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情意考課とは?人事評価に情意考課を取り入れるポイントを紹介

近年、人事評価の方法は多様化しています。情意考課は人事評価のひとつで、社員の勤務態度や仕事への意欲、社内でのモラルに着目した評価制度です。

本記事では、情意考課の基本を紹介したうえで、取り入れる際のポイントや評価手法などについて解説します。

情意考課とは

情意考課とは、人事査定における評価科目のひとつです。情意考課の評価項目には、勤務態度や労働意欲に関連する項目があります。

情意考課は評価対象者の態度や行動に着目して評価していくため、主観的評価になりがちです。仕事に対する姿勢や社内でのモラルにも着目するため、ひとりの評価者だけで評価すると、偏った評価になる可能性があります。
情意考課を実施する際は、複数名から意見を聞きながら判断することで、正確かつ公平な評価が図れるでしょう。

業績や成果、能力などとは違い、情意考課は評価者の主観が入りやすいため、情意考課は人事評価で重視すべきではない、という見方もあります。
しかし、情意考課を適切に活用できれば、社員の掲げる目標や社員の人間性への理解を深められます。目標に向かい協力し合える人材とチームを組ませ、相乗効果を図ることも可能になるでしょう。

人事評価における情意考課の導入効果

情意考課を導入すると、人事評価制度にプラスの影響を与えられるといわれています。特に、成果主義の雰囲気があり、社員が疲弊しているケースにおいて効果を発揮します。
情意考課を取り入れれば、社員の仕事に対する考えや互いに対する見方が変わり、職場環境を内側から見直すことができるでしょう。

情意考課で社員の能力やスキルは測れないものの、人間力の測定には適しています。情意考課の実施により、成果物だけでは見えてこなかった社員の強みや魅力が発見できるケースも珍しくありません。

プロセスを重視しない成果主義の環境では、場合によっては自己の利益だけを追求する人でも評価されることがあります。一方、周囲の面倒見がよく、自分の仕事を後まわしにするような人は、低く評価されることさえあるでしょう。

企業間の競争が激化する昨今、情意考課を適切に活用し、組織全体のモチベーションアップを図る必要があります。すべての社員が公平かつ正確に評価される職場づくりは、社員の帰属意識や定着率の向上だけでなく、生産性アップや革新的アイデアの創出にも繋がります。

情意考課を取り入れる際の7つのポイント

情意考課とは、スキルや能力のように客観的評価ができ、数値化できるものではありません。企業が定める方針に従って行動しているか、モラルに則った行動をしているかに着目します。

以下、情意考課を取り入れる際のポイントを7つ紹介します。

ポイント1:積極性

積極性とは、与えられた業務をこなすだけでなく、主体的に業務に取り組んでいるかどうかを見る指標です。

例えば、言われた業務を期日までに終えるだけでは、積極性があるとはいえません。積極性のある働き方とは、業務に工夫を取り入れたり、付加価値を提供したりすることです。
また、会議の席では参加するだけでなく、自らの意見を発することが求められます。

指示待ち社員と比べ、上司からの指示がなくても自分で考え、先まわりして行動できる社員は、会社への貢献度も高くなる傾向にあります。

ポイント2:責任感

業務の内容や役割の影響力にかかわらず、自らの役割に責任を持って取り組んでいるかを評価します。

例えば、納期を守っているか、手抜かりなく作業できるかといったことは、社会人として基本です。それに加え、マネジメント的立場になると、部下の行動や部下の仕事の質も自身の責任とみなされるようになります。
本来の業務でないとはいえ、直属の部下のミスを「関係ない」「知らなかった」と言い逃れする上司は、責任感がある人材とはいえません。

自分の役割に責任を持って取り組む人材を評価することで、会社へのエンゲージメントが高い社員を正しく評価する人事制度が築けるでしょう。

ポイント3:地域貢献

現在では、多くの企業が地域貢献や地域内のボランティア活動に携わっています。企業には自社の利益拡大のみならず、社会貢献の意識を持って社会と関わることも求められています。

自社商品や自社独自の技術を活かし、地域貢献に取り組む企業も少なくありません。企業の地域貢献活動に協力的で、積極的に参加する社員は高く評価されるべきでしょう。

ポイント4:思いやり

優れた能力やスキルを持つ人材であっても、組織で働く以上、思いやりの気持ちは不可欠です。単独作業を基本とする仕事であっても、100%個人で完結する仕事はほとんどないからです。

他者に思いやりを持ち、気配りできる人間は、周囲から慕われ、信頼されます。思いやりの心を持った社員が多い企業は社内の雰囲気も良く、離職率も低い傾向にあります。
また、互いを思いやれる社員が多い職場は、他者と協調しながら作業を進められるため、組織プレーにおいて高いパフォーマンスを発揮できるでしょう。

ポイント5:協調性

ビジネスの場では、立場の異なる人たちや、自分と異なる価値観を持つ人たちとも協力して物事を進める必要があります。
協調性の高い社員が多い企業では、互いの意見に耳を傾け、協力して業務に取り組めます。そのため、トラブルも少なく、仕事の進行もスムーズです。

