用語集

裁量労働制で自由に働ける?対象業種や導入するメリット・デメリット

本記事では裁量労働制について、対象業種や導入するメリット・デメリットなどを詳細に解説していきます。裁量労働制について知りたい方、裁量労働制を導入したい企業経営者・担当者の方はぜに一読してみてください。

裁量労働制とは

裁量労働制とは、労働者の裁量で業務の進め方・時間配分などを決められる労働契約です。別名「みなし労働時間制」とも呼ばれています。実働時間に関係なく、契約した労働時間分が給料に反映されます。

たとえば、裁量労働制で1日8時間の労働契約を結んだら、実働が4時間でも「8時間勤務した」とみなされます。反対に10時間働いても同様です。

参考:裁量労働制とは-コトバンク

残業・休日出勤・深夜労働の扱い

残業・休日出勤・深夜労働の扱いが通常と異なる場合があります。

残業

裁量労働制では残業(時間外労働)という考え方ないため、残業代も原則発生しません。契約労働時間より長く働いた分はサービス残業と考えてください。

休日出勤

裁量労働制でも休日出勤の割増賃金は発生しますし、最低週1日の法定休日が義務付けられています。

割増賃金は、法定・法定外によって計算式が異なります。

  • 法定休日:基礎賃金×1.35
  • 法定外休日:基礎賃金×1.25

深夜労働

裁量労働制においても、深夜労働は適用されます。通常の雇用形態と同様に、22時以降翌朝5時までの勤務はなら深夜労働の対象です。この場合「基礎賃金×1.5」の割増賃金の支給が義務付けられます。

裁量労働制を適用できる業務

裁量労働制を適用できる業務は限定されています。

業務・職種によって下記の2種類に分かれています。

専門業務型裁量労働制

厚生労働省による専門業務型裁量労働制の定義は下記です。

【引用】
業務の性質上、業務遂行の手段や方法、時間配分等を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務として厚生労働省令及び厚生労働省告示によって定められた業務(裏面参照)の中から、対象となる業務を労使で定め、労働者を実際にその業務に就かせた場合、労使であらかじめ定めた時間働いたものとみなす制度です。

https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/roudou/gyousei/kantoku/dl/040324-9a.pdf(1P)

対象の業務は下記の19種類です。

  • 新商品・新技術の研究開発、または人文科学・自然科学
  • 情報処理システムの分析・設計
  • 新聞・出版事業における取材・編集
  • デザイ
  • 放送番組、映画等の制作事業における、プロデューサーまたはディレクター
  • コピーライター
  • システムコンサルタント
  • インテリアコーディネーター
  • ゲーム用ソフトウェアの創作
  • 証券アナリスト
  • 金融商品の開発
  • 弁護士
  • 弁理士
  • 税理士
  • 中小企業診断士
  • 大学での教授研究
  • 公認会計士
  • 建築士
  • 不動産鑑定士

企画業務型裁量労働制

厚生労働省による企画業務型裁量労働制の定義は下記です。

【引用】
企画業務型裁量労働制とは、それぞれに労働基準法で認められる、「事業場」の「業務」に「労働者」を就かせたときに、その事業場に設置された労使委員会で決議した時間を労働したものとみなすことができる制度です。

https://jsite.mhlw.go.jp/tokyo-roudoukyoku/library/tokyo-roudoukyoku/jikanka/201221613571.pdf(2P)

労働基準法において、「事業場」「業務」「労働者」は下記の通り定義されています。

事業場

事業所とは、対象業務が存在する場合で、下記に該当する事業場を指します。

  1. 本社・本店であること
  2. 当該事業場の属する企業等に係る事業の運営に大きな影響を及ぼす決定が行われる事業場であること
  3. 本社・本店である事業場の具体的な指示を受けることなく、独自に事業の運営に大きな影響を及ぼす事業計画や営業計画の決定を行っている支社・支店等であること

業務

労働基準法における業務とは、下記の事項に当てはまる業務になります。

  • 事業の運営に関する事項(対象事業場の属する企業・対象事業場に係る事業の運営に影響を及ぼす事項)についての業務であること
  • 企画、立案、調査および分析の業務(企画、立案、調査および分析など、相互に関連し合う作業を組み合わせて行うことを内容する業務であって、部署が所掌する業務でなく、個々の労働者が担当する業務)であること
  • 当該業務の性質上、これを適切に遂行するは、その方法を大幅に労働者の裁量にゆだねる必要がある業務であること
  • 当該業務の遂行の手段、および時間配分の決定等に関して、使用者が具体的な指示をしないこととする業務であること

労働者

労働者の定義は、労働基準法において下記の通り規定されています。

  • 対象業務を適切に遂行するための知識、経験等を有する労働者
  • 対象業務に常態として従事している者

参考:「企画業務型裁量労働制」の適正な導入のために

裁量労働制と他の労働制度の相違点

裁量労働制と混同しやすい制度として、下記の4つが挙げられます。

フレックスタイム制度

「コアタイム」と呼ばれる勤務時間に合わせて、従業員が始業・終業時間を自由に決められる勤務制度です。たとえば、コアタイムが11:00~16:00の会社なら、従業員は11時にまでに始業し、16時以降であれば自由に終業できます。

ただし、所定労働時間は満たさなければなりませんし、時間外労働手当は発生します。

高度プロフェッショナル制度

「特定高度専門業務(一定の年収要件を満たし、職務の範囲が明確で高度な職業能力を有する労働者)」が対象の新しい働き方です。

労働時間で給料を規定せず、成果物(獲得利益・研究成果など)に対して給料を設定します。

  • 金融商品の開発・ディーリング
  • 企業・市場分析などのアナリスト
  • コンサルタント
  • 研究開発

上記業務の性質は「高度の専門的知識等を要する」「業務に従事した時間との関連性が弱い」の2点です。「書面による合意に基づく職務の範囲内で労働するもの」「平均給与額の3倍を相当程度上回る人」が対象です。

