新卒採用

新卒採用の歩留まり改善戦略

こんにちは。株式会社リーディングマークの奥田と申します。

現在は採用支援事業の事業企画担当をしております。これまで法人営業として、コンサル、最大手メーカー、インフラ、スタートアップ等の企業様への採用支援や、学生に対する企画・マーケティングを担当してきました。また、社内の新卒・中途採用チームで、プロジェクトオーナーや現場のリクルーターを務めてきました。

今回は、

  • 選考中離脱率や辞退率を下げるにはどうすればいいか?
  • フォローを手厚くする以外に、過度に工数をかけずに改善する方法はあるのか?

という問いに答えていきます。

選考中辞退率やプレエントリーからエントリーへの転換率を高めるために、「フォローを手厚くする」という打ち手がとられることが多いかと思います。

しかし、人事の皆さまの工数(業務時間)も限られる中で、現実的に難しいことも多いでしょう。

この記事では、採用ターゲットの「ペルソナ」にこだわることが、工数を大幅にかけることなく歩留まりを改善する鍵である、という点について解説します。

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1.改善すべき採用の歩留まりとは何か

歩留まりについて議論する前に、まずは採用フローを整理しましょう。

※企業によってフローは異なりますが、単純化・一般化して表現しています。

採用フローを、学生の目線で見てみます。

学生は、まず企業の存在や求人情報を「認知」します。さらに興味を持ったら、「プレエントリー」や「エントリー」に続きます。そして「ES通過」、「面接参加」と「面接通過」などの段階を経て、最終的に「内定」を獲得します。その後、学生は「内定承諾」をして「入社」することになります。

企業は、上記の各採用フローに該当する学生の「数」や、あるプロセスから次のプロセスへの「歩留まり」をコントロールすることで、採用目標の達成を図ります。

2種類の歩留まり

採用フローにおける歩留まりには2種類あります。

  1. 学生の意志によって決まる歩留まり
    • (例)
    • プレエントリー後に本選考にエントリーする/しない
    • 1次面接に通過した後に、2次面接に参加する/しない
    • 内定をもらった後に承諾する/しない など
  1. ②企業の意思によって決まる歩留まり
    • (例)
    • 本選考エントリー(ES提出)された後に合格にする/しない
    • 面接に参加した学生を通過させる/通過させない
    • 内定を出す/出さない

本稿では、上記のうち「学生の意志によって決まる歩留まり」について議論します。以下の章では、その歩留まりがどのように決まるのか、影響する要素は何か、という点を解説します。

2.採用とはマーケティングである

学生がエントリーすること、次の面接に参加すること、内定を承諾することは、一般のビジネスにおける「消費者が商品を買う」という行為になぞらえることができます。

消費者が商品を選択して購入するのと同じように、学生は企業を選択し機会費用を払って選考に参加したり、内定承諾します。その際の消費者と学生の行動原理は同じです。

「消費者の商品購入を促す施策」が「マーケティング」です。

よって、「学生が企業を買う」行為ともいえるエントリーや内定承諾を促す施策を考える上で、マーケティングの考え方が大いに参考になります。

商品の購入を決める要素ー認知度・配荷率・選好度ー

P&G出身の森岡毅氏と今西聖貴氏によって書かれた『確率思考の戦略論』(※)において、マーケティング戦略の考え方が紹介されています。この本では、消費者が商品を購入するかどうかに与える変数として以下3つの指標が重要であるとされています。

Preference(選好度) その商品に便益を感じるか?買いたいと思うか?

Awareness(認知率) そもそも知っているか?

Distribution(配荷率) 買おうと思えば買えるか?

※出典:『確率思考の戦略論 USJでも実証された数学マーケティングの力 (角川書店単行本)

Preference(選好度)

消費者が商品やサービスに対してどの程度好意的な評価をしているかを示す指標

この選好度は、商品の特徴や価格、ブランドイメージなどによって左右されます。マーケティング戦略を立てる際には、消費者の選好度を高める方法を考える必要があります。

Awareness(認知率)

消費者が商品やサービスを認知しているかどうかを示す指標

仮に知りさえすればその消費者がその商品を購入したくなるとしても、消費者が商品やサービスを知らなければ、購入の機会が生まれません。したがって、マーケティング戦略を立てる際には、消費者の認知率を高める方法を考える必要があります。

Distribution(配荷率)

