用語集

ガラスの天井とは?現状や課題、解決に向けた対策などを解説

ガラスの天井とは社会問題のひとつで、キャリアアップを阻害する見えない障壁の存在を意味します。女性やいわゆるマイノリティに当てはまる人が、十分な能力・資質を有しているにも関わらず、ガラスの天井の存在により昇進できないケースが多いです。

本記事ではガラスの天井が存在している理由や、ガラスの天井をなくすためにとるべき対策などを紹介します。

ガラスの天井とは

ガラスの天井とは組織内で昇進できるだけの十分な力があるにも関わらず、性別や人種などの理由でキャリアアップが阻まれていることを意味します。英語では「glass ceiling」と言い、上へ昇れない状態を「見えない天井が存在している」と比喩したものです。

主に女性やマイノリティの人たちのキャリアアップが叶っていない状態に対して使用される言葉です。男女格差や差別が存在している事実を端的に表現します。

ガラスの天井という言葉がはじめて使われたのは、1978年に開催された、とあるパネルディスカッションといわれています。その後1986年に、ウォール・ストリート紙が記事内でこの言葉を使用しました。以降、ガラスの天井という表現は、世間でも浸透したといえます。

男女平等や多様性の構築には、ガラスの天井の撤廃が必要です。

参考:ガラスの天井とは?|意味・日本の男女格差・立場別の解決策を紹介

ガラスの天井は残っている?日本の現状

ガラスの天井は世界的な課題です。男女平等はかねてから目的とされていましたが、ガラスの天井という用語が浸透し始めてからは、取り組みへの積極性がますます高まっています。

日本も同様に、ガラスの天井を撤廃するための施策を実施しています。1986年には男女雇用機会均等法が施行され、1994年・2007年には改正法が施行されました。現在は性別を理由とした採用・配置・昇進などに関する差別は、直接的・間接的問わず禁止されています。

では、これらの施策の効果が実際に出ているのかどうか、ガラスの天井の存在について、日本の現状を解説します。

厚生労働省による調査結果

日本の現状を表す指標として、厚生労働省が実施した雇用均等基本調査を紹介します。女性管理職を有する企業の割合や、女性管理職割合の推移など、男女の雇用均等に関する実態をまとめた調査です。今回は令和2年度の結果を取り上げます。

企業規模が10人以上で、係長相当職以上(役員含む)の女性管理職を有する企業は61.1%でした。前年の令和元年度は59.4%のため上昇していますが、平成30年度は63.2%のため、右肩上がりとはいえない状態です。

女性役員を有する企業の割合は34.8%でした。前年度は同率、平成30年度は41.6%です。平成21年度から今回の調査までで、令和元年度・令和2年度の割合がもっとも低くなっています。

企業規模が30人以上と大きくなると結果が変わります。係長相当職以上(役員含む)の女性管理職を有する企業は70.5%でした。令和元年度は65.5%、平成30年度は70.2%です。

女性役員を有する企業の割合は30.2%です。令和元年度は28.2%、平成30年度は36.5%であり、こちらも右肩上がりとはなっていません。

管理職に占める女性の割合ですが、係長相当職以上は14.6%です。役員では20.3%となります。

参考:厚生労働省 令和2年度雇用均等基本調査

国際労働機関(ILO)が実施・公表した調査によると、世界の管理職に占める女性の割合は、2018年で27.1%でした。役員に占める女性の割合は2016年時点で各国平均が約23%、G7ではフランスがトップで37%です。一方で日本は3.4%と非常に低い数値でした。

参考:日本経済新聞「世界の女性管理職比率は27%、ILO 日本はG7最低」

管理職の定義や労働環境は国によって異なるため、一概に比較はできません。しかしそれらの要素を抜きに考えても、日本は女性管理職の割合が低いのが現実です。

ジェンダー・ギャップ指数がG7で最下位

ガラスの天井について日本と世界を比較する際は、世界経済フォーラムが公表しているジェンダー・ギャップ指数が有用です。この指数は経済・政治・教育・健康という4つの分野から成り、それぞれ0(完全不平等)から1(完全平等)の数値で表されます。

2021年の結果では、日本の総合スコアは0.656でした。156カ国中120位、G7ではもっとも低い数値です。

分野ごとのスコアは以下のとおりです。

  • 経済:0.604
  • 政治:0.061
  • 教育:0.983
  • 健康:0.973

政治分野のスコアが特に低いことがわかります。世界経済フォーラムは、日本の政治分野において以下のように指摘しました。

国会議員の女性割合が9.9%、大臣の女性割合が10%に過ぎない
過去50年にわたって行政府の長に女性がいない

過去分の指数と比較すると、スコア自体は上昇傾向です。しかし他国のスピードに追いつけておらず遅れを取っている状態のため、相対的に順位が下落しています。

参考:男女共同参画局「「共同参画」2021年5月号」

なぜガラスの天井が存在するのか

ガラスの天井の存在は疑いようのない事実です。長年課題とされ続けていますが、そもそもなぜガラスの天井が存在するのでしょうか。

考えられる大きな理由として、以下の2点があげられます。

  • 歴史的な背景・根付いた文化
  • キャリアを積める環境が整っていない

課題解決のためには、原因となる要素についても理解が必要です。それぞれ詳しく解説します。

歴史的な背景・根付いた文化

ガラスの天井が存在する原因として、歴史的な背景・根付いた文化があげられます。

第二次世界大戦までの日本には、家父長制という、一家の長である男性が家庭内での強い支配権を有する制度が浸透していました。実際にかつての民法は、家父長制に沿った傾向がありました。

