用語集

懲戒免職とは?懲戒解雇との違いや特徴

懲戒免職は、懲戒処分の一つで、公務員を強制解雇するものです。

本記事では懲戒解雇との違いから、懲戒免職の詳細を徹底解説しました。

懲戒免職とは?

懲戒免職は、規則違反などの問題行動や犯罪行為を起こした公務員を強制的に解雇するものです。基本的に懲戒免職を受けると、退職金の不支給や、年金の減額も発生します。

懲戒処分(対象組織内の秩序維持目的で課せられる制裁)の一つです。

参考:免職とは-コトバンク 懲戒処分とは-コトバンク

懲戒免職と懲戒解雇の違い

最も重い処罰であることは同じです。

懲戒免職

  • 公務員の強制解雇
  • 国家公務員法や地方公務員法などでルールが定められている

懲戒解雇

  • 一般企社員の強制解雇
  • 労働基準法の範囲内で自社のルールを設定できる

参考:懲戒免職になった場合のリスクは?異議申立てが可能であるかについても解説

懲戒免職以外の処分

懲戒処分のうち、懲戒免職以外で主なものを紹介します。

停職

職員の身分を維持したまま一定期間職務に従事させない処分です。

懲戒免職以外の処分としては比較的重い処分で、停職より重い処分は降格・論旨解雇などが該当します。

減給

本来支給されるべき賃金の一部が差し引かれます。

減給の上限額は、労働基準法第91条にて定められています。

戒告

戒告は最も軽い処分で、いわゆる厳重注意です。

度重なる遅刻や短期間の無断欠勤、軽微な業務命令や規則違反などがあった場合に課せられる処分で、始末書の提出も不要です。

懲戒免職のリスクとは?

懲戒免職で被るリスクを解説します。

再就職が困難になる場合がある

懲戒免職は氏名・職名が公開されることもお多く、再就職が困難になります

国家公務員の場合、懲戒免職処分を受けた日から2年が経過しないと、国家公務員に復職することができません(国家公務員法38条2号)

。地方公務員も同様で、原則として処分から2年間は同地方での職務復帰ができないように定められています。(条例で定める場合を除きます。地方公務員法16条2号)。

退職金がもらえないか減額される場合がある

基本的に退職金がもらえない、または減額される可能性があります。

ただし懲戒免職の申請が認可されずに解雇処分となったときは、予行を受けない退職者の退職手当が支給されます。

公務員が懲戒免職になるケース

公務員が懲戒免職になるケースをまとめました。

長期間の欠勤

長期間の欠勤が原因になりえます。

国家公務員の場合、21日以上正当な理由なく欠勤した場合、免職または停職になる可能性があります。

情報の漏洩

職務で知った情報を漏洩し、公務の運営に重大な支障を生じたさせた場合です。

実際に、選挙活動で知り得た有権者の情報を無断利用したことで、懲戒免職処分を受けた事例が存在します。

参考:堺市、全有権者の個人情報68万人分流出 課長補佐を懲戒免職

パワハラ・セクハラ

悪質なパワハラ・セクハラ行為も懲戒免職処分になる可能性があります。

生活保護受給者の女性にわいせつ行為を行なったとして、懲戒免職処分を受けた事例もあります。

参考:生活保護受給者の女性の体触る 大阪府・大阪狭山市職員を懲戒免職

窃盗・横領

公金や官物の横領・窃盗は重大な非違行為です。

自家用車に不正給油したことを理由に懲戒免職を受けた事例があります。

他人を騙して公金や官物を交付させた場合も当てはまります。

犯罪

犯罪行為も懲戒免職の可能性があります。

  • 放火
  • 殺人
  • 窃盗
  • 強盗
  • 詐欺
  • 恐喝
  • 麻薬・覚せい剤等の所持
  • 18歳未満者に対する淫行

などに該当する違法行為・犯罪行為をした場合は懲戒免職になるケースがあります。

飲酒運転や交通事故

飲酒運転・交通事故で懲戒免職になるケースがあります。

国家公務員の場合、酒酔い運転による交通事故(人身事故)は原則として懲戒免職になります。

また、直接運転していなくても、運転を知っているのに飲酒を勧めた職員や、飲酒運転とわかって同じ車に乗った職員も処分が下る可能性があるので注意しましょう。

なお、飲酒以外の交通事故も、死亡または重篤な障害を負わせたら懲戒免職の対象です。

参考:懲戒免職になった場合のリスクは?異議申立てが可能であるかについても解説

懲戒免職は異議申し立てが可能?