商品やサービスを消費者が買おうと思えば買える状態なのかを示す指標

商品やサービスを適切な場所やタイミングで提供することができれば、その商品を購入したい消費者に購入させやすくなります。一方で、購入したくても店にその商品が陳列されていなければ購入することができません。マーケティング戦略を立てる際には、消費者が商品やサービスを手軽に入手できるような配荷率を高める仕組み(物理的制約を下げる仕組み)を考える必要があります。

採用における選好度・認知率・配荷率の考え方

上記の選好度・認知率・配荷率の概念はマーケティングだけではなく、採用戦略を考える際にも重要です。

Preference(選好度)≒ 志望度(※)

学生がその企業そのものや職種、インターン等に魅力を感じるのか
※以下採用についての文脈では”志望度”と表記

Awareness(認知率)

学生がその企業やインターンなどを認知しているのか

Distribution(配荷率)

学生がエントリーや選好に参加しようと思えばストレスなくできるのか、それを阻む障壁はないのか

そもそも商品が消費者にとって魅力的でなければ消費者に買いたいと思わせることはできません。その意味では、選好度が消費者が商品を買う本質的要因であると言えます。一方で、知りさえすればその商品を買いたいと思うとしても、そもそも認知しなければ買おうと思うことはありません。認知し、買いたいと思ったとしても、その店で商品が手に入らなければ購入することはできません。

購入の制約を最小限に抑えるという意味で、認知率や配荷率を上げる必要があるのです。

同様に、学生がエントリーするかどうか、承諾するかどうかの可能性の上限を決めるのが“志望度”です。

ただし、知りさえすればエントリーしたい!と思ってくれたはずの学生でも、そもそもインターンが開催されることを知らなければエントリーしたいと思ってくれることはありません。

あるいは、次の選考に進みたいと思っていた学生でも、

「面接に申し込みたいけれどすでに予約枠が埋まっていた」

など、物理的に次の選考に進むことができなければ、離脱されてしまいます。

そのような理由でエントリーや次回選考参加を辞めてしまわないように、認知率・配荷率を高めることも必要です。

3.学生のペルソナにこだわれ!

上記で述べたように認知率や配荷率の改善も必要ですが、そもそもエントリーするかどうか、内定承諾するかどうかの可能性の上限を決めるのは選好度(≒志望度)です。

よく企業の人事の皆さまとお話ししていると、歩留まりが低い原因を考える際、「プレエントリーしている学生(選考参加した学生、内定だしした学生)が十分に自社のことを理解していなかったのが原因ではないか?」という仮説がとられることが多いです。その仮説のもと、「理解が浅いのが原因であれば理解を深めるためのフォローを増やそう」という施策がとられがちです。フォローとは、例えば、学生がその企業のことをより深く理解できるような各種イベントを多く設ける、とにかく多くの学生と面談を行うなどです。

それも有効な施策ではありますが、人事の皆さまの工数(業務時間)が有限であることを加味すると、改善余地にも限界があります。

「手厚いフォロー」以外に、「学生のペルソナを明確に定義すること」が重要である、ということを以下解説します。つまり、「どんな志向性・価値観・性格」の学生が、そもそも自社を選んでくれやすいのか(=ペルソナ)を定義すること。その上で、プレエントリーしている学生のうち、そのようなペルソナの学生が占める割合を増やすことが重要である、ということを議論したいと思います。

志望度(選好度)は何によって決まるのか

志望度は、学生と企業の特性の組み合わせで決まります。

自社のことを100%理解したとして、志望してくれる学生もいれば、志望してくれない学生もいます。

極端な例ですが、成果報酬が高く、実力主義の風潮がある企業は、「とにかく稼ぎたい!」「会社の中で1番になりたい」と考えている学生にとっては魅力的かもしれません。一方で、安定志向でアットホームな雰囲気を求める学生にとっては、それほど魅力的ではないかでしょう。そのような学生に、いかに自社がフラットで成果主義なのかを手厚く伝えても、志望度を高めることは難しいのです。

他の例として、あるインフラ系企業の場合を考えます。とりあえず滑り止めて、と考えてある学生がエントリーしていたとします。その学生は個人の繊細な思いに応える仕事がしたい、という志向性をもっていたとしましょう。そのような学生に、自社がいかにダイナミックな事業によって社会を支えているかを丁寧に説明したとしても、振り向かせることは難しいでしょう。

