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鉄道業界の説明と就職事情について解説します。鉄道というと駅員や運転手・車掌などがイメージされますが、実際は鉄道事業以外にも幅広い事業を手掛けています。また、鉄道業界には総合職から技術職まであるため、文系・理系に関わらず活躍できる職種があるのも特徴です。そのため、本記事では鉄道業界を正しく理解するためのポイントと就職事情について、実際に内定を獲得した先輩の具体例を挙げながら解説していきます。

鉄道業界とは

そもそも鉄道業界とはどのような業界なのでしょうか?以下では、まず、鉄道業界の概要について説明していきます。

鉄道業界は3つに分類できる

鉄道業界は大きく「JR各社」「私鉄」「第三セクター」の3つに分類することができます。JR各社はもともと日本国有鉄道(通称「国鉄」)という政府が100%出資する事業団体でしたが、1987年の国鉄民営化に伴い、複数に分割されJRになりました。現在はJR北海道・JR東日本・JR東海・JR西日本・JR四国・JR九州・JR貨物がそれぞれ独立して事業を行っています(正確には、JR北海道とJR四国は株式を全て国が保有しているため「特殊会社」に分類され、それ以外は私鉄とほぼ変わりません)。JR以外の民間が運営する鉄道会社がいわゆる「私鉄」で、関東だと、東急電鉄・東京地下鉄(メトロ)・京浜急行電鉄・小田急電鉄・東武鉄道・西武鉄道・京王電鉄・京成電鉄・相模鉄道などが、関西だと、阪急電鉄・南海電気鉄道・阪神電気鉄道・近畿日本鉄道・京阪電気電鉄などが挙げられます。その他にも名古屋を中心に名古屋鉄道が、九州には西日本鉄道など、調べてみると様々な企業があることが分かります。これらとは別に、民間企業と行政が協力して運営している鉄道があり、これを「第三セクター」と呼んでいます。民間企業が運営主体で、株式を東京都などの行政が持っている場合が多くなっています。

「沿線価値の向上」

鉄道会社の事業というとメイン事業である「鉄道事業」や「輸送事業」を想像する方がほとんどだと思います。しかし、鉄道会社は「沿線価値の向上」を目指した様々な事業を展開しており、例えば駅周辺の駅ビル開発や不動産事業なども手掛けています。会社によって鉄道事業の利益と関連事業の利益の比率は異なりますが、沿線の魅力を向上させることで、鉄道利用客のみならず、居住者の増加につなげることができるのです。また、鉄道会社は関連企業とグループを形成していることが多く、沿線住民や利用者のライフスタイルに関連するサービスを提供しています。例えば、東急電鉄は交通、不動産、生活サービス、ホテル・リゾートの事業領域から成る東急グループに所属しており、近年では2020年に開催予定だった東京オリンピックを前に、拠点である渋谷駅周辺の大規模開発を進めています。

鉄道業界の職種・業務内容・働き方

多くの鉄道会社では、総合職と技術職の2つの職種が募集されます。毎年の傾向として、総合職は文系学生の割合が高く、技術職はほぼ理系学生となっていますが、鉄道会社には文系・理系問わずに活躍できるフィールドがあることが分かります。また、鉄道会社が様々な事業を行っていることは上で説明しましたが、そのため総合職の社員は、鉄道事業から生活サービス事業まで幅広い事業領域に関わる可能性があります。ただし、多くの会社では現場のオペレーションや仕事内容を把握するため、入社後2~3年ほど駅係員や運転手・車掌を経験することになります。

鉄道会社に就職するためには…

鉄道業界の就活フロー

先に述べたように鉄道会社の職種は大きく分けて「総合職」と「技術職」の2つに分けることができます。技術職の場合は、大学や大学院で専門的な知識を身に着けた理系学生を前提としているため、文系学生は必然的に総合職に募集することになるでしょう。鉄道業界を志望する場合の就職活動は、他の業界の採用スケジュールと大きくずれることはありません。大学3年(修士1年)の8~9月に夏季インターンシップ、2~3月に冬季インターンシップが行われ、3月より説明会や採用活動が始まります。しかし、鉄道業界は人気が高く、インターンシップ選考にも多くの学生が募集するため、一説ではインターン選考のほうが本選考より難関なのではないかとも言われています。筆者の周りにもインターン選考で落選したものの、本選考で内々定を獲得した学生がいます。なお、本選考では他業界と同様に複数回(約3~5回)の面接がありますが、オーソドックスな内容の面接が多いため、しっかり対策していけば大丈夫でしょう。

鉄道業界に求められる人材

鉄道業界だから特別なスキルや資格が求められるといったことはありません。また、必ずしも鉄道が好きである必要もなく、むしろ鉄道にあまり関心がない学生を採用ターゲットとしていることもあるようです。極端な例ですが、社員全員が鉄道マニアになってしまうと一般利用者の目線が欠如してしまいます。また、鉄道事業以外の事業に関わる可能性が高いため、会社としても広い視野をもった社員が必要になるのです。
しかし、客への対応を行う場面があったり、様々な領域の業務に関わることがあるので、周りの人々とのコミュニケーションは重要になるでしょう。また、鉄道事業は安全確認や時間の管理が他の業種より重視されるため、遅刻などに注意するとともに、丁寧な振る舞いを心がけましょう。

