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取締役会とは?開催方法・開催するメリットについても解説

株式会社の経営において、業務執行を決定する場を取締役会といいます。基本的に設置義務はありませんが、取締役会は円滑な会社経営には不可欠です。

本記事では、取締役会の概要や決議事項を整理した上で、取締役会を設置するメリットや開催の流れ・議事録の書き方などについて解説していきます。

取締役会とは?

取締役会とは、株式会社の業務執行に関わる意思決定を行う機関のことです。3名以上の取締役、および業務をチェックする監視役で構成され、会社の方針や重要事項について議論を行います。

開催する時期に決まりはなく、参加者の都合や会社の状況にあわせて決定できます。ただし開催頻度については、会社法で最低3ヵ月に1回と定められており、合計で年4回以上の開催が必要です。

開催場所に決まりはありませんが、会社の経営にとって重要な内容を話し合うため、セキュリティを確保できる場所での開催が望ましいです。リモートワークの普及により、最近ではオンラインで取締役会を開催する企業も増えています。

参考:取締役会(とりしまりやくかい)とは

取締役会の設置は義務?

基本的には、取締役会の設置は任意です。しかし、以下にあてはまる株式会社は、会社法で取締役会の設置が義務付けられています。

  • 公開会社
  • 監査役会設置会社
  • 監査等委員会設置会社
  • 指名委員会等設置会社

公開会社とは、発行する株式の全部または一部に、譲渡制限を課していない会社です。上場している会社のことではないため、注意してください。一方で、すべての株式に譲渡制限のある会社を非公開会社と呼びます。多くの中小企業は、株式に譲渡制限を設けている非公開会社であるため、取締役会の設置義務はありません。

参考: 取締役会~設置の要否・組織・開催頻度 | 弁護士法人クラフトマン IT・技術・特許・商標に強い法律事務所(東京丸の内・横浜)

取締役会で決議する内容

取締役会は、特定の取締役が個人で決めるべきではないことを決議する場として設けられています。

会社法362条では、特定の取締役に委任できない事項として以下の7つを定めています。

  1. 重要な財産の処分、及び譲受け
  2. 多額の借財
  3. 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
  4. 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
  5. 募集社債発行の決定
  6. 業務の適正を確保するための体制の整備
  7. 取締役の任務懈怠責任の免除の承認

また、以下のような事項も取締役会での決定が求められます。

  • 譲渡制限株式の譲渡
  • 譲渡制限株式の承認取得
  • 株式分割
  • 株主総会における招集の決定
  • 代表取締役の選任、及び解任
  • 計算書類及び事業報告、附属明細書の承認
  • 競業取引と利益相反取引の承認

取締役会で議論する内容は、社内の重要なポジションの選任・企業の体制・株式・配当金など、会社経営において重要な事項ばかりです。

参考:
取締役会 – Wikipedia
会社法 | e-Gov法令検索

取締役会を設置するメリットとデメリット

ほとんどの場合設置義務はなく、各企業の都合や運営方針によって検討できる取締役会ですが、メリットだけでなくデメリットも確認しておくことが大切です。

取締役会を設置するメリット

取締役会を設置する最大のメリットは、会社の信用度アップに結びつくことです。世間から好印象をもたれるだけでなく、融資を受ける上でも有利となる可能性があるでしょう。取締役の独断による言動を抑制する効果もあります。

また、取締役会の設置によりトラブル発生時にスピーディーな対応が可能です。株主総会※は年1回の開催ですが、取締役会は3ヵ月に1回のペースで開催するため、日々移り変わる状況について適切な時期に議論できます。

※株主総会: 株式会社の最高意思決定機関。その企業の株主が集まって、経営や人事など経営に関わる重要な事項を決定する。

取締役会を設置するデメリット

取締役会は、年4回以上開催しなければなりません。そのため、参加者にとっては業務負担が増えるでしょう。開催日の調整、準備、議事録の作成、および保管といった、前後の準備も行う必要があります。

また場合によっては、取締役会を開催するために役員を増やす必要があり、役員報酬の負担が増加します。開催には3名以上の取締役、および監査役が揃っていることが前提です。

取締役会の設置をおすすめする企業

取締役会を設置するかを決める上で、一つの基準となるのが会社の規模です。社員数が3名に満たない企業の場合は、そもそも取締役会を設置できません。とはいえ、規模の小さい企業は社員の意見を共有しやすい傾向があるため、取締役会がなくてもスムーズな運営ができるでしょう。

ただし、社員数の少ない企業でも、将来的に会社の規模を大きくしたいと考えており、社内のリソースが許す場合は、取締役会の設置をおすすめします。社会的信頼につながり、融資も得やすくなるため、経営を円滑に進めていくことができるはずです。

