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コンティンジェンシー理論とは?背景やメリット・デメリットについても詳しく解説

私たちを取り巻く労働環境や社会情勢は、日々変化しています。
特にビジネスにおいては、一昔前と比べると変化のスピードが飛躍的に速くなったため、直面する状況に素早く対応していく必要があります。

そのような状況により、ますます重要な存在となるのがリーダーです。経営者や各部署の責任者といったリーダーのパフォーマンス次第で、企業の業績は大きく左右される世の中となってきました。「理想のリーダーシップとは、どのようなものか?」と悩みながら日々の業務に取り組むリーダーも少なくないでしょう。

そこで本記事では、リーダーシップを考えるうえで押さえておきたいコンティンジェンシー理論について、背景やメリット・デメリットについて解説していきます。

コンティンジェンシー理論とは?

コンティンジェンシー理論とは、「どんな状況においても高い成果を発揮するリーダーシップは存在しないため、環境の変化に応じてリーダーシップの形も変えるべき」とする考え方のことです。

コンティンジェンシー(contingency)とは、偶然性や不測の事態という意味です。予測できないことが起こる現代では、リーダーが組織の方針を柔軟に変化させていく必要があります。
コンティンジェンシー理論においては、リーダーらしい資質よりも、状況に応じた対応力の高さを重視しています。

コンティンジェンシー理論と条件適合理論

コンティンジェンシー理論と同じように使われる言葉が、条件適合理論です。
コンティンジェンシー理論は状況適合理論とも呼ばれており、字面が似ているため混同されがちです。

条件適合理論においても、リーダーシップは状況に応じて変えていく必要があるとみなしています。ただし、条件適合理論は、リーダーの下にいる部下のことを考慮したり、業務の難易度によって進め方を変えたりすることが前提となっている理論です。

コンティンジェンシー理論と意味合いの近い言葉ではありますが、少しニュアンスが異なるため注意が必要です。

コンティンジェンシー理論が生まれた背景

ここでは、コンティンジェンシー理論への理解を深めるため、かつて主流であった「リーダーシップ資質論」と、コンティンジェンシー理論が台頭した1960年代の時代背景を紹介します。

古典的なリーダーシップ論

1940年頃までは、リーダーシップ資質論が提唱されていました。リーダーシップ資質論とは、「優秀なリーダーは生まれながらに共通した資質や特性を持っている」という考え方です。

具体的には、身長や体格などの身体的特性や精神的特性、性格的特性や知能などが挙げられます。
徳川家康やリンカーンといった歴史上の人物を例に研究されてきましたが、根拠のある資質は発見できませんでした。
そのため、生まれつき持った資質や特性とリーダーシップに関係があるとは断言できなかったのです。

否定的な研究結果によって、リーダーシップ資質論は次第に提唱されなくなっていきました。

コンティンジェンシー理論の誕生

1960年代に入ると組織のあり方が変わり、コンティンジェンシー理論が提唱されるようになりました。

1960年代は産業が高度化し、生産技術が高まったため、組織内でのリーダーへのニーズが多様化した時代です。
多くの企業でグローバル化が進み、事業規模が拡大されました。それまでは国内向けのサービスが主流でしたが、顧客が海外にも増えたため、国際社会での競争を意識する企業も増えていきました。

こうした変化の激しい状況下において、かつて主流であったリーダーシップ資質論は通用しなくなりました。リーダーには複雑な環境に対応していく力が必要だと考えられるようになり、次第にコンティンジェンシー理論が支持されるようになったのです。

参考:コンティンジェンシー理論とは – コトバンク

フィドラーのコンティンジェンシー・モデル

ここではコンティンジェンシー理論の元になった、フィドラーによるコンティンジェンシー・モデルを紹介していきます。

リーダーを取り巻く3つの状況変数

コンティンジェンシー・モデルでは、リーダーシップの有効性に関わる条件を、3つの「状況変数」から構成される「状況好意性」という概念で定義しています。
状況変数は、次の3点です。

  • リーダーが組織内のメンバーに受け入れられているレベル
  • 仕事や課題の明確さ
  • リーダーが部下を管理する権限の強さ

フィドラーは、これら3つの状況変数が高ければ高いほどリーダーシップを発揮しやすい、と主張しています。

LPC(Least Preferred Coworker)

フィドラーは、リーダーの最も苦手な仕事仲間への対応を、LPCという指数で計測しました。
LPCとはLeast Preferred Coworkerの略で、「一緒に仕事をするうえで最も苦手な仕事仲間」という意味です。

苦手な仕事仲間に対しても、私情を挟まず高く評価するリーダーはLPCが高く、低く評価するリーダーはLPCが低いとされています。

フィドラーは、状況変数とLPCを組み合わせた下記の数式によって、組織の業績を表せると主張しています。

  • 組織の業績=LPC×状況変数

状況好意性と2つのリーダーシップ・スタイル

フィドラーは、リーダーシップの形を「タスク中心で指示的なスタイル」と、「人間関係中心で非指示的なスタイル」の2つに分けました。

状況好意性が極端に高いもしくは低い場合は、「タスク中心で指示的なスタイル」が有効で、状況好意性が平均的な場合は、「人間関係中心で非指示的なスタイル」が有効と考えられています。