このように、「企業が魅力的に感じられるか」「志望度を持たれるか」は、相手がどんな学生かによって大きく変わります。言い換えれば、自社にペルソナが合致していない学生に対してフォローを実施しても、暖簾に腕押し、になりかねません。

例えば、ある企業において、5000名プレエントリーを獲得できているものの1000名しかエントリーしてくれていないという状態だったとしましょう。この歩留まりを改善し、より多くのエントリー獲得を試みるとします。その5000名のうち、自社を知れば志望してくれるペルソナの学生が1200名程度しかいないとすれば、1000名から大きくエントリーの数を増やすことはそもそも難しいのです。

つまり、歩留まりを上げるためには、そもそもプレエントリーや選考通過、内定だしの各段階に適切なペルソナの学生が十分含まれている必要がある、ということです。

学生のペルソナは何で決まるのか

自社に適した学生のペルソナを見極めるために、ペルソナを設定する二つの視点を紹介します。

「企業→学生」

いわゆる「求める人物像」や採用要件として表現されることが多いです。

例えば、能力・人物像・専攻・語学力です。

こちらは企業の意思決定によって決まる歩留まり(ES合格、面接通過、内定だし等)に影響しやすい要素です。

「学生→企業」

「どのような学生であれば自社を選んでくれるのか」という視点です。

例えば、志向性・価値観・性格等です。

ES提出するか、次の面接に参加するのか、内定承諾するのかなど学生の意思決定によって決まる歩留まりに影響しやすい要素です。

本稿で議論している歩留まりを改善する上で特に注目すべきは、後者の「学生→企業」視点で定義するペルソナです。

志向性や価値観、性格などが自社の特性とマッチしていることが、「志望度」を高めることに直結します。例えば、先の例で挙げたインフラ系企業の場合は、「ダイナミズムに憧れを感じる学生」であれば、そうではない学生(例、繊細に個人に寄り添った仕事がしたい学生)に比べて、少ない面談数でも十分志望してもらうことが可能でしょう。

一方で、ペルソナ設定において、どうしても「企業→学生」の視点、「どんな学生が欲しいのか」という企業側視点だけに意識が向いてしまうことが多いように思います。

ビジネスにおいて「自社の商品は、どんな顧客に対してであれば一番役に立てるのか(買ってくれるのか)?」という視点はごく自然です。

採用においても同様に、「自社はどんな学生にとって最も魅力的なのか?」という顧客(=学生)視点を徹底することが重要です。

ペルソナを定義したうえで実施すべきこと

ペルソナを定義したら、2つの方法により、ペルソナに合致した学生のプレエントリー等を増やすことができます。

それは、

  1. 定義したペルソナに最もアプローチしやすい施策にプロモーション投資を集中させること
  2. 万人受けしなくてもいいから、定義したペルソナにこそ刺さる尖ったブランド訴求を行うこと

です。

詳細は割愛しますが、ペルソナを定義することで、どのような場所でどのような活動をしている学生にアプローチすればいいのか、など狙うべき学生像をさらに具体化できます。具体化することで、合同企業説明会に出ればいいのか、オンライン広告を打てばいいのか、など効果的なプロモーションの経路を選定しやすくなります。

また、ペルソナを定義することで、自社が打ち出すべきブランドを検討しやすくなります。ブランディングとは、学生が自社を選ぶべき理由づくりのことです。ペルソナが明確でないと、どんな企業にも当てはまりそうな万人受けしそうなブランド訴求をしてしまいがちです。しかし、万人受けしそうなブランド訴求は、誰にとっても中途半端なものになってしまいます。中途半端なブランドでは、真に自社とペルソナにあった学生がプレエントリーしてくれない可能性もあります。ペルソナを定義し尖ったブランド訴求をすることで、そのブランドに興味を持つ学生、すなわち自社のペルソナに合った学生がプレエントリーしてくれやすくなります。

そのようにして、プレエントリーしている学生のうち、自社のペルソナにあった学生の割合を増やすことができるのです。

具体的事例や詳細は、稿を改めて解説したいと思います。

ここまで述べたことをまとめます。

  • 志望度は、そもそも自社がどんな企業かに加え、その学生がどんな学生かの掛け算で決まる
  • 「自社が欲しい学生」に加え、「どのような学生であれば自社を選んでくれるのか」という視点で学生のペルソナを定義すること

