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総合商社はたくさんのプロジェクトを行っています。そのため、大成功し利益につながることもあれば、うまくいかないこともあります。しかし、何をもって成功・失敗と定義するのか難しい部分もあるので、今回は賛否両論あったプロジェクトをご紹介し、みなさんがご自分の意見をきちんと持つ材料を提供します。

丸紅のガビロン買収って知ってる?

丸紅は穀物の分野で総合商社の中でも強い力を持っています。穀物の市場では、アメリカの穀物メジャーが穀物の国際取引の70%を牛耳っています。カーギルやADRという会社があるなかで、丸紅は当時穀物三位であったガビロンを買収した。しかし、ガビロン買収後、丸紅は大きく減損を出しました。

減損って何?

企業を買収するときに、買収企業は被買収企業をいくらで買うのか相談します。そのときにその企業の会計上の価値よりも多く払うことがあり、これを「のれん」という形で計上します。つまり、今定価100万円の時計があって、それが人気モデルで価値がもっとあると判断されるときに120万円で売られることがあるとします。この差額の20万円が「のれん=プレミアム」として計上されるわけです。ガビロン買収の際は、丸紅が「ガビロンを買った後に、丸紅と協力すればさらなるビジネスチャンスにつながる」としてこの「のれん」をたくさん計上しました。
ところが、いざガビロンを買ってみるとなかなか協力がうまくいきませんでした。そのため、この「のれん」に本当に価値があるか判断がなされ、言うほど価値はないと判断されました。そして、資産として持っていたのれんを減額されてしまったのです。これが、「減損」です。
つまり、さきほどの時計の例でいうと、120万円で買った時計ですが、いろいろな人にきくと105万の価値はあっても、120万円の価値はないと判断されたということです。この差額の15万円が減損です。
※ここは興味のある人だけ読んでください。
減損というのは突然のれんが減額される会計基準で使用されている仕組みです。のれんを徐々に減額していく会計基準もあるので、会計をもっと知りたい人は、IFRSと日本の会計基準の違いを調べてみてください。

ガビロンはなんで減損が出たの?

>結果的に、ガビロン買収により500億円の減損を出した丸紅。この投資は失敗だったのでしょうか?

様々な見方がありますが、やはり高い買い物をしたというのが一つの見方です。ガビロンの本当の価値よりだいぶ高くお金を払ってしまったんですね。みなさんも買い物に失敗することがあると思います。しかし、大きく違うのは、丸紅は銀行や株主の方のお金も借りてるんですよね。人からお借りしているお金で高すぎる買い物をすると、やはり「その買い物は高いのでは?」という批判が出るわけです。
もう一つは、うまい協力体制を築くのに時間がかかったというものです。連携がはやければ、新しいビジネスチャンスを創出していけます。そうすれば、「やはり協力することで相乗効果がある」と判断され、ガビロンの買い物も高くはなかったと評価されます。ガビロンのときには連携がうまくいくまでかなりの時間を要しました。
他にも、タイミングが悪かったという見方や丸紅のガバナンスの利かせ方が甘かったなどの見方があったようです。
(参考)
「丸紅、「減損1200億円」を招いた二つの誤算」
https://toyokeizai.net/articles/-/59236

総合商社の買収の失敗と成功の判断について

今回は丸紅のガビロンの買収を例にとって、結果的に減損が出た理由をご紹介しました。しかし、総合商社では日々様々な事業投資や買収が行われています。未来に希望を持って投資することも重要ですが、過去にうまくいかなかった例にもきちんと目を向けることが大事です。就活生として、総合商社の投資でうまくいかなかったものもきちんと研究することで、より深い業界研究ができるようになるとおもいます。