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損益分岐点とは何か?概要や計算方法、関連用語について

損益分岐点は事業運営上重要な指標です。本記事では、損益分岐点の計算方法や、併せて知っておきたい会計用語などを詳細に解説していきます。損益分岐点について知りたい方は、ぜひ一読してみてください。

損益分岐点とは

損益分岐点とは「売上高」と「費用」が一致するタイミングを指す会計用語です。英語で「BEP(break-even point)と呼びます。損益がプラス・マイナスのいずれにも傾かない状態を指します。

損益分岐点を超える売上高を上げれば、利益が発生します。一方損益分岐点以下の売上であれば、利益は出ずに損失が生じます。

損益分岐点でわかること

損益分岐点を利用することで、

「売上高の変化に対してどれくらい利益が変動するか」

「目標利益のためにどれほどの売上が必要なのか」

を把握できます。定量的な数値に基づいて経営改善を行うには、損益分岐点を理解することが必須です。

経営者・経営陣のみならず、一般社員も損益分岐点を把握することで情報を業務に活かせます。たとえば、営業担当者であれば自社の損益分岐点の数値を逆算した上で販売計画を立てれば、無駄のない営業活動が可能になります。

損益分岐点と関連した会計用語

損益分岐点を理解するには、下記の会計用語について正確に把握しておく必要があります。

  • 利益
  • 売上高
  • 固定費
  • 変動費

利益

利益とは「企業の儲け」を指す会計用語です。利益の計算は、基本的に下記の式にて行います。

利益=売上高-費用

ただ、利益と一口にいっても、種類は一つではありません。どの利益を扱うかで、損益分岐点の算出も変わってきます。

下記が、損益計算書で登場する主要な利益です。

  • 売上総利益
  • 営業利益
  • 経常利益
  • 税引前当期純利益
  • 当期純利益

売上総利益

売上総利益は、売上高から売上原価を差し引いて算出される利益になります。ビジネス現場では「粗利」と呼ばれることも多いです。売上総利益は下記の式にて算出できます。

「売上総利益=売上高-売上原価」

売上原価は「売上高を得るために使った仕入高」を指します。会計上、在庫に関しても売上残高に反映しなければなりません。具体的には、下記の式にて算出可能です。

「売上原価=期首商品棚卸高+仕入高-期末商品棚卸高」

営業利益

営業利益は、営業活動によって得られた利益です。売上総利益を更に細分化して算出します。営業利益の計算式は下記の通りです。

「営業利益=売上総利益-販売費及び一般管理費」

販売費は、商品・サービスの販売で使った費用です。商品の発送費や従業員(販売員)の給料などが販売費に含まれてきます。

一般管理費は、営業活動の上で利用する費用になります。テナント費用や光熱費など、販売費以外でかかってくる費用を一般管理費に含める形式です。

営業利益が高いほど、本業の営業活動が好調である証です。損益分岐点を考える際にも、営業利益が頻繁に利用されます。

経常利益

経常利益とは、営業以外で得た利益も加えた会社全体の利益です。経常利益の計算では下記の式を利用します。

「経常利益=営業利益+営業外収益-営業外費用」

営業外収益は、受取利息・受取配当金など、主に財務活動によって生じた収益が含まれます。営業外費用は、支払利息・支払手数料など営業に関連しない費用です。経常利益を見ることで「企業全体の収益力」を把握することが可能です。

税引前当期純利益

税引前当期純利益とは、経常利益に「特別利益」を足して「特別損失」を差し引いた利益になります。「税引前」と記載されている通り、法人税などの税金は差し引かれていません。

税引前当期純利益の計算式は下記の通りです。

「税引前当期純利益=経常利益+特別利益-特別損失」

特別利益とは、企業の事業活動とは関わりのない要因で生じた臨時的な利益です。有価証券売却益、固定資産売却益などが特別利益に該当します。

特別損失は、事業活動では生じない例外的な損失です。固定資産除去損、火災・自然災害による損失などが特別損失にあたります。

当期純利益

当期純利益とは、会計期間における企業の最終的な利益高になります。当期純利益の計算方法は下記の通りです。

「当期純利益=税引前当期純利益-法人税、住民税及び事業税±法人税等調整額」

売上高

売上高とは、企業活動によって商品・サービスを販売・提供することで得られる代金の総称です。費用や損失は考慮せず、純粋に得られた金額のみが反映されます。

売上と利益は同じものではありません。利益は売上高から費用を差し引いた金額になります。

固定費

固定費とは、売上に関係なく一定額で生じる費用です。固定費の具体例としては、テナントや工場の家賃、人件費、支払い利息、固定資産税などが挙げられます。売上が少ない際も固定費は変わらずかかるため、可能な限り固定費を削減することが利益獲得で肝要です。

変動費

変動費は、売上の大小によって金額が変わってくる費用です。具体例としては、商品の仕入れ費用や原材料費、水道光熱費などが挙げられます。

売上が増えれば、仕入れ費用や原材料などは自然と増えてきます。反対に、売上が減れば各種仕入れ費用などは少なくなるため、費用の先読みがしづらい点、変動費の特徴です。

損益分岐点と損益分岐点売上高

企業によっては、「損益分岐点売上高」という用語を使用しているケースもあります。損益分岐点売上高も「売上高と費用額が一致するタイミング」を指します。損益分岐点売上高と損益分岐点は同義と考えて問題ありません。

また、損益分岐点売上高と似た用語として「損益分岐点販売数量」という用語があります。損益分岐点販売数量は「売上高と費用額が一致する際の販売数量」のことです。販売数量をベースにして損益分岐点を考える点が、損益分岐点売上高との違いになります。