懲戒免職に不服なら、受けた人は異議申し立てが可能です。

不利益処分(懲戒免職を含む懲戒処分のこと)を受けた職員は、条件を満たせば、人事院や人事委員会に対して審査請求をし、処分取り消しを求めることができます。

審査請求結果に納得がいかないときは、裁判所に訴訟を提起することも可能です。

参考:懲戒免職になった場合のリスクは?異議申立てが可能であるかについても解説/

企業での懲戒解雇の7つの原則

企業の懲戒解雇には、判断を定める明確な法がないので、企業が独自に行います。

その際の判断に用いられる7つの原則について説明します。

罪刑法定主義の原則

労働基準法第89条によって、懲戒処分を行うためには、処分の対象となる行為、処分の種類・内容を明らかにしておかないといけないという原則があります。

経営者の個人的な主観や感情で処分をすることはできません。

参考:労働基準法

適正手続の原則

適正手続の原則は「事実関係の十分な調査と、弁解の機会付与など適正な手続を踏まなければならない」というものです。

第三者の証言やイメージで決めつけるのではなく、客観的な情報を集めて手続を行うことを定めています

相当性の原則

「事案の背景・経緯、情状酌量の余地などを考えて、必要ない処分や重すぎる処分を下すことはあってはならない」といった原則です。

社員の行動や態度をしっかり調査し、弁解を聞き、不必要に重い処分を下さないようにするという原則といえます。

合理性を欠いた処分は無効のこともあるので気をつけましょう。

平等取扱の原則

「以前に同様の事案があった場合は、当時の処分と同等にしなければならない」というものです。過去の優秀な社員の問題行動を見逃すと、他社員の同様問題の処分が難しくなります。気をつけましょう。

個人責任の原則

「個人の行動に対して連帯責任を負わせることはできない」というものです。

問題を起こした人物が特定できないとき、全員に連帯責任を負わせることはできません。

必ず調査し張本人を特定する必要があります

二重処分禁止の原則

「同一の事柄に対して、複数回の懲戒処分を行うことはできない」というものです。

例えば調査のために、無給の自宅待機を命じると、それ自体が懲戒処分になり、その後の処分ができない可能性があります。

効力不遡及の原則

問題発生後にそれを対象とした処分規定を設けても、効力はありません。

そのため、定期的にルール・規定を見直し、時代にあった柔軟な対応をしていくことが重要といえるでしょう。

参考:懲戒処分の際に守るべきルール

企業の不当な懲戒解雇とは?不当解雇になる場合

懲戒解雇が不当なケースもあります。

合理的理由

客観的に合理的な理由でなければ不当な懲戒解雇になり得ます。

「社員の問題行動が就業規則に定められている事柄に該当した」だけでは難しいということです。

懲戒解雇は処分の中でも最も重い処分なので、重大な違反行為が明確にあった場合にのみ適用されます。

社会通念上の相当性

社会通念から考えて相応しい処分かどうかです。

反省態度や勤務態度、当人が置かれている状況などから、妥当な処分か判断しなければなりません。

このように、懲戒解雇は非常に厳しい審査が必要なのです。

懲戒免職(解雇)の流れ

懲戒免職(解雇)の流れを解説して行きます。

適正な手続き

懲戒解雇は非常に重い処分であるため、本人に弁解の余地・機会を与えないといけません。

就業規則などで定められた手続きがある場合は、そちらに沿って手続してください。正しく踏んでいない不当解雇になり得ます。また原因となる事由があってから、何もせず長期間が経過した場合、その後の処分は原則認められていません。

対象行為があったら速やかに対処しましょう。

解雇の合理的な理由・社会相当性

解雇の合理的な理由と社会相当性は先ほど説明した通りです。

特に裁判になったら処分の正当性を示す証拠が必要不可欠です。

そのためにも、しっかりと調査を行い、合理的理由・社会相当性を担保した上で処分を下しましょう。

解雇予告・解雇予告手当ての付与

懲戒解雇も解雇の一種なので、30日前に解雇予告と30日以上分の平均賃金の支払い義務が生じます。

ただし労働基準監督署長に解雇予告除外認定の申請を行い、受理されれば、ただちに懲戒解雇を行うことも可能です。

しかしながら、後者は手続きに手間取るため、前者の方がスムーズにいくことが多いです。

参考:懲戒解雇の手続きとは

懲戒解雇を行う際の注意点

企業が懲戒解雇を行う際に気をつけるべきポイントについてまとめました。

懲戒に関する規定を周知しておく

懲戒に関する規定を周知しておくことは絶対です。

従業員に周囲されていない規定に基づいた懲戒解雇は、不当で無効になる場合があります。

就業規則の作成義務がなくても、トラブルを避けるためにきちんと作っておきましょう。

弁解の余地を与える

懲戒解雇は最も重たい処分であり、弁解の余地・機会を与えなければなりません。

懲戒解雇をめぐる裁判になったとき、弁解の機会の有無は非常に重要な要素です。

きちんと言い分を聞くようにしましょう。

書面での通知を行う

書面での通知をしてください。

口頭での処分の言い渡しだと、内容が曖昧になったり、証拠が残らないなどの不都合が生じてしまいます。「懲戒処分通知書」に、具体的な処分対象行為と処分内容を明記してください。

参考:懲戒解雇を実施する際に気を付けておきたいポイント4点

まとめ

懲戒免職は公務員を強制解雇する懲戒処分で、懲戒解雇は一般の会社員を強制解雇する懲戒処分です。

どちらも、重大な処分のため、処分を行うには慎重な調査が必要です。合理的な理由・社会相当性がないと不当懲戒解雇だとみなされるので気をつけましょう。

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