用語集

相対評価と絶対評価の違いとは?メリット・デメリットをわかりやすく解説

人事評価の方法には「相対評価」と「絶対評価」の2種類があります。

これまでは「相対評価」を導入する企業が大半でしたが、評価の透明性や社員のモチベーション向上の観点から「絶対評価」へ切り替える企業が徐々に増えてきました。

ただ、どちらが優れているということはありません。自社のビジネス環境に適した人事評価制度を構築する必要があります。

そこで本記事では、「相対評価」と「絶対評価」の違いや、それぞれのメリット・デメリットをわかりやすく解説していきます。「相対評価」と「絶対評価」を正しく理解し、人事評価制度の構築にご活用ください。

相対評価とは?

相対評価とは「集団内の比較によって個人の成績を相対的に順位付けする評価方法」です。

相対評価では、所属する組織において、個人の能力や成績がどの位置にあるかを他者と比較することで相対的に評価します。

例えば、上から「S評価◯人/A評価◯人/B評価◯人/…」と評価の分布割合を設け、成績上位者から順に振り分けます。

学校教育における相対評価

相対評価の身近な例は、学校教育における「5段階評価」や「偏差値」です。

「5段階評価」では、テストや授業態度などに基づき、クラス内における評価が決定されます。
「偏差値」は、集団内の平均点が50点になるよう調整されたうえで、自分の学力や成績がどの位置にいるかを表す数値です。

参照:BizHint|相対評価(相対評価の使用事例:教育現場)

会社における相対評価

会社においても、主に次の方法で相対評価が使用されます。

  • 同じグループやチーム内の社員の実績のみを比較して評価する
  • 平均成績を基準にグループやチームへの貢献度に基づき評価する

社員の実績や成績を「高い評価:普通の評価:低い評価=2:6:2」のベルカーブと呼ばれるバランスで比重を調整して、評価します。

参考:DAIMOND ONLINE|「ABC」でランク付けする日本の評価制度が若手を腐らせる

相対評価のメリット

相対評価には主に4つのメリットがあります。

  1. 評価が容易である
  2. 評価者の影響が少ない
  3. 集団内の競争意識を高める
  4. 人件費のコントロールが可能である

それぞれ解説していきます。

1.評価が容易である

組織やグループ内における個人同士を評価基準に従って比較し、順位を割り振るため、評価に時間や手間がかかりません。

明確な評価基準を設ける必要がなく、導入も比較的簡単なため、評価者の負担を軽減できるでしょう。

参考:ONE TEAM Lab|相対評価と絶対評価の違い徹底解説!最適な評価制度を決める方法(2-1-1.相対評価のメリット)

2.評価者の影響が少ない

評価者の価値観や評価能力が全体に及ぼす影響が少ない点も大きなメリットです。

集団内の相対的な位置付けによる評価のため、評価に大きなバラつきや格差が生じません。また、評価の分布割合やランク(枠)が決められており、評価者の好みや価値観といった主観で評価が大きく変わる心配が不要です。

参考:HR大学|相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること(評価基準の設定が難しい場合がある)

3.集団内の競争意識を高める

集団内の順位で実績や能力を評価されるため、集団内の競争意識を高めることができます。

管理者や評価者によるコーチングがなくても、個々人がモチベーションやスキルアップに取り組めて、互いに切磋琢磨する環境や風土が根付きます。

参考:ONE TEAM Lab|相対評価と絶対評価の違い徹底解説!最適な評価制度を決める方法(2-1-1.相対評価のメリット)

4.人件費のコントロールが可能である

評価の分布割合が決まり評価全体のバランスを保つことができるため、昇給や賞与などの人件費を予算内でコントロールできます。

昇給や業績賞与の支給対象者の絞り込みが容易になれば、年間の人件費削減にもつながるでしょう。

参考:ONE TEAM Lab|相対評価と絶対評価の違い徹底解説!最適な評価制度を決める方法(2-1-1.相対評価のメリット)

相対評価のデメリット

相対評価には次の3つのデメリットが存在します。

  1. 適正な評価ができないケースがある
  2. チームの一体感を損なうおそれがある
  3. 属する集団によって評価にバラつきが出る

一つずつ見ていきましょう。

1.適正な評価ができないケースがある

あらかじめ決められた評価分布に個人の評価を当てはめるため、適正な評価ができない可能性があります。

例えば、“限りなくA評価に近いB評価の社員”と“C評価に近いB評価の社員”は同じB評価です。また、同じ能力や実績を持つ社員同士であっても、それぞれに順位を付ける必要があります。

さらに、評価の理由や根拠を聞かれたときに答えにくく、「頑張ってない人と同じ評価しか得られない」とモチベーション低下につながるおそれもあります。

参考:HR大学|相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること(評価基準の設定が難しい場合がある)

2.チームの一体感を損なうおそれがある

常に自分と他者の比較で評価される環境に身を置くことで、個を優先するようになり、チームの一体感が損なわれるおそれがあります。

例えば、周囲の評価を下げるために、情報共有や他者へのサポートをしない、社員同士が足を引っ張り合うというトラブルも起こり得ます。

参考:ONE TEAM Lab|相対評価と絶対評価の違い徹底解説!最適な評価制度を決める方法(2-1-2.相対評価のデメリット)