コンティンジェンシー理論を活用するメリット

コンティンジェンシー理論を活用するメリットとしては、次のようなものがあります。

  • 柔軟な対応が可能になる
  • 組織の風通しが良くなる
  • 上下関係による業務の弊害がなくなる
  • ゼネラリストを育成しやすい

それぞれ解説していきます。

メリット1:柔軟な対応が可能になる

コンティンジェンシー理論は、状況に応じてリーダーシップのあり方を変えるべきだとする考え方です。

近年、新型コロナウイルスの流行によって、働き方が大きく変わりました。これまでは出社して上司と部下が同じオフィスで働くのが当たり前でしたが、テレワークを導入し、リモートで社員同士がオンライン上でやり取りする企業も増えてきています。

テレワークでの労働環境においては、これまでのようなコミュニケーションが取れません。リーダーは、チャットやオンライン会議などを通して部下を管理しなくてはなりません。
こうしたビジネス環境の変化に対応していくために、コンティンジェンシー理論の理解と活用が重要となってきています。

メリット2:組織の風通しが良くなる

コンティンジェンシー理論を提唱する企業の場合、経営者やリーダーは他の社員の手本となるように、常に変化し続ける姿勢を見せる役目があります。

既存の枠組みにとらわれない柔軟な組織改革を実行していくことで、変化やチャンジをよしとする雰囲気が自然と社内に生まれていきます。その結果、活発な情報共有や意見交換が行なわれるようになり、風通しのよい組織へと成長していくことが可能です。

メリット3:上下関係による業務の弊害がなくなる

コンティンジェンシー理論においては、環境に適応できる組織づくりが求められます。

上司や部下という上下関係にこだわらず、成果を出すことに焦点を合わせて業務に取り組むため、官僚制組織のような非効率さとはかけ離れた強い組織体へと成長していけるでしょう。

メリット4:ゼネラリストを育成しやすい

コンティンジェンシー理論において求められるリーダーシップは、マーケットや会社の環境によって常に変化します。

状況に応じて行動や考え方を変えなければならないため、リーダーは継続的にスキルを磨いたり、幅広い知識を身につけたりする必要があります。結果として、コンティンジェンシー理論を活用している企業のリーダーは、スペシャリストというよりは、ゼネラリストとしての力を身につけていく傾向にあります。

コンティンジェンシー理論を活用するデメリット
コンティンジェンシー理論を活用するデメリットとしては、次のようなものがあります。

  • 組織管理が難しい
  • ノウハウが蓄積されない

それぞれ詳しくみていきましょう。

デメリット1:組織管理が難しい

状況に応じて方針やリーダシップのあり方が変わるため、組織の管理が難しくなります。
例えば経営方針の転換などは、組織にとってプラスに働くこともありますが、従業員の負担も大きくなるため注意が必要です。情報共有や社員同士の意見交換が不十分な状態で変化を続けていくと、会社全体の統一感が失われ、内部の軋轢を生むことにもなりかねません。

コンティンジェンシー理論を活用する際は、社内の足並みを揃えながら変革を展開していく力量がリーダーに求められます。

デメリット2:ノウハウが蓄積されない

リーダシップのあり方を環境に応じて変えていくため、事業が失敗した時に何が原因だったのか分からないままになってしまうケースもあります。

社内にノウハウが蓄積されないまま事業を進めてしまうと、長年同じ組織体制で経営している企業と比べ、企業の持つ専門性が劣ってしまう可能性も考えられます。コンティンジェンシー理論を活用する場合は、ノウハウが蓄積されにくい点を考慮し、事前に対策を練っておくことを心がけましょう。

コンティンジェンシー理論を活用する方法

コンティンジェンシー理論を活用する方法としては、主に次のようなものが挙げられます。

  • グローバル人材の確保
  • 社内環境の整備

それぞれ解説していきます。

グローバル人材の確保

最近ではグローバル化が進んだ結果、顧客層は一昔前と比べ多様化してきています。顧客からの多様なニーズに答えていくためにも、社員の多様性にも配慮した採用方針が重要です。

例えば国外から優秀な人材を呼び寄せ、リーダーとして起用すれば、社内の雰囲気はガラリと変わるでしょう。日本人の考えにとらわれない経営を推進していくことで、自社独自の強みが生まれ、競争力も高められます。

社内環境の整備

働き方や雇用形態が多様化すると、それまでの組織体制では対応できなくなります。したがって、変化に合わせた企業の在り方やリーダーシップを導入し、社内環境を適切に整備することが大切です。

まとめ

リーダーとしての資質より、環境や状況の変化への対応力を重要視する考え方が、コンティンジェンシー理論です。
コンティンジェンシー理論を適切に活用すれば、組織の風通しがよくなったり、幅広い知識を身につけたゼネラリスト型のリーダーを育成したりすることが可能です。

コンティンジェンシー理論への理解を深め、ぜひ企業の発展に繋げてみてください。

参考:
コンティンジェンシー理論とは?リーダーのあり方や手にできるメリットを紹介 | オンライン研修・人材育成 – Schoo(スクー)法人・企業向けサービス
条件適合理論とは?状況に適応したリーダーシップを発揮する – 人事担当者のためのミツカリ公式ブログ

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