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【テンプレート付】退職証明書の書き方や発行義務、離職票との違いを解説

ある調査によると、2020年の転職者のうち約7割が「転職は前向きな行動である」、約5割が「転職は必要である」と答えました。終身雇用制度の崩壊、転職やフリーランスに対する前向きなイメージの浸透から、今後も離転職者が増えることでしょう。

この記事では、退職証明書の書き方や発行義務などについて解説していきます。

退職証明書とは?離職票・在職証明書・解雇理由証明書・資格喪失証明書との違いは?

退職証明書とは「会社を退職した事実を証明する書類」です。

参考:退職証明書(たいしょくしょうめいしょ)」の意味や使い方 Weblio辞書

従業員が希望したときに会社が発行するよう義務付けられています(労働基準法第22条1

もしも発行に応じなかった場合、企業には労働基準法違反として30万円以下罰則金せられます2。ただし、請求期限退職から2年間3で、期限以内であれば何回でも請求できます。

【引用】1                                             (退職時等の証明)第二十二条 労働者が、退職の場合において、使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金又は退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあつては、その理由を含む。)について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。

引用元:e-Gov|労働基準法第二十二条一項

【引用】2                                              第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。一 第十四条、第十五条第一項若しくは第三項、第十八条第七項、第二十二条第一項から第三項まで、(中略)の規定に違反した者

引用元:e-Gov|労働基準法第百二十条一項

【引用】3                                             (時効)第百十五条 この法律の規定による賃金の請求権はこれを行使することができる時から五年間、この法律の規定による災害補償その他の請求権(賃金の請求権を除く。)はこれを行使することができる時から二年間行わない場合においては、時効によつて消滅する。

引用元:e-Gov|労働基準法第百十五条

退職証明書以外の証明書

退職に関わる書類は、全部で5つあります。下記、退職証明書以外について解説します。

離職票

離職票は「失業給付の受給手続きに必要な書類」です。

離職票国発行の公文書退職証明書会社発行証明書です。

退職者が希望した場合、もしくは退職者が59歳以上の場合、企業は退職日から10日以内に離職証明書をハローワーク(公共職業安定所)へ提出する義務があります。無事に受理されると「離職票」が発行され、企業は退職者へ「離職票」を郵送・交付します。そして、退職者がハローワーク失業給付の手続きをします。

引用元:徳山労働局|被保険者についての諸手続き

在職証明書

在職証明書は「従業員が会社に在籍している(していた)事実を証明する書類」です。

「就業証明書」「雇用証明書」など名称は様々で、記載内容は退職証明書と概ね同じです。正社員やパートなど雇用形態に関わらず、従業員の希望に応じ企業が発行します。主に、子どもの保育園入園申請や住宅ローン審査に必要です。

退職証明書と違い、在職証明書発行は義務がありません。また、退職証明書を在籍証明書として使うこともできます。

テンプレートはこちらを参照ください。

引用元:君津市役所ホームページ

解雇理由証明書とは?

解雇理由証明書は「解雇理由を明記した書類」で、解雇を伝える「解雇通知書」とはまた別です。不当解雇の場合、解雇理由証明書は会社と闘う非常に重要な書類になります。企業は、あらかじめの交付義務はありませんが、従業員から請求があれば発行しなくてはなりません。解雇予告をした場合で、予告期間中に従業員から請求がきた場合も同様です(労働基準法第22条2項1)。発行拒否は労働基準監督署の是正勧告や30万円以下の罰金に処せられることもあります。なおこちらも請求期限は2年です。

テンプレートはこちらを参照ください。

引用元:東京労働局|解雇理由証明書

【引用】1                                            (退職時等の証明)② 労働者が、第二十条第一項の解雇の予告がされた日から退職の日までの間において、当該解雇の理由について証明書を請求した場合においては、使用者は、遅滞なくこれを交付しなければならない。ただし、解雇の予告がされた日以後に労働者が当該解雇以外の事由により退職した場合においては、使用者は、当該退職の日以後、これを交付することを要しない。

引用元:e-Gov|労働基準法第二十二条二項

資格喪失証明書とは?

資格喪失証明書は「社会保険の資格喪失を証明する書類」です。

主に、転職先が決まっていない場合に必要です。退職後は自身で国民健康保険や国民年金へ加入するか、家族の扶養に入る必要があります。自身で加入する場合、手続きを市役所の窓口で行います。その際、保険の二重加入を防ぐために求められる書類です。企業や健康保険組合、日本年金機構に依頼することで発行されます。

