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360度評価のメリット・デメリットとは?導入のポイントや成功事例を学んで効果的に運用しよう

360度評価とは、「一人の従業員に対して上司や同僚、部下などさまざまな関係者が評価する手法」です。

上司のみが行う従来の人事評価に比べ、評価の客観性が高まるため、従業員が「自らの改善点に気付ける」「評価に納得できる」などのメリットがある手法として、近年導入する企業が増えています。

しかし、導入メリットが大きい反面、評価者が評価項目を正しく理解していないと評価の一貫性が失われるなど、デメリットがあることも事実です。
そこで本記事では、360度評価を効果的に運用できるように、メリットやデメリット、導入のポイントや成功事例をわかりやすく解説していきます。

360度評価とは?

360度評価とは、複数の関係者が対象従業員を評価する手法です。360度サーベイや多面評価とも呼ばれています

これまでの人事評価は、上司から部下に対して「1対1」で評価することが一般的でした。
一方、360度評価では複数関係者が多面的に評価します。客観的かつ公平な評価を得られやすいことから、評価対象者がより納得できる手法として注目されています。

参考:ITトレンド|360度評価とは?評価項目や参考例、メリット・デメリットを紹介!

360度評価の目的とは?

360度評価の主な目的は、人材育成、適切な評価、従業員エンゲージメントの向上の3つです。

360度評価では、同僚や部下の視点が加わるため、上司だけでは気付けなかったことを評価対象者にフィードバック可能です。多角的なフィードバックを受けられるため、従業員は強みや弱み、改善点や自身の特性などに気付けます

また、上司以外に複数の視点が加わることで、評価内容の客観性と公平性が高まります。従業員は適切に評価されている実感が得られるため、企業への信頼感や安心感が強化され、従業員エンゲージメントの向上が期待できるでしょう。

参考:engage採用ガイド|360度評価とは?目的は人事評価だけじゃない!

360度評価の導入企業が増加する背景とは?

近年、360度評価を導入する企業が増加しています。導入率の推移を見ると、労政時報の調査では2007年に5.2%、2018年に11.8%、リクルートマネジメントソリューションズの調査では2020年に31.4%と約10年で全体の3割を超えるまでに増加しています。

導入企業が増加する背景として、「働き方の多様化」「ビジネス環境の変化」の2点が挙げられます。
一点ずつ詳しくみていきましょう。

参考:PR TIMES|【調査発表】6月から施行される「パワハラ防止法」、企業対応の一助となる「360度評価」中央省庁を始めとし、導入企業が増加!360度評価活用における実態調査 結果を発表

背景1.働き方の多様化

働き方改革、テレワークの浸透、職場のフリーアドレス化といった働き方の多様化により、人事や上司などの評価者が評価対象者(部下)と顔を合わせて仕事する機会が減りました。

そのため、就労状況や仕事のプロセスを適切に評価する新たな手法を求める企業が増加し、効果的な評価手法として360度評価を採用する企業が増えていきました。

背景2.ビジネス環境の変化

年功序列から成果主義への移行、人材流動の活性化といったように、ビジネス環境はここ数年で著しく変化しています。そのため、勤続年数をベースとした従来の評価法は現状にマッチしなくなってきました。

その変化に伴い、周囲のあらゆる視点から評価を集めて適切にフィードバックする手法として、360度評価が注目されるようになりました。
また、客観的な評価から得られる強みや弱みは、従業員の成長を促す材料になります。個人の総合力を高め、変化に耐えうる人材を育成したいという企業の考えから、360度評価は徐々に浸透してきています。

360度評価のメリット

ここからは、360度評価の導入が企業にもたらすメリットを紹介します。

参考:HR pro|「360度評価」とは? 人事が知っておきたいデメリットや評価項目、評価方法などを解説

メリット1.評価の客観性が得られる

360度評価では、一人の従業員に対して複数の関係者が評価します。そのため、上司1人だけでは見逃してしまう強みや弱み、改善点や特性などが浮き彫りになり、より客観的かつ公平な評価が可能です。