高度プロフェッショナル制度には「労働基準法」が適用されないので、深夜労働・休日出勤でも給料は変わりません。あくまで成果物に対する賃金なので、費やした時間は加味されません。労働時間を基準にして賃金を規定する働き方とは一線を画しています。

みなし残業制度

残業の有無に関わらず、契約に規定された残業時間分働いたとみなして残業代を支払う制度です。残業時間が0でも残業代は支給されますし、超過分は支払いに上乗せされます。しかし超過分の支払いを拒否したり、サービス残業を強いる悪質な企業も存在します。みなし残業制度の企業に就職する場合は、事前に労働環境に関する口コミ・評価などを確認しておきましょう。

事業場外みなし労働時間制

事業場外みなし労働時間制とは、会社以外での稼働も労働時間としてカウントする制度でし。例えば営業の外回りも、労働時間にカウントされることになります。

この制度の場合、従業員ごとの事業場外労働の時間を正確に把握するのは難しいため、「みなし労働時間」が設定されます。実際の労働時間に関わらず、みなし労働時間を設定する点は裁量労働制と同じです。しかし、

  • 対象職種に制限がない
  • 使用者が指揮監督できない業務が対象
  • 時間外労働、深夜労働、休日出勤に対して、割増賃金が支払われる

上記3点が事業場外みなし労働時間制の特徴です。

裁量労働制の導入メリット

裁量労働制を導入するメリットを説明します。

会社側のメリット①:人件費の目途を立てやすい

裁量労働制では残業代が発生しないため、一度労働契約を結べば人件費の総額を簡単に算出できます。予め負担額が分かれば、事業計画も立てやすくなります。

会社側のメリット②:労務管理の負担を減らせる

残業代算出や労働時間管理は原則不要なので、労務管理部門の負担軽減ができます。休日出勤・深夜労働などの特別な場合を除き、固定給で給料計算を処理できる点は大きなメリットです。

会社側のメリット③:生産性向上により人件費を削減できる

裁量労働制にすれば、勤務時間という枠にとらわれません。業務に対して人件費を支払う形式ですので、無駄な人件費を削減できます。生産性向上により人件費を削減できるのです。

従業員側のメリット①:勤務時間を短縮できる

担当業務さえ完了すれば、労働契約時間に満たなくても退勤可能です。効率的な人にとって、裁量労働制は非常に相性のよい勤務体系といえます。

従業員側のメリット②:ペースを調整して働ける

裁量労働制では、上司の指示で業務を進めることは原則ありません。労働者自身のペース・やり方で仕事ができます。集中する日・少し休む日など、ペース調整も自由にできます。雇われの身ではありますが、心情的には個人事業主に近い感覚です。

裁量労働制を導入するデメリット

裁量労働制を導入する際は、メリットのみならずデメリットも生じてきます。

会社側のデメリット①:導入に際して手続きがある

裁量労働制を導入には手続きが必要です。

  1. 労使委員会を設置する(労働者を代表する委員、使用者を代表とする委員で構成)
  2. 労使委員会の運営ルールを規定する

労使委員会では下記項目を決議します。

  • 裁量労働制を適用する具体的な業務範囲
  • みなし労働時間
  • 健康・福祉を確保するための施策
  • 苦情処理のための施策  など

また、労使委員会の決議内容は、所定の様式に従って所轄の労働基準監督署へ提出が必要です。裁量労働制を導入する際は、計画的に準備を進めましょう。

会社側のデメリット②:意図した文化醸成がしにくい

従業員がそれぞれ自由に業務に取り組むため、組織全体として同じ方向性で業務を進めることが難しいです。企業文化を固めるには、裁量労働制は適しにくいと言えます。

従業員側のデメリット①:長時間労働が常態化する

裁量労働制、進行具合によって早く仕事を切り上げることができますが、反対に完了しないと終えられません。長時間労働が常態化し、健康を害するケースあります。

参考:裁量労働制の対象拡大も 厚労省が新たな調査結果公表

2018年1月、当時の安倍晋三首相は裁量労働制について、「裁量労働制で働く人のほうが労働時間が短いというデータもある」と答弁しましたが、実際には厚生労働省の「2013年度労働時間等総合実態調査」のデータに不備がありました。

参考:【図解・行政】厚労省データの問題点(2018年2月)

従業員側のデメリット②:残業代が支給されない

基本的に、休日や深夜手当以外の残業代は支給されません。給料に反映されるのは労働契約に記載された金額のみです。労働時間の対価が少ないと感じる従業員もいるでしょう。

従業員側のデメリット③:不法に利用する企業も存在する

人件費削減のために裁量労働制を悪用する会社もあります。対象外の業務や裁量のない人にまでに適応させることは違法です。

従業員側のデメリット④:高い自己管理能力が求められる

業務の進捗を適切に管理しないと、指定された期間内に業務を終えられない可能性があります。従業員一人ひとりが自己管理に対して高い意識を持たねばなりません。

まとめ

裁量労働制は、従業員が自由に勤務時間・仕事の進め方を決められる労働体系です

導入には、決められた手続きを踏まなければなりません。

また、企業・従業員にとってメリットもデメリットもあるため紙一重の制度です。

正しく理解し、適切に利用しましょう。

ABOUT ME
ミキワメラボ編集部
ミキワメラボでは、適性検査、人事、採用、評価、労務などに関する情報を発信しています。

活躍する人材をひと目でミキワメ

ミキワメは、候補者が活躍できる人材かどうかを500円で見極める適性検査です。

社員分析もできる30日間無料トライアルを実施中。まずお気軽にお問い合わせください。