磋琢磨することで、個人のスキルアップも期待できます。

成果が公平に評価される

入社年次や役職に関係なく個人の実績が報酬に反映されます。そのため、適切な評価がなされ、給与に関する不公平感が減るでしょう。

インセンティブ制度のデメリット

インセンティブ制度のデメリットは下記です。

インセンティブ獲得が目的になってしまう

目標達成が仕事の目的になる恐れもあります。成果の出やすい業務ばかりを優先させては視野が狭くなってしまいます。

実際、2020年に不正会計が判明したネットワンシステムズに関して、調査報告書によると、同社の現場は「インセンティブを得るためなら手段を選ばない」状態だったそうです。これに対し外部調査委員会は、営業部門のインセンティブ制度の廃止検討を求めています。

参考:4度目の不正会計でネットワン社長らが引責辞任、調査報告に透ける経営陣の無反省ぶり

プレッシャーがかかる

継続的に結果を出す人にとっては嬉しい制度ですが、プレッシャーに弱い人は喜ばないでしょう。本来の実力を発揮できなくなったり、仕事のやる気を失いかねません。

チームワークが乱れる可能性がある

個人が対象のインセンティブ制度だと、チームワークよりも自身の目標達成を優先する恐れがあります。成果目標に関係ない業務が疎かになったり、メンバーのフォローをしないなど、チームワークを乱す原因になる可能性もあります。

評価に差が出る

インセンティブ制度は指標が明確なので、はっきりと評価に差が出ます。特に給与や賞与の差額が大きいと、未達の従業員はモチベーションが低下し不満も貯まるでしょう。JTBの調査によると、社内表彰に関して、未経験者は受賞経験者に比べて「受賞するかしないかは、運の良し悪しが大きく関係していると思う」が高く、「個人やチームのがんばりを認めることにつながると思う」のスコアが低い傾向が見られました。

参考:「ごほうびとモチベーションに関する調査」発表

目標未達月のダメージが大きい

金銭的インセンティブの支給が当たり前になると、未達による不支給時の給与が下がったように感じるでしょう。若干のモチベーション低下になりかねません。

インセンティブ制度の設計方法

インセンティブ制度を導入するには以下のポイントが挙げられます。

設計方法や手順を確認しておきましょう。

対象者を決める

まず支給対象者を決めます。個人単位または部署やチーム単位など、範囲はさまざまです。現場メンバーのみか、あるいはマネージャーも支給対象にするかなど、具体的に決めていきます。

一部に絞りすぎると他社員のモチベーション低下のリスクがあります。「2:6:2の法則」を鑑み、残りの8割のやる気を引き出すことを意識して、対象者を決めましょう。

支給条件を決める

次は条件の策定です。目指す目標の件数や金額などとともにインセンティブが支給されない例外の条件も決めておきます。あくまで目標は、達成可能な数値にしてください。ハードルが高すぎるとやる気を引き出せないからです。一般社員の努力到達可能な難易度にしましょう。

内容を決める

支給内容(報奨金や物品、旅行など)を決めましょう。金銭的インセンティブであれば、支給金額も決めてください。

  • 一律の金額を支給(例:目標達成で3万円支給)
  • 成果に応じて一定割合で支給(例:受注した額の5%を支給)
  • 成果に応じて変動割合で支給(例:売上50~100万円の場合は5%、101~150万円の場合は10%支給)
  • 貢献度による支給(例:コスト削減により1万円支給)

など、形式は様々です。

支給する時期や方法を決める

金銭的インセンティブは毎月の給与や賞与に上乗せする方法が一般的です。

また、現金手渡しにする方法もあります。社内表彰なら、全従業員がいる前で授与式を行うなど、モチベーションが高まる方法を具体的に決めていきます。

インセンティブ制度を導入する際の注意点

インセンティブ制度には注意点があります。事前に確認してスムーズな導入を目指しましょう。

全従業員を対象にする

一部の職種に限定すると、それ以外の従業員のモチベーション低下や不満が起こる恐れがあります。営業職だけではなく人事や事務職など、職種ごとに基準を設け、全従業員を対象にすることが大切です。実際に、現場でバリバリ働いていた若手営業職員が、制度対象外のグループリーダーやマネージャー職に昇格した途端、関心が薄れてしまったという事例があります。

参考:社内の温度差どうする? Withコロナ時代のごほうび施策 

プロセスや貢献度合いも評価対象にする

業務への貢献度やプロセスも評価対象にすることが重要です。「仕事の方法を工夫した」「率先して意見をまとめた」など具体的な数値に表れにくい要素も評価対象にしましょう。

努力やアシスタント業務での貢献などを評価することで、成果を出している従業員との差を埋めることができ、全従業員のモチベーションを高めることが可能です。

インセンティブ制度の周知徹底

従業員へ周知徹底されなければ意味がありません目標だけでなく、導入目的やメリット・デメリット、支給されるインセンティブの具体例も説明しておきましょう。疑問や不安が解消され、スムーズに取り組みを進めることが可能です。

インセンティブ制度を導入している企業の事例

インセンティブの形式は企業によってさまざまです。導入している企業の事例をご紹介します。

株式会社デンソー

自動車部品メーカーの国内最大手である株式会社デンソーでは、2017年から「Start-Up応援金」を導入しています。「Start-Up応援金」とは、健康増進や新たな専門知識の習得を応援する制度で、働き方改革によってできた時間を自己研鑽に当てることを後押ししています。

例えば、健康メニューを食べた社員や、外部サービスのオンライン講座を受講した社員などへの奨励金支給です。後者はビジネススキルやプログラミングスキルなどを身につけることが可能で、従業員の学ぶ意欲をサポートするインセンティブ制度となっています。

参考:働き方改革で個人の成長や新たな価値創造につなげる

株式会社オリエンタルランド

東京ディズニーランドやディズニーシーを運営する株式会社オリエンタルランドでは、テーマパークで働くキャストに向けたインセンティブ制度を導入しています。

  • 素晴らしいパフォーマンスのキャストを表彰する「ファイブスター・プログラム」では、上司から対象者に「ファイブスターカード」を贈呈します。このカードはオリジナル記念品への交換ができます。
  • 長時間勤務を表彰する「サービス・アワード・プログラム」では、累積勤務時間に応じてオリジナルグッズや東京ディズニーリゾートギフト券を、また勤続年数に応じて「サービス・アワードピン」を贈呈します。
  • キャスト同士がお互いをたたえ合う「スピリット・オブ・東京ディズニーリゾート」では、メッセージ交換の結果を元に選考が行われ、スピリット・アワード受賞者が決まります。受賞者には専用ピンが贈呈されます。

など、多様なインセンティブ制度があります。

参考:アワード | 東京ディズニーリゾート キャスティングセンター

インセンティブ制度を導入して従業員のモチベーションを高めよう

インセンティブの形式は、報奨金や物品報酬など様々です。導入する際は、全従業員を対象にし、貢献度やプロセスも評価することで、偏りない判断が可能です。

インセンティブの条件を段階的に設定するなど、従業員にとってメリットのある施策を実行し、モチベーションを高めましょう。

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