3.属する集団によって評価にバラつきが出る

評価の対象者が所属する集団内における評価のため、同じ能力や実績を持っていても、所属する集団のレベルによって評価にバラつきが出てしまいます。

例えば、とある部署Aでは優秀とされた社員であっても、さらに優秀な社員ばかりの部署Bに異動すれば低い評価を受けることになります。

部署Aに居続ければ努力やスキルアップをせずに高い評価を得られるため、自己成長や競争意識が芽生えず、組織の発展が停滞するでしょう。

参考:BizHint|相対評価(職場やチームのレベルで評価にばらつきが出る)

絶対評価とは?

絶対評価とは「あらかじめ決めておいた評価基準(ノルマや数値)を達成できたかどうかで判断する評価方法」です。

絶対評価は、評価対象者個人が持つスキルや実績に基づいて評価します。相対評価のように他者との比較や集団内における順位付けがなく、個々人を客観的に評価できます。

参考:BizHint|相対評価(絶対評価とは?)

学校教育における絶対評価

学校教育の現場では長らく相対評価が採用されていましたが、2000年前後のゆとり教育を機に絶対評価が導入されるようになりました。

これまでの学力一辺倒の評価ではなく、個々人に設定した目標の達成度に基づく評価や指導を重視するようになったことが理由です。

Q.子どもの評価が「相対評価」から「絶対評価」に変わったと聞きましたが、どう変わったのですか、また、その理由は何ですか。
A.新学習指導要領においては、基礎的・基本的な内容を確実に身に付けさせ、自ら学び自ら考える力などの「生きる力」を育成することを重視していることから、評価についても、学習指導要領に示す目標に照らしてその実現状況を見る評価を一層重視することが重要となります。(中略)「集団に準拠した評価」(いわゆる相対評価)から、「目標に準拠した評価」(いわゆる絶対評価)に改めたところです。
ア.児童生徒一人一人の進歩の状況や教科の目標の実現状況を的確に把握し、学習指導の改善に生かすことが重要であるが、そのためには、目標に準拠した評価が適当であること。
(中略)
エ.新学習指導要領では、習熟の程度に応じた指導など個に応じた指導を一層重視しており、学習集団の編成も多様となることが考えられるため、指導に生かす評価の観点からは、目標に準拠した評価を常に行うことが重要となること。

引用元:文部科学省|確かな学力

会社における絶対評価

会社において絶対評価が使用される場面は、主に人事考課です。

評価対象者は能力や経験に合わせて、期初に目標設定します。そして、評価者はあらかじめ決められた評価基準に基づき、期初に設定した目標の達成度や実績を評価します。

達成できれば高い評価がつきますが、達成度が低ければ評価は低くなります。

参考:BizHint|相対評価(人事考課で使用される絶対評価)

絶対評価のメリット

絶対評価には主に次の3つのメリットがあります。

  1. 理解や納得を得やすい
  2. 能力開発やスキルアップにつながる
  3. 個人の努力や成果を正確に評価できる

一つずつ解説していきます。

1.理解や納得を得やすい

絶対評価は目標に対する達成度・到達度で評価されるため、評価理由や根拠を説明しやすく、社員が評価結果に納得しやすくなります。

一方、相対評価では、評価の根拠が他者との比較のため、評価基準がわかりにくく社員から理解を得られないことも少なくありません。

2.能力開発やスキルアップにつながる

評価対象者に不足している部分が明らかになるため、能力開発やスキルアップにつながりやすいです。

設定した目標やノルマを達成できなかった場合は、当然低い評価や厳しい評価を受けます。しかし、「なぜ目標を達成できなかったか」「次はどうすればノルマを達成できるか」を振り返る材料となり、自発的な内省を促すきっかけになります。

自発的な内省と能力開発・スキルアップによる自己成長という好循環を生み出せるのです。

参考:識学総研|相対評価と絶対評価とは?違いやメリット・デメリット、運用ポイントを解説(効率的な能力開発が可能)

3.個人の努力や成果を正確に評価できる

絶対評価は他者との比較ではなく、個人の目標達成度に焦点を当てた評価基準のため、個人の努力や成果を正確に評価できます。

例えば、もともと成績が低い社員であっても、努力して成績を上げればその分高い評価を得られます。「頑張れば評価や給与が上がる」とモチベーションの向上にもつながるでしょう。

一方、相対評価は個々人の努力や成果を評価しにくいため、モチベーションが低下したり、怠慢な社員を生み出したりする可能性があります。

参考:識学総研|相対評価と絶対評価とは?違いやメリット・デメリット、運用ポイントを解説(一人ひとりの努力を評価できる)

