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業界研究が深まってくると、総合商社を第三者の立場から見た知識というのはつきやすいですが、いざ働いた場合ビジネスがどのような風にみえるのか、という考え方はなかなか身に付きません。そうした視点を獲得するにはOB訪問などで実際に商社マンがどのようにビジネスを考えているのかリサーチするのが良いでしょう。今回は、そうした商社マンのビジネスの見方を学ぶために事例を紹介して深掘りします。みなさんも、時間をかけてなぜなのか自分なりに考えてみてください!!答えは一つではありませんが、実際の事例であるため、根拠はたくさんあります。

ケース「三菱商事のミャンマーにおける病院運営会社の新規設立」

以下は三菱商事からプレスリリースされた記事です。
「概要」
~日本品質の医療提供によるミャンマーの医療水準向上を目指して~
三菱商事株式会社(以下、当社)は、ミャンマー連邦共和国(以下、ミャンマー)在イー・シン・ホールディングス(以下、Yee Shin)、及び、キャピタル・ダイヤモンド・スター・グループ(以下、CDSG)との合弁により、新たに病院運営会社を設立の上、2020年を目途にヤンゴンにて新たに総合病院を建設することにつき、合意いたしました。新会社の出資比率は当社30%、Yee Shin/CDSGの両社合計で70%となります。当社はヘルスケア事業領域において、医療機器・医療材料の流通・販売を中心に事業を展開してきましたが、病院事業を中長期的な成長分野の一つと位置づけ、第1号案件として、今後大きな経済成長が見込まれるミャンマーで病院事業に取り組んで参ります。現在ミャンマーでは多くの人々がタイ、シンガポールを中心とする近隣諸国で医療サービスを受けています。新会社は、300床規模の総合病院を設立し、高度な医療サービスを提供します。ミャンマー国内で展開しているCDSG(※1)の多角的な事業のネットワークを活かし、病院はヤンゴン市内の「キャピタル・シティ地区」(※2)に建設いたします。Yee Shinはマンダレーで2つの総合病院を運営してきた経験から、病院運営ノウハウを提供します。この両社の強みに、当社主導で日本品質の医療サービスを組み合わせることで、地場に根差した安全かつ高品質な医療サービスを提供し、ミャンマーの医療水準の向上に貢献して参ります。
(※1)当社とCDSGはこれまでも食品製造販売会社(ルビア・リミテッド社)の運営を合弁にて行うなど協業関係にあります。
(※2)「キャピタル・シティ地区」は、CDSGのグループ会社であるCapital Development Limitedが総合開発(コンドミニアム・ショッピングセンター等)を進めているものです。
三菱商事
https://www.mitsubishicorp.com/jp/ja/pr/archive/2017/html/0000032064.html

問い1 なぜミャンマーなのですか?
問い2 なぜヤンゴンに作るのですか?
問い3 総合商社としてサポートできるのはどんなところでしょう?
問い4 建設の際に考えられるリスクはどんなものですか?
問い5 投資額の回収期間はどれくらいを見込んでいると考えられますか?

考え方のサポートになる材料

問い1

・海外でのビジネスで特定の国を選ぶということは、そこの国の経済成長が見込めることが多いですよね。ミャンマーなど東南アジアの経済成長率についてしらべてみるとよいかもしれません。
・今回は病院を作るということで、医療事業の拡大についても考えてみましょう!ミャンマーの医療事情はどんな感じでしょうか?
・少し発展的ですが、東南アジアの中でなぜミャンマーなのか、もう一度確認してみましょう。

問い2

・ミャンマーの中でヤンゴンに焦点をあてた理由はなんでしょうか?これは病院がどういった患者さんを対象としているのか、を考えると自ずと見えてくるかもしれません。
・患者さんの所得やミャンマーの医療費の側面から、ヤンゴンの病院というのがどういったイメージなのかを掴みましょう?例えば、割と安価に簡単な治療を受けられる病院なのか、より難しい手術などにも対応する病院で医療費も高めなのか、などです。

問い3

・やはり気になるのは「総合商社」がやる理由ですよね。総合商社としてサポートすると、どのようなことが可能になるのでしょうか。考えてみましょう!
・実際に病院をやるとなると、お医者さんが必要です。どこから呼んでくるのでしょうか?
・病院の造成工事はどこに頼むのでしょうか?
・実際に病院をやるとなると、ある程度まとまった金額が必要になります。そのサポートを「総合商社」としてやるとどのようなことが可能でしょうか?

問い4

・実際に建設をするとなると様々なことが問題に上がってきます。どのようなリスクが考えられるでしょうか?例えば、工事が遅れたら、契約する予定のお医者さんに給料を前払いしなければならないなどの問題も出てきます。これを「工事遅延のリスク」と呼ぶことができます。こうした考え方で考えられるリスクを上げてみましょう!!

問い5

・これだけ大きなプロジェクトです。投資金額もそれなりに大きくなります。総合商社として投資を実行したということは、きちんと収益をあげられるからです。実際にどれくらいの期間で収益をあげられるのでしょうか。概算して、総合商社のプロジェクトの期間規模を把握してみましょう!
(※実際に働いてそのプロジェクトの担当になれば、それだけの期間収益があがるまで責任もって仕事に取り組むことになります。)

まとめ

いかがでしたでしょうか?商社マンはこうしたことにチームで取り組み、社内の専門家の力を借りながら、プロジェクトを進めていくことになります。腰を据えて取り組むことが好きな方は、実際に病院が完成して患者さんの治療ができるようになったら、その喜びもひとしおでしょう。業界分析というとどうしても会社のパフォーマンスや歴史、会社ごとの違いなどに目が行きがちですが、実際の商社マンの視点にたって物事を考えてみる訓練をすることも立派な業界研究などではないでしょうか?
(※プロジェクトによっても異なりますし、総合商社の業務は本当に様々なので、今回紹介した例はあくまで一例です。)