講演レポート

「今、経営/人事が考えるWell-being的視点〜ニューノーマル時代を生き抜くために〜」 質疑応答編

飯田:このセッションでは、いくつか質問させていただきたいと思っています。まずは冒頭、講演会を拝聴して、私も考え方を改めないといけないな、と思いました。楽天グループさんは、言うまでもありませんが非常に高い成果が上がっている会社なのですが、そういう御社ですら……いや御社だからこそ、ウェルビーイング・ファーストを掲げていることに私としては驚きました。

楽天さんのカルチャーや楽天主義などが大好きなので、本も全部読んでいます。「やるべきことをきちんとやり切ろう」といったように、ともすれば精神的な負荷が高そうな印象も受けるのですが、いわゆるウェルビーイングであることと、ビジネスとして結果を出すことにおいて、矛盾するような局面はありませんか?

ウェルビーイングとビジネスの関係

小林:そこが履き違えられやすいところですよね、ウェルビーイング=お花畑みたいな感じに思われてしまっていると。たしかに当社においても、「GET THINGS DONE(やりきる)」みたいなカルチャーと相反するのでは?という質問をいただくことがあります。

ですが、それは違うんです。ウェルビーイングというのは、一瞬のハピネスではありません。適度なストレスやストレッチがないと、ウェルビーイングではないと思うんです。自分が掲げている「well」にちゃんと向かっていればウェルビーイングになれると思うのですが、向かっていく過程においては、多少のチャレンジや、うまくいかないこともあって然るべきだと思います。当社がウェルビーイングな状態だと思うのは、「常に進化していこう」「挑戦していこう」「まだ誰もやったことがないことをやろう」といった状態です。実現できているので、そういう意味においてはウェルビーイングなんだろうな、と思っています。

ただし、一人ひとりを見ていくと、腹落ちしていないことも。大変なことだけになってしまって、「それが何のために?」といった点が紐付けられていないケースもありますよね。講演の中でも触れたように、会社のミッション・ビジョン・バリューと、いま自分が目の前でやっている業務がちゃんと接続できていれば、これがウェルビーイングだと理解してもらえると思います。

飯田:なるほど、ありがとうございます。すごく腹落ちしました。小林さんはもともと楽天の創業メンバーで、かつグローバルにも責任を持ち、結果を出されてきました。そのエース中のエースがチーフ・ウェルビーイング・オフィサーになり、会社のカルチャーをリードしているのは、従業員にとって幸せな状態だろうな、と想像しています。

ウェルビーイングを推進するために人事から始められるアクション

飯田:一方で、なかには「そうは言っても、うちの会社わかってくれないんだよな……」「人事担当の立場からウェルビーイングを実現するためには、どうすればいいんだろう?」といったように、悩んでいる声も多く耳にします。本日は人事のご担当者様に、たくさんご参加いただいています。

そういう方々に対して、ウェルビーイングを推進する第一歩としてアドバイスできることは何でしょうか? 

小林:確かにコーポレートカルチャーについては現場では色々悩むかもしれません。私の経験からすると、リーダーが文化を作っているところがあります。たとえば、経営層がそこに対する理解がないのに、人事部だけが頑張って組織をウェルビーイングにしていくのは、若干ハードルが高い気がします。

よかれと思って、社員一人ひとりのウェルビーイングを考えるようなセッションを提供してしまうと、最悪の場合、社員が辞めてしまう可能性もありますよね。ですので、メンバーレベルにウェルビーイングのコミュニケーション機会を提供していく前に、上層部へウェルビーイングの意義などを伝えておかなければなりません。

スライドの中でも少し紹介しましたが、幸せな状態だと、営業成績が何%アップ、生産性も何%アップ、またはマイナスであってほしい箇所が低下していきます。そうした科学的根拠を持ちつつ、たとえば御社(リーディングマーク)のサービスを通じて、「組織や仲間たちは現状こういう状況にあって、一人ひとりのウェルビーイングを実現していくと改善されていく」といったようなことを、HRテックをしっかり利用して、データを用いながら人事から経営陣へプレゼンできるといいのではないでしょうか。

