講演レポート

「組織の心理的安全性を高めるロードマップ」ご講演者:Unipos株式会社/田中 弦氏【みんなのHR博覧会 byミキワメ】

本レポートは、2022年7月26