なお資格喪失証明書がない場合、条件によっては退職証明書で代用可能です。テンプレートをお持ちでない場合は、こちらを参照ください。

引用元:須崎市ホームページ

<書類の比較表>

書類名概要使用用途
退職証明書会社を退職した事実を証明する書類です。会社発行の証明書で、退職者からの請求があれば、発行する義務があります。再就職先に「退職したことを証明する書類」として提出します。決められた書式はありません。
離職票会社を退職した事実を証明する書類です。国発行の公文書で、雇用保険の加入者にのみ発行されます。退職後、失業給付の受給申請に使用します。国の指定する書式があります。
在職証明書従業員が会社に在籍している(していた)事実を証明する書類です。記載内容が似ているため、退職証明書で代用可能です。子どもの保育園入園申請や住宅ローン審査などに使用します。決められた書式はありません。
解雇理由証明書解雇理由を明記した書類です。解雇された退職者から請求があれば、発行義務があります。解雇理由の確認書類として使用します。また、(不当解雇の場合は)会社と争うための材料となります。
資格喪失証明書社会保険の資格喪失を証明する書類です。手元にない場合は、退職証明書で代用可能です。国民年金と国民健康保険への切り替え手続きで特に必要です。

退職証明書の記載内容とは?【テンプレート付】

退職証明書の記載内容や注意点を押さえておきましょう。

<必須項目>

記載項目記載内容(例)
1使用期間企業が雇用していた期間(◯年◯月◯日〜◯年◯月◯日)
2業務の種類担当していた業務(事務職、営業職、研究職など)
3その事業における地位退職時の役職(◯◯部 課長/◯◯課 主任)
4賃金退職時の年収や月給の詳細(基本給◯◯円、諸手当◯◯円)
5退職の事由退職や解雇の理由(離職者による自己都合、定年、解雇など)
6退職年月日退職した日付(◯年◯月◯日)

退職証明書の記載内容|禁止項目

退職証明書には次の項目は記載してはいけません

  1. 退職者が希望しない必須項目

退職者が希望しない場合、必須項目であっても記入はできません。

  1. 下記の禁止項目
  • 国籍
  • 宗教
  • 支持政党
  • 家柄

就職妨害目的としての直接記載はもちろん、秘密記号でも書くことは禁止されています5

【引用】5                                             ④ 使用者は、あらかじめ第三者と謀り、労働者の就業を妨げることを目的として、労働者の国籍、信条、社会的身分若しくは労働組合運動に関する通信をし、又は第一項及び第二項の証明書に秘密の記号を記入してはならない。

引用元:e-Gov|労働基準法第二十二条四項

退職証明書のテンプレート・様式

退職証明書に特定の様式はありません

自社で様式を用意しましょう。以下のテンプレートもご参考ください。

テンプレート①|厚生労働省『退職事由に係るモデル退職証明書』

テンプレート②|東京労働局『退職証明書』

退職証明書発行の注意点

退職証明書発行の注意点を解説します。

離職票との記載内容を合わせる

退職証明書と離職票は、どちらも転職先に提出する可能性があり、記載内容に矛盾があると退職者の不利益につながります。再就職が白紙に戻る可能性もあり、労使間のトラブルに発展しかねません。

4.退職後に発行する

明確な発行のタイミングは法で定められてはいません。しかし退職日以前に、退職証明書を発行すると、整合性が取れなくなる恐れがあります。退職日より後に発行しましょう。

退職証明書は何に必要?

退職証明書が必要になる事例をご紹介します。

再就職するとき

労働者は再就職先(転職先)から提出を求められます。理由は2つあります。

  • 履歴書や職務経歴書に偽りがないかの確認

前会社を退職した理由、役職や地位など採用面接時との違いがないか、複数の会社に在籍していないかの証明です。

  • 再就職先の社会保険手続きに必要

健康保険や厚生年金保険の重複加入を防ぐためです。

失業給付の受給を申請するとき

退職証明書の提出で失業給付の受給申請が可能です。本来、失業給付の申請には離職票を使いますが、会社都合で発行が遅れることは十分有り得ます。退職後しばらく働かない人にとっては、失業給付が大きな収入源となるため、退職証明書の代用で迅速な申請ができます。

3.国民健康保険・国民年金に加入する

すぐに再就職すれば、再就職先の担当者が手続きしますが、そうでない場合は退職者自身が国民健康保険・国民年金への切り替え手続きをしなくてはなりません。この場合に退職証明書が必要です。

こちらも失業給付申請と同様、本来は離職票が必要ですが、退職証明書で代用できます。

退職証明書を発行する企業のメリット

退職証明書の交付には企業側にもメリットがあります。

1つ目が労使トラブル回避です。退職証明書は、解雇理由等を明確な根拠をもとに具体的に記載する必要があります。この内容が、裁判で企業を守る証拠となります。

2つ目が「退職者の再就職や転職の促進」です。退職者の転職・求職活動における「会社都合で退職した」「課長の職位にいた」など、面接内容を退職証明書で裏付けられます。間接的ではありますが、退職者の再就職や転職を促進できます。

まとめ

退職証明書は「会社を退職した事実を証明する書類」 で、退職者の転職や社会保険手続きをサポートする書類です。

退職者が増えることはとても残念なことではありますが、新たなキャリアに向けて気持ちよく送り出すためにも退職時の対応はなるべく速やかに行いましょう。

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