一般的に、「損益分岐点」という言葉が使われる場合は「損益分岐点売上高」を指すことが多いです。ただし、企業によっては「損益分岐点販売数量」を指すこともあるので、損益分岐点がどちらの意味で使われているか確認するようにしてください。

損益分岐点の計算方法

損益分岐点は、下記の公式によって算出できます。

「損益分岐点(損益分岐点売上高)=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}」

たとえば、固定費が100万円、変動費が100万円、売上高が1000万円である場合、損益分岐点売上高は下記の通り計算可能です。

100万円÷{1-(100万円÷1000万円)}≒111万円

なぜ上記の計算式で損益分岐点を算出できるのか、詳細を確認していきましょう。

損益分岐点の公式のしくみ

まず前提として押さえておきたい点が「損益分岐点は利益が0になるタイミング」という点です。売上高と費用が損益分岐点で一致すれば、利益は0になります。したがって、損益分岐点の公式は「利益=0」の式をベースに考えていきます。

利益額は下記の計算にて導出可能です。

「利益=売上高-変動費-固定費」

また、損益分岐点の公式で登場している「変動費÷売上高」の部分は「変動費率(売上高に占める変動費の割合)」と書き換えることができます。したがって、

「変動費率=変動費÷売上高」

と表すことが可能です。この式を変形すると、

「変動費=売上高×変動費率」

という式になります。この計算式を先ほどの利益の計算式に代入すると下記の計算式を導出できます。

「利益=売上高-売上高×変動費率-固定費」

上記式の右辺部分に着目して、「売上高」の部分をくくります。すると、

「利益=売上高(1-変動費率)-固定費」

という式に変形できます。損益分岐点売上高は「利益が0」になるタイミングですので、左辺の「利益」の部分を0に置き換えます。また、「売上高」の部分を分かりやすいように「損益分岐点売上高」に換えておきます。すると、

「0=損益分岐点売上高(1-変動費率)-固定費」

となります。右辺の固定費を左辺に移項して、両辺を(1-変動費率)で割れば、

「固定費÷(1-変動費率)=損益分岐点売上高」

という形になります。あとは、両辺を入れ替えて、変動費率を「変動費÷売上高」の形に戻してあげれば、

「損益分岐点売上高=固定費÷{1-(変動費÷売上高)}

が導出できます。

固定費と変動費、売上高さえ把握できれば、上記式を用いて簡単に損益分岐点売上高を計算可能です。

限界利益率について

損益分岐点の公式にある「{1-(変動費÷売上高)}」の部分を「限界利益率」と呼びます。

限界利益は、売上高から変動費を引いた残額になります。この限界利益が売上高の中でどれくらいの割合であるか示した数値が「限界利益率」です。

売上高が増加した際に、どれだけ限界利益が増えるか表している数値ともいえます。固定費は売上高とは無関係に生じる費用であるため、変動費と売上高をベースにして算出する限界利益率こそが、企業の「稼ぐ力」を把握する上で有用です。

損益分岐点比率について

損益分岐点比率とは、損益分岐点が現状の売上高に占める割合を示した数値です。「損益分岐点=売上高(損益分岐点比率が100%)」の状態だと、余剰利益はほとんどありません。損益分岐点比率の数値が低いほど、売上高に余裕がある状態となります。

基準としては、損的分岐点比率が70%以下だと経営状態が良好と言えます。90%以上となると、利益にゆとりがない状態です。

損益分岐点比率の計算式は下記の通りです。

損益分岐点比率=損益分岐点÷売上高×100

たとえば、損益分岐点が1,500万円、売上高が2,000万円の場合、損益分岐点比率は下記の通り計算できます。

1,500万円÷2,000万円×100=75%

安全余裕率の把握も重要

安全余裕率とは、現状の売上高がどれくらい損益分岐点を上回っているか示した数値になります。黒字の度合いを簡単に把握できるので、非常に便利な指標です。安全余裕率の計算式は下記の通りです。

安全余裕率=(売上高-損益分岐点売上高)÷売上高×100

たとえば、売上高が1000万円、損益分岐点売上高が800万円とすると、安全余裕率は下記のように算出できます。

(1000万円-800万円)÷1000万円×100=20%

上記の計算結果より、「損益分岐点よりも20%以上高く利益を出せている」ことが分かります。逆に考えると、売上高が20%減っても黒字を維持できることになります。

損益分岐点をもとにした経営改善

損益分岐点をもとにして経営改善を行う際、ポイントになるのは「費用の削減」です。売上を伸ばすことで利益は増えますが、売上を自在にコントールするのは至難になります。これに対して、費用であれば企業側がある程度コントール可能です。

固定費の削減

固定費は売上に関係なく発生する費用です。したがって、売上が下がっている際は大きな負担になります。不要な固定費が生じていないか、確認を行いましょう。比較的削減しやすい固定費としては、家賃代や保険料、人件費などが挙げられます。ただし、人件費に関しては下げすぎると業務に支障がでるケースがあるので要注意です。費用対効果のバランスを考えて、人件費を削減するようにしてください。

変動費の削減

変動費は売上高によって上下する費用です。削減しやすい変動費は、仕入単価になります。利用している原材料などを見直すことで、変動費の調節が可能です。ただ、原材料を安いものに変えると、製品の質が下がってしまうこともあります。顧客からクレームを受ける可能性もゼロではありません。品質を下げない程度に、原材料の調節を行ってください。

まとめ

損益分岐点を把握することで、どれくらい売上を出せば利益獲得に繋がるか把握できます。損益分岐点は、公式さえ把握すれば容易に算出可能です。難しい計算は必要ありません。本記事で解説した内容を参考にしてもらい、損益分岐点を事業運営に活用してみてください。

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