メリット2.評価の納得度が高まる

360度評価を活用すると、複数の視点から多面的にフィードバックを受けられるため、評価される側の納得感が高まります

上司1人による従来の評価法では、「私情で評価されているのでは?」「好き嫌いが影響しているはずだ」などと社員が評価結果に納得できないケースがみられました。評価に納得のいかない社員が会社自体へ不満を募らせることもあり、そうなると作業効率は著しく低下してしまうでしょう。

客観性と公平性の高い360度評価なら、評価を正当なものと受け止めやすいため、社員のモチベーション低下リスクを最小限に留められます。

メリット3.改善点や行動特性を知るきっかけになる

360度評価は、業務関係者から評価を受けるだけでなく、評価される側も自分自身の評価を行ないます。そのため、自己評価と他者評価の差が明らかになり、自分では気付けなかった改善点や行動特性、強みや弱みを知ることが可能です

また、360度評価の結果から自分の新たな一面を知ることで、「改善すべき点が他にあるか?」「作業方法を見直してみよう」などと自発的に考える習慣も育まれます。

メリット4.規範意識が強化できる

これまでの評価方法では、上司を意識して行動すれば一定の評価を得られたため、同僚や後輩との関係を重視しない人もいました。ただ、それではストレスの多い仕事環境になりやすく、組織やチームのパフォーマンスも十分に発揮されない問題が生じます。

360度評価では、同僚から同僚、部下から上司などあらゆる方向から評価します。そのため、自分自身が他者に果たすべき責任と役割を意識して行動するようになります

メリット5.組織内のコミュニケーションを活性化できる

コミュニケーション不足が原因で、メンバー間の雰囲気の悪化、生産性の低下や情報連携の不足に悩む組織は少なくありません。

360度評価の実施後、面談やフィードバックの機会を設けることで、社員間のコミュニケーション活性化が期待できるでしょう

360度評価のデメリット

ここまで紹介してきたように、360度評価には数多くのメリットがありますが、一方で気をつけないとならないデメリットも存在します。

ここからは、360度評価の導入前に覚えておきたいデメリットを3つ紹介していきます。

デメリット1.評価の一貫性が失われる

360度評価では、評価に慣れていない社員が上司や同僚を評価する可能性があります。そのため、評価項目やポイントを十分に理解していないと、評価の一貫性が失われるリスクを抱えてしまいます

一貫性を保つために、360度評価導入前の説明会や評価者への研修会などを実施し、社員同士の評価軸を固めておくといいでしょう。

デメリット2.評価が実態と乖離する

従業員同士による評価は、馴れ合いや好き嫌い、双方の関係性を意識しやすいというデメリットがあります。

仲が良いからと評価対象に遠慮をしたり、良い評価をしてもらうために相手を甘く評価したりするなど、実態と乖離した評価が下される可能性もあります。現状にマッチしない評価を与えても、組織にはメリットがありません。

対策としては、評価を匿名で実施する、人事部が評価者を選定するといったような工夫を施すことが挙げられるでしょう。

デメリット3.工数や労力が必要である

360度評価を実施すれば、全従業員が評価者と被評価者になるため、評価プロセスに要する工数と時間、労力が著しく増加します。また、データ集計や分析、管理などの部門担当者には大きな負担がかかるでしょう。

本来の業務に影響を及ぼす可能性がある場合は、対策として360度評価の支援ツール活用を検討してみましょう。

360度評価の評価項目とは?

管理職(マネージャー)と一般社員では求められる役割や行動が異なるため、360度評価の評価項目にも違いを設けて運用することが一般的です。

評価項目に対する理解が不十分だと、せっかく新しい評価手法を導入しても効果が表れません。理解を深めるためにも、管理職と一般社員の評価項目例を確認していきましょう。

参考:ITトレンド|360度評価とは?評価項目や参考例、メリット・デメリットを紹介!