絶対評価のデメリット

一方で、絶対評価には次の3つのデメリットがあります。

  1. 評価基準の設定が難しい
  2. 評価で格差をつけにくい
  3. 予算や人件費の見通しを立てにくい

一つずつ解説していきます。

1.評価基準の設定が難しい

公正かつ適切な評価基準を設定するためには、過去のデータの分析や社員の実力を考慮する必要があり、大きな手間と時間がかかります

例えば、簡単な基準を設定すれば多くの人が高い評価、困難な基準を設定すれば多くの人が低い評価に偏ってしまいます。

平均的な評価に多くの人が集まるような、公正かつ適切な評価基準を設定しなければいけません。また、時代のニーズに合わない評価基準を残しておくと形骸化するため、微修正を繰り返す必要があります。

参考:HR大学|相対評価と絶対評価の比較。両者の特徴と人事に求められること(評価基準の設定が難しい場合がある)

2.評価で格差をつけにくい

評価で格差をつけにくいデメリットもあります。

主な理由は次の2つです。

  • 評価者の事なかれ主義によって、評価の中心化傾向に陥りやすいから
  • 評価対象者全員が同程度の目標達成度合のとき、全員が同じ評価になるから

個々人を絶対的に評価できる反面、全体的なバランスを欠いた評価結果につながる恐れがあります。

3.予算や人件費の見通しを立てにくい

高い評価を受ける人が多くなれば、その分、昇給や賞与支給などインセンティブの対象者が増えるため、予算や人件費の見通しが立てにくくなります。

例えば、評価者の評価が寛大化(甘く)傾向になったり、目標を大幅に達成するメンバーが増えたりすれば、高い評価を受ける人は際限なく増えていきます。

その結果、「昇給する社員の数」や「業績賞与の支給対象者数」を予測ないため、人件費を計画的にコントロールできなくなり、年間予算を超過してしまうおそれもあるでしょう。

相対評価と絶対評価の違い

ここまで説明してきた相対評価と絶対評価の違いを一覧表にまとめました。

相対評価絶対評価
定義集団内の比較によって個人の成績を相対的に順位付けするあらかじめ決めておいた評価基準(ノルマや数値)を達成できたかどうかで判断する
評価基準他者との比較、集団内の順位目標の達成度
メリット1.評価が容易である
2.評価者の影響が少ない
3.集団内の競争意識を高める
4.人件費のコントロールが可能である
1.理解や納得を得やすい
2.能力開発やスキルアップにつながる
3.個人の努力や成果を正確に評価できる
デメリット1.適正な評価ができない可能性がある
2.チームの一体感を損なう可能性がある
3.属する集団によって評価にバラつきが出る
1.評価基準の設定が難しい
2.評価で格差をつけにくい
3.予算や人件費の見通しを立てにくい

人事評価では相対評価と絶対評価を上手く組み合わせる

これまで日本の企業では、年功序列と相性が良い相対評価が取り入れられてきました。

ところが、1990年代のバブル崩壊以降、成果主義が注目されるようになり、評価の透明性やパフォーマンス向上が期待できる絶対評価へと切り替える企業が増えていきました。その後、社員を周囲の人から多角的に評価できる360度評価なども浸透しました。

そして現在は、複数の評価方法を組み合わせ、あらゆる角度で適切に個人を評価しようという姿勢が主流となっています。

ただ、残念ながら「相対評価と絶対評価のどちらを選ぶべきか、どちらが優れているか」という問いに正解はありません。

「ノルマや目標を数値化しにくい部署には相対評価」、「営業などの実績が明確な職種には絶対評価」のように、評価方法を柔軟に組み合わせることで自社に適した評価制度を設計できるのです。

参考:ITトレンド|人事評価は相対評価?絶対評価?違いやメリット、導入事例を解説

相対評価と絶対評価の企業導入事例

相対評価と絶対評価を導入した企業事例を見ていきましょう。

1.リコーリース|相対評価から絶対評価へ切替

リコーグループのリコーリースは、2020年4月に評価制度を相対評価から絶対評価へ切り替えました。

相対評価では社員のパフォーマンスを適切に評価できていないと感じていたそうですが、絶対評価では難しい目標を達成した社員は全員が高く評価されるようになりました

評価者研修を実施するなど、評価者による難易度設定のバラつきを防ぐための取り組みも行われています。

参考:ニュースイッチ|人事制度を相対評価から絶対評価に改める企業の狙い

2.大阪市役所|相対評価を導入

大阪市役所では相対評価を導入し、上から5%・20%・60%・10%・5%と分布割合が設定されています。

昇給や勤勉手当などの領域に役職と区分によって明確な規定が設けられ、評価が曖昧にならないように工夫されています。また、ポジションが上がれば上がるほど、成果や努力が求められる仕組みが構築されている点が特徴的です。

参考:日本経済新聞|大阪府市職員に相対評価、最低ランク5% 統合本部条例案

まとめ

「相対評価」と「絶対評価」の違い、メリットやデメリットについて解説しました。

どちらか一方の評価方法のみを採用せず、自社のビジネス環境や状況などを考慮し、部署や職種などにより「相対評価」と「絶対評価」を使い分けることで、自社に適した人事評価制度を構築できるでしょう。

そして、評価制度の形骸化を防ぐためにも、時代のニーズに即した評価方法になるよう適宜見直し、再検討する取り組みを継続させていく必要があります。

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