そういった意味では、HRテックをしっかり利用するのがいいと思います。

飯田:たしかにそうですね。思い返してみれば、私が小学生だった頃は、土曜日も半分授業があり、大人はみんな出社していました。大きな流れで考えると、少しずつ世間の働き方や認知などが変わってきていますね。むしろウェルビーイングをやっていくと生産性も上がり、会社の業績も最終的には上がっていく。だからやったほうが得、ということを経営者に認識してもらい、変革を図っていく。そこが究極的には大事ですね。

小林:いきなり社長へ切り出すのが難しければ、部門の担当役員を説得して、一部の部門だけを対象にして始めてみる方法もありますよね。「この部門だけ結果が出た」「ほかと比べたら退職率が下がっている」「エンゲージメントレベルも上がっている」といったように。

ウェルビーイングを高めるコツ

飯田:次が最後の質問です。個人レベルで考えた時に、仕事とプライベートの充実があってウェルビーイングが成立するのだと思います。生活の中でウェルビーイングを高めるコツがあれば、ぜひ教えていただきたいと思っています。

もともとポジティブ思考の人に対して、「今日の一日を振り返って、ポジティブだったかどうか考えてみましょう」と提案すれば、やってみて良かったという声をいただけると思います。一方で、今苦しいことが多いとか、物事を慎重に捉えるような癖がある人にとっては、「ポジティブにやりましょう」とか「ウェルビーイングにいきましょう」と言われても、どうすればいいか困ってしまいますよね。

プライベートを含めて、一人ひとりがウェルビーイングに過ごすために、何かできることはあるでしょうか?

小林:人と人との繋がりが人を豊かにしていくと思うので、一番怖いのは孤独ですよね。孤独って極めて苦しいことだと思うので、自分をさらけ出せる仲間とのコミュニケーションが重要だと考えています。答えが欲しいわけではなく、ただ自分の気持ちに寄り添ってもらう。単純に「なるほど、そういう感じなんだ」と聞いてもらえるだけで心は救われます。

そういう人と一緒にいられるというのは、多分ウェルビーイング、良い状態だと思うんです。そうしたことを意識して、定期的にその人に会う予定をあらかじめ入れてみては。別にそのために頑張るわけではなくても、少なくとも自分が自分でいられる時間を作り出す。さらに今度は、その種類を増やしていく。「あの土地に行くと、自分はほっこりする」と思ったら、その土地に行ってほっこりしてみる。自分なりのほっこりできる場所であったり人であったりを、意識してスケジューリングしていくのはテクニックとしてあるかもしれません。

飯田:講演の中でも、居場所が多いほうが自己肯定感が上がりやすいという話がありましたよね。自己肯定感が上がっていくと、たとえば空を見て「今日もいい一日だ」と思えるかもしれませんし、アンテナが高くなるので、ほっこりできる場所も増えていったり。そうすると、また新しいネットワークが広がる。そうしたスパイラルを少しずつ回していくことが大事かもしれませんね。

小林:Twitterでも、ポジティブなネタをくれる人をフォローしていると、ポジティブに囲まれていきますよね。青空のツイートを見て「おぉ、まだ空を見てなかった」とか。お互いポジティブな人同士が繋がると、さらにポジティブの輪が広がっていくように思います。

飯田:たしかに落ち込んでいたり、ネット検索したりすると、どうしてもマイナスなものに惹かれてしまいがちですよね。それを逆転させるのは、いいアイデアですね。

小林:とにかく、空を見上げていただければ(笑)。私も空を見上げてTwitterでつぶやいているので、皆さんもつぶやいてみてはいかがでしょうか。

飯田:お忙しい中、たくさんのヒントをいただきました。ご参加ありがとうございました。

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