360度評価における管理職の評価項目例

管理職(マネージャー)は、マネジメントに関する評価項目を中心にします。

□リーダーシップ
・チームの中長期的なビジョンを持ち、メンバー間に共有しているか
・組織、社会、顧客など双方に利益をもたらすために先頭で行動しているか
□部下やメンバーの育成
・部下やメンバーへの適切なゴール設定・説明・支援を提供しているか
・部下やメンバーの行動や結果に対して、公正な評価とフィードバックをしているか
□組織作り
・チームメンバー全員が目標に向かって取り組み、結果を出せる組織を作れているか
・組織やチーム内の連携を改善するためのコミュニケーションの場を設けているか
□自己啓発
・チームリーダーとして自ら成長し続ける努力をしているか
・チームメンバーの見本や規範となる知識や技術を保有しているか

360度評価における一般社員の評価項目例

管理職に比べて、一般社員は職務上のスキルやメンタル面、取り組む姿勢などが評価の中心です。

□業務遂行力
・業務を遂行するうえで、課題を解決するまでの作業工程を把握し、最後まで実行しているか
・自分本位ではなく、組織、社会、顧客への利益を意識して行動しているか
□主体性
・指示待ちではなく、自ら思考して判断や行動をしているか
・仕事上の困難を環境や他人に責任転嫁せず、自分の課題として捉えているか
□不確実なことに対する解決力
・不測の事態や困難に対して解決策や最善策を考えて行動しているか
・現状維持にならず、常に変化を心がけて行動しているか
□協調性
・困っているチームメンバーへ自主的に手を差し伸べているか
・チームや組織改善のために、意思疎通やフィードバックを適切に提供できているか

360度評価で失敗しないために!効果的な導入のポイント

360度評価を導入する企業が増えたことは事実ですが、「現場からの反発があるかもしれない」「現行制度よりも評価精度が落ちるのでは」と二の足を踏む企業も少なくありません。

そこでここからは、360度評価を失敗させないために、導入する際に押さえておきたいポイントを3点紹介します。

参考:RELO総務人事タイムズ|360度評価のメリット・デメリット│効果的に運用する方法とは?

ポイント1.360度評価導入の目的を明確にする

目的を明確にしなければ、「昇進・昇格の判断材料となるのか」「低い評価を付けたらキャリアに響くのではないか」と社員から懐疑的・否定的に受け取られかねません。

そのため、「本人の職務適性を見るため」「積極的にコミュニケーションの場を設けるため」など導入の目的を明確にし、周知しましょう。人事評価研修や導入時説明会などの場を設け、社員間の評価軸のズレを無くす工夫が重要です。

ポイント2.360度評価の研修を行う

360度評価では、管理職だけではなく一般社員も評価者として他者を評価します。そのため、社員のなかには評価基準の理解不足や評価能力不足、または評価に不慣れな者も存在するでしょう。

客観的かつ公平な評価を行うためにも、研修や説明会の実施は必須です。研修や説明会で「導入の目的」「評価基準」などを丁寧に伝えることで、従業員からの理解を得やすくなります。

ポイント3.丁寧にフォローする

360度評価には、人材育成、適切な評価、従業員エンゲージメントの向上といった効果があります。

効果を最大限発揮するためにも、評価をしたら終わりではなく、PDCAサイクルのように次回につながるようなフィードバックやフォローを実施していきましょう

360度評価の成功事例を紹介

最後に、360度評価を導入して成功した企業事例を2つ紹介します。

企業事例1.クレディセゾン

信販会社大手のクレディセゾンでは、360度評価制度として「夢中力アセスメントプログラム」を導入し人材育成に役立てています。

人事評価には反映せず、「自己をどのように成長させるか」にフォーカスして、自主的な目標設定や自己分析を促しています

参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構|事例報告②「クレディセゾンの多様な社員活用の取り組み」

企業事例2.アサヒビール

アサヒビールは360度評価制度として「360度フィードバック」を導入し、管理職育成を進めています。

評価対象はチームリーダー以上の役職に絞られ、自己評価と他者(上司・同僚・部下)評価のギャップから、本人の気付きを促すことを目的としています。

参考:内閣官房|管理職のマネジメント能力に関する懇談会報告書

まとめ

従来の人事評価に比べて、客観的かつ公平な評価を得られる評価法として注目を集めているのが、360度評価です。上司が見落としがちな、強みや弱み、改善点などを補完できるだけでなく、社員の人材育成にも効果があることから、多くの企業で導入が進んでいます。

ただし、従業員の理解が得られないまま運用を続けると、評価の一貫性が失われ、有効に機能しない可能性があります。そのため、360度評価導入の際には、研修やフィードバックを適切に実施し、継続的なフォローを通じて社員へ理解を促す必要があるでしょう。

本記事が皆さんのお役に立てば幸いです。

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