また出産は女性しかできません。出産をする女性には、どうしても働けない時期が存在します。こちらも男性は外で働き女性は家庭を守る、いわゆる「男は仕事、女は家庭」という考えが根付いた理由です。

現代の法律には家父長制の考えはありません。男女の役割分担や機会も、平等にするべきという動きが強まっています。しかし長い歴史によって植え付けられた考えや慣習は、撤廃が難しいのも事実です。

男女平等の必要性が唱えられている現代でも、無意識の偏見が存在しているため、結果としてガラスの天井が残ってしまっています。

キャリアを積める環境が整っていない

女性がキャリアを積める環境が整っていないのも、ガラスの天井が存在する理由として無視できない要因です。

女性は出産をする場合、どうしても仕事から離れる時期が発生してしまいます。本来は産休・育休から復帰した女性が休暇前と同様に働ける環境が理想ですが、現実として社内体制が整っていない企業が非常に多いです。このような状態では、高い能力を有している場合でも、出産後のキャリアアップが叶わないでしょう。

社内体制が整っていないのは、コストや人手不足などが原因のケースが多いです。しかしそれだけではありません。女性はいずれ結婚・出産で仕事から離れるとの考えにより、始めから女性にキャリアアップの機会を与えない企業が存在するのも現実です。このような企業では、教育の機会や評価基準などに不公平がみられます。

女性がキャリアを積める環境が整っていなければ、結果として昇進するのは男性ばかりとなってしまいます。

ガラスの天井をなくすためには

性別などの要素に関係なく能力を活かせる環境にするには、ガラスの天井の撤廃が必要不可欠です。

ガラスの天井をなくすためにできること・やるべきことはさまざまです。なかでも優先的に取り組みたい内容として、以下の3点があげられます。

  • 意識・考え方を変える
  • 現状の把握や情報収集を行う
  • 社内制度を整備する

それぞれの内容について詳しく解説します。

意識・考え方を変える

ガラスの天井は、かつて存在した制度や古い慣習などに強く由来しています。そのため、まずは意識・考え方を変えようとする姿勢が必要です。

いくら男女平等のために行動を起こしても、意識が変わっていない状態では意欲的な取り組みが難しくなるでしょう。実際の考えが異なるのに無理やり行動を起こそうとするのは、ストレスになってしまう恐れもあります。

意識・考え方を変えるためには、以下のポイントをおさえましょう。

  • 男女平等を進めるメリットを知る
  • 現状どのような課題があるかを理解する
  • 少しずつ行動に移す・考えを変えるように意識する

意識・考え方は、短時間でいきなり変えるのは困難です。しかしガラスの天井をなくすには大切な要素のため、少しずつでも変えていきましょう。

現状の把握や情報収集を行う

ガラスの天井を取り除くには、現状の把握や情報収集も大切です。理想的な状態と現実にどれほどの差があるのか、理想を実現させるためにやるべきことは何かを明確化させる必要があります。そのため情報収集は欠かせません。

現状の把握として、公的に発表された情報は便利です。前の章で紹介した、厚生労働省による雇用均等基本調査や、世界経済フォーラムによるジェンダー・ギャップ指数などはおさえておくと良いでしょう。ガラスの天井が世界的な課題であり、あらゆる企業が取り組むべき課題だと実感できます。

広い視野での情報収集だけでなく、身近な場所の現状把握も大切です。社内にガラスの天井が存在しないか、男女平等が実現しているかを細かくチェックしましょう。

社内制度を整備する

意識を変える姿勢や情報収集などの準備が整ったら、社内制度の整備を行います。

必要性を実感できていない状態では、制度を導入しても形だけとなる恐れがあります。また現状を把握していなければ、課題解決のために必要な要素を漏らしてしまう可能性が高いです。社内の整備はなるべく早く行うべきですが、確実な成果を出すには準備が必要不可欠です。

ガラスの天井の撤廃につながる制度にはさまざまなものがあります。主な例を紹介します。

  • 産休・育休制度
    出産を経た女性が復帰後に以前と同じように働ける体制が必要です
  • テレワーク制度
    場所を問わず働ける制度があれば、育児中も仕事をしやすくなります
  • 研修・教育制度
    男女平等の大切さや、企業としてやるべきことを、社内に周知させるための制度が求められます

まとめ

ガラスの天井の存在が認識されてから年月が経ちますが、未だ撤廃できていません。とくに日本はジェンダーギャップが大きく、対策が遅れているのが現状です。

ガラスの天井の撤廃は、世界的な課題です。なぜガラスの天井が存在するのか、どのような対策をするべきなのかを認識したうえで行動する必要があります。

参考:
ガラスの天井とは?|意味・日本の男女格差・立場別の解決策を紹介
「ガラスの天井」を打ち破るために知っておきたい原因・背景・方法 | Beyond(ビヨンド)
世界の女性管理職比率は27%、ILO 日本はG7最低: 日本経済新聞
企業調査 結果概要

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