    によって
  • 定義したペルソナに最もアプローチしやすい施策にプロモーション投資を集中させること
  • 万人受けしなくてもいいから、定義したペルソナにこそ刺さる尖ったブランド訴求を行うこと

    が可能となり、
  • それらによって、プレエントリー等における自社に合ったペルソナの学生の数・割合を増やることができる
  • 自社にペルソナ合致した学生の割合が増えると、志望度の高い学生も増えるので各種採用歩留まりを改善することができる

4.採用フローにおけるよくある離脱要因

最後に、付録として、採用フローの各局面における離脱要因の具体例を記載します。

プレエントリーからエントリーでよくある離脱要因

選好度(志望度) ※学生のペルソナがあっている前提

  • 企業の概要的な情報とブランドイメージに依存して決まることが多い(企業説明で得た情報や口コミ情報)

認知率

  • 学生はプレエントリーしている自覚があるか
  • そもそもその企業を認知しているか
    (様々なサービスを通じ知らずにプレエントリーしていたという学生もいます)
  • 本選考募集が開始していることを認知しているか
  • エントリー締切を認知しているか

配荷率

  • エントリーするページは見つけやすいか
  • エントリーフォームはエラーになっていないか
  • ESの内容が重すぎないか
  • エントリーできる期間が短すぎないか

面接通過から次回面接参加でよくある離脱要因

選好度(志望度) ※学生のペルソナがあっている前提

  • 面接を受ける中での社員の雰囲気との相性や面接と面接の間でのオペレーションの丁寧さが影響を与える

認知率

  • 合格連絡が来ていることを認知しているか
  • どうやって次回面接を設定すればいいか認知しているか

配荷率

  • 選考後、迅速に合格連絡/次回案内をしているか
  • 面接予約の枠は十分に用意できているか(1カ月先しか面接予約できない、等の状態になっていないか)
  • 移動やそのための交通費が発生するなど時間的・金銭的負担が過度に大きくないか

内定出しから内定辞退で良くある離脱要因

選好度(志望度)

  • 企業のブランドイメージに加え、社員との関係性などによる安心感、心地よさ、フィット感など右脳的要素も影響を与える

認知率・配荷率

  • 内定したという事実を認知しているか
  • 内定承諾する方法を明確に伝えているか
  • 内定承諾の期限を明確に伝えているか
  • 内定承諾の連絡をしやすい状態になっているか
    (承諾の連絡をしたくてもメールや電話がつながらない、など)

5.アクションまとめ

選考中離脱率や辞退率といった各種の歩留まりを改善するためには、認知率・配荷率を高めることも重要です。まずは、認知率・配荷率という点で、もったいない見落としがないかチェックしましょう。

併せて、自社の志望度の高い学生を増やすことが本質的に重要です。「現在プレエントリーしている学生のうち、自社に合ったペルソナの学生がどの程度含まれているか」を自問してみてください。そのために、「自社はどんな学生にとって最も魅力的なのか?」というペルソナを定義しましょう。自社に合ったペルソナの学生を見極めるには、今現在自社を一番だと思って選んでくれる学生や社員に目を向けるとよいです。「どのような学生・社員が自社を最も魅力的に感じてくれているのか?」「それはなぜか?」を追究しましょう。

一方で、「自社を選んでくれやすい学生」かつ「自社が求める学生」のペルソナを定義したり、そういった学生を増やすことは「言うは易く行うは難し」です。

特に採用数が多い企業様、様々な事業をやっていて多種多様な社員様がいらっしゃる会社などはなおさらかと思います。

ミキワメでは、「自社に合ったペルソナの定義・発見」、「自社に合致したペルソナの学生の母集団を増やす」等を実現する各種施策をご用意しています。

(定量・定性による市場調査、性格情報に基づいてペルソナを定義、ペルソナに合致した学生だけを狙って増やす施策等)

お力になれることがございましたら、お気軽にお問合せください。

お問合せページ:https://www.recme.jp/for-company/

ABOUT ME
奥田 祐己
東京大学法学部卒。法人営業として、コンサル、最大手メーカー、インフラ企業、スタートアップ等の企業様への採用支援や、学生に対する企画・マーケティング担当、社内の新卒・中途採用チームで、プロジェクトオーナーや現場のリクルーターを歴任。

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