取締役会を開催する手順

それでは、実際に取締役会を開催する手順を説明していきます。

招集連絡

取締役会に参加するメンバーに対して、開催の2週間前までには連絡するようにしてください。招集権を持つ取締役が行うことが一般的です。招集連絡の方法は、口頭でも書面でも構いません。

定例会のように定款で規定しておけば、招集連絡を省略できます。予定外の開催が必要となった場合は、書面などで通知するとよいでしょう。

決議には、取締役会において利害関係のある取締役を除いた過半数の出席が必要です。参加義務のあるメンバー全員ができるだけ参加できるように、日時を調整しましょう。

準備

取締役会の開催方法は自由です。会議室などの一室に集まって開く方法や、スカイプなどを利用したオンライン形式で開く方法もあります。定款で規定しておけば、書面決議を行うことも可能です。書面で決議を取ることができれば、参加メンバーで予定を合わせたり、一つの場所に集まったりする必要がなくなります。

取締役会の運営担当者は、取締役会の開催日までに、部屋の確保、議題内容の整理など開催方法に合わせた準備を行います。

取締役会の開催(当日)

取締役会では議長が中心となって会を進行していきます。議長は取締役の中から取締役会において選任されます。

代表取締役、もしくは取締役の役職に就いている者は、取締役会で自身の業務状況を報告する義務があります。また、取締役会では開催時に抱えている決議すべき問題について意思決定を行います。

取締役会で話し合いを行った内容は議事録にまとめ、保管する必要があります。

取締役会における議事録の書き方

取締役会で議論した内容は議事録に記録します。記録すべき内容は会社法で定められており、決議を証明する重要な資料となります。記入漏れがあると、トラブルが生じた際に問題が複雑化するため注意が必要です。

以下、議事録に記録すべき事項を確認していきましょう。

会社法で定められた事項

  • 開催日時
  • 開催場所
  • 特別取締役による開催の場合はその旨を記す
  • 平取締役の請求による招集の場合はその旨を記す
  • 議事の経過要領、及び結果
  • 特別利害関係の取締役が出席している場合はその者の指名
  • 監査役や会計参与などから意見や発言があった場合はその内容を記す
  • 出席した取締役、執行役、会計参与、監査役又は会計監査人の氏名、もしくは名称
  • 議長の氏名(議長を選任していない場合は不要)
  • 議事録を作成した取締役の氏名

決議事項があった場合に記録する事項

取締役会において決議事項があった場合は、会社法で定められている事項にあわせて、以下の事項を記録します。

  • 決議事項の内容
  • 議決案の提示を行った取締役の氏名
  • 決議した日付

報告の省略があった場合に記録する事項

代表取締役、及び各取締役は、取締役会で業務執行について報告しなければなりません。しかし、全取締役、会計参与、監査人などのメンバーに対して事前報告を行った場合は報告を省略できます。

報告の省略があった場合は、以下の内容を議事録に記録します。

  • 報告の省略が行われた場合の記載事項
  • 報告を行わなかった事項の内容
  • 報告を要しないとされた日付

議事録を記録する際のポイント

複数人の会話が行き交う会議の場で、要点を正確に書き留める作業は容易でないはずです。誰が発言した内容なのか記入し忘れたり、聞き間違えた内容をそのまま記録したりしてしまうことも懸念されます。

また、金額や数量などを書き留める場合は、聞き間違いや記入ミスにとくに注意しなければなりません。

そこで、議事録を取る際はICレコーダーの活用がおすすめです。内容を聞き逃したり不備があったりした際に再確認できます。ただし、ICレコーダーを用いる場合はその旨を参加者に伝え、合意を取る必要があるため注意して下さい。

ICレコーダーを持ち込めない場合は、議論の内容をより正確に記録する必要があります。その際には、主語を明確に記入することがポイントです。発言者に相違があったり、発言者の記入が漏れていたりすると、大きなトラブルに発展しかねません。要点を走り書きする際にも、まず主語を書き留めることを心がけて下さい。

まとめ

取締役会の設置は、円滑な業務遂行につながり、一部の者による独断的な経営の回避にも役立ちます。社会的な信用度も高まることで、金融機関からの融資も受けやすくなるでしょう。

ほとんどの企業には取締役会の設置義務はありませんが、設置する際には会社法に則した設置、及び運営が必要となります。開催方法や議決内容・議事録の書き方などをよく確認して、適切に運営していきましょう。

参考:
取締役会とは?経営者なら知っておきたい基礎知識 | ビジドラ~起業家の経営をサポート~
取締役会とは?会社法を参照しつつ開催頻度などについてわかりやすく解説!【クレジットカードのことならCredictionary】
取締役会とは?基礎知識から設置と開催の手順までをわかりやすく解説 – 起業ログ
【取締役会の決議方法】開催方法から議事録の取り方まで詳しく解説! – 起業ログ

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