社員を評価する際に「周囲と協力して業務に取り組めているか」「ほかの社員と対立していないか」などに着目すると、協調性の有無が見えてくるでしょう。
周囲と良好な関係を構築し、誰とでも協力し合える社員は、企業にとって大切な存在です。一方、協調性が著しく低い社員は、社員間のトラブルを引き起こすだけでなく、クライアントからのイメージを下げる要因になる可能性があるため、注意が必要です。

ポイント6:規律性

規律性には、時間管理、身だしなみ、動作、言葉遣いなどが含まれます。規律ある行動を各社員が心がけることで、互いに気持ちよく働ける職場づくりが実現できるでしょう。

また、企業によって服装の規定や、適切とみなされる服装は異なります。規則を守ったうえで、仕事に差し支えなく、周囲を不快にしない服装を意識する必要があります。
ただし、規律性の評価は、好みや価値観にも左右されやすいので注意が必要です。公平かつ正確に評価できるよう、複数の人間から意見を聞いて評価するのがよいでしょう。

ポイント7:感謝

社員間で感謝し合える職場は、雰囲気が良いだけでなく、各社員がやりがいを持って働ける職場といえます。
また、同僚、後輩、上司といった社内の繋がりだけでなく、取引先や顧客に対しても感謝し、感謝の気持ちを積極的に伝えられる人材は貴重です。

マネジメント職に携わる人材の場合、特にこの「感謝」を兼ね備えた人材であるかどうかが、組織パフォーマンスにも関係する重要なポイントです。

情意評価で使える評価手法

ここでは、情意評価の効果を高めるための評価手法を紹介します。
既存の評価手法を活用することで、情意評価のメリットをさらに高めていきましょう。

評価手法1:コンピテンシー評価

コンピテンシー評価は、社内で高い成績を残している社員の行動様式を文書化し、それに基づいて評価基準や評価項目を設定して評価する手法です。

どのような取り組みが高い成績に結びついているか分析し、それを客観的に評価するために必要な評価項目を選別・決定したうえで評価します。
優秀な社員を基準にして評価基準や評価項目を設置するため、社員のモチベーションアップが期待できます。

また、情意評価では、優秀な社員の成果や業務に対する実務的側面だけでなく、行動や考え方など内面性へ注目することも大切です。
ただし、あまりにも能力値が突出している社員を基準にすると、現実味がなく、社員のモチベーションが逆に下がってしまう可能性があるため、ご注意ください。

評価手法2:バリュー評価

バリューとは、企業が設定した価値観や行動基準のことです。バリュー評価では、社員がどの程度企業の価値観や行動基準(=バリュー)を理解して行動できたのかを評価します。

バリュー評価の特徴は、仕事の成果だけでなく、社員が普段どのように業務に取り組んでいるのかに着目する点です。たとえ高い成果を出していても、企業のバリューに反した行動をとっていた場合は、高い評価を与えられません。

バリュー評価の導入によって、企業のバリューを社員へスムーズに浸透させることが可能です。会社全体の足並みを揃えることにも繋がり、統率力のとれた組織づくりを図れるでしょう。

情意評価を実施する際のポイント

評価内容は人事や管理職だけで共有するのではなく、本人に知らせることも場合によっては必要です。
その場合、情意評価は内面的要素を評価するものであるため、評価対象者を傷つけないよう配慮が必要です。

ここからは、情意評価を実施する際のポイントを紹介します。

ポイント1:客観性を意識する

主観ではなく、客観的な視点での評価やフィードバックを伝えます。例えば、事実を挙げながら周囲からの評価を説明する、評価者の考えと客観的な事実を分けて記録しておく方法などがあります。

客観性の高い評価であれば、社員は評価に納得し、必要に応じて改善へと行動を起こせるでしょう。主観的な評価になりがちな情意評価において、客観性の担保は会社側が注意すべきポイントのひとつです。

ポイント2:具体例を挙げてフィードバックを行う

具体例を挙げながらフィードバックできれば、対象者は何が問題であったかが理解でき、改善までのイメージを持ちやすくなるでしょう。また、具体例が挙がることで評価ポイントや評価の意図も理解しやすくなるため、納得感を持ちながら評価者の話に耳を傾けられます。

数値では表せない部分を評価する情意考課においては、できるだけ具体的な行動を示すことが効果を高めるポイントです。

ポイント3:改善法を提示する

評価対象者のなかには、弱点や改善点を伝えられたとしても、どのように改善するのかイメージできない人もいるでしょう。本人が適切な改善策を見出せなければ、低い評価を受けた項目を改善できないため、情意考課の効果も低くなってしまいます。

対象者は改善法を説明してもらうことで、弱点を短期間のうちに改善しやすくなります。また、評価する側にとっても、改善法を実践したかどうかの評価を次の人事評価でチェックできるため、評価しやすい体制を築けるでしょう。

まとめ

情意考課とは、勤務態度や労働意欲を評価する制度です。情意考課を社内に導入することで、成果だけでなく、社員の内面や業務プロセスも評価できるようになるため、社員の新たな強みや魅力に気づきやすくなります。

ただし、情意考課は主観的評価になりやすいため、注意が必要です。評価される側が納得感を持てるように、会社側は客観性を意識した評価や、具体例を盛り込んだフィードバックなどを提供するよう心がけましょう。

正しい理解のうえで情意考課を導入し、自社の評価制度を改善していきましょう。

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