各鉄道会社を比較する

面接の場で必ず聞かれる「あなたの志望企業のなかで、当社の志望度はどれくらいですか?」という質問。いつかは決めなければいけない志望順位ですが、鉄道業界の中でどのように企業を比較していけばいいのでしょうか。以下では、鉄道業界で各社の違いが出やすい点について解説します。面接や書類の中で、志望度をしっかりした理由とともに述べられると説得力が増すでしょう。

各会社の特徴を捉える

鉄道業界を志望している学生にとって重要なのは「各会社の特徴」を理解することでしょう。会社の規模や事業内容によって、入社後に携われる業務は大きく変わってきます。例えば、JR東海の場合、東京駅から新大阪駅までの552.6kmで東海道新幹線を運行しています。日本の大動脈ともいえる路線を持っていることで、他社にはない強みを活かしたビジネスを展開しています。また、鉄道会社は土地に固着した事業を展開しているため、他の業界の企業と比べると、その地域とのつながりが非常に強くなっています。地域に密着した事業に着目してみると、地域とともに成長していこうという各会社の想いを感じることができます。例えば、JR西日本の場合、鳥取で「お嬢サバ」というブランドサバ、瀬戸内で「オイスターぼんぼん」などのブランド牡蠣を養殖しており、地元産業の発展に努めています。

営業利益の割合に着目する

会社の特徴を把握するために有効なのが、事業セグメントごとの「営業収益」の構成比をチェックすることです。営業収益の比率をチェックすることで、その企業がどの事業に注力しているのかが分かります、例えば東急電鉄の場合、交通事業(鉄道など)17.4%に対し、不動産事業17.1%、生活サービス事業57.7%、ホテル・リゾート事業7 .8%となっています。それに対し、小田急電鉄は運輸事業(鉄道など)30%に対し、不動産事業12%、流通事業39%、その他18%となっています。ここから東急電鉄が様々な関連事業に注力していることを読み取ることができます。「鉄道事業そのものに関わりたい」「生活関連サービスに関わりたい」という希望がある方などは、配属の可能性などを少しでも減らすことができます。

鉄道業界のこれから

就活の場で押さえておきたい鉄道業界のトレンドについて紹介していきます。グループワークや面接のネタとしてお使いください。

新型コロナによる影響

新型コロナウイルスの流行により人の移動が制限される中、乗車人数の変動に影響を受けやすい鉄道業界は大きな打撃を受けています。鉄道事業はその営業コストのほとんどを車両や駅舎といった早急なコスト削減が難しい固定費で占めるため、比較的見直しが容易な人件費には削減の目がいきやすいのが現状です。例えば、JR北海度は2020年5~7月の間、全体の2割にあたる社員を一人当たり月に数日程度、一時帰休させました。国の雇用調整助成金を活用して賃金の減額は行われなかったものの、今後も新型コロナウイルスに収束の見通しが立たなければ、以前から赤字を抱えていた路線については廃線を視野に入れた経営判断を下すこともあり得ると考えられます。鉄道業界を志望する就活生は、ニュースや企業HPなどからこういった最新情報に目を光らせた方が賢明でしょう。

人口減少とインバウンド

日本における人口の減少と海外からのインバウンドは鉄道業界にも大きな影響を与えています。国内の人口が減少するとそれに比例して乗客数は減少します。したがって、業界全体として鉄道事業に加えて駅ナカや駅チカといった商業施設、またはオフィスにおけるテナント業などに力を入れる鉄道会社がふえています。逆に、インバウンドによる外国人観光客などの増加は大きなチャンスでもあります。現在は新型コロナウイルスの影響をうけているものの、各鉄道会社が路線の観光地をアピールして観光客の取り込みを画策しています。

海外での事業展開

近年は海外での事業展開も行われるようになってきました。「日本の鉄道はダイヤ通りに運転されていて技術力が高い」という話はよく聞きますが、その技術を海外に輸出するケースが増えてきています。例えば、JR東日本はバンコクにおいて、東芝・丸紅と共同出資会社を設立し、事業を展開しています。また、日本の鉄道会社は鉄道に関する技術力だけではなく、デベロッパーとしてまちづくりを行う技術ももっているため、海外でのまちづくりをトータルに請け負うケースも見られます。

相互乗り入れ

極力乗り換えを減らして利便性を向上させるために、異なる鉄道会社同士が連携して「相互乗り入れ」を行う事例が増加しています。例えば、2013年3月に始まった東京メトロ副都心線と東急電鉄東横線の乗り入れなどが挙げられます。2022年を目処に相鉄線が東急東横線に乗り入れることも発表されており、今後もこのような乗り入れを予定している路線が複数あります。

鉄道業界の就職事情まとめ

鉄道事業が根本にありながらも、様々な事業を手掛けているため、様々な事業に取り組めるチャンスがあることがお分かりいただけたと思います。また、鉄道業界への就職を考える場合は、特別なスキルは必要ありませんが、コミュニケーションがしっかりとれること、時間や行動に配慮ができることが最低限の条件になります。先で述べたネタについても自分なりに意見をもち、企業研究などを重ね、しっかり対策をして選考に臨めば、説得力のある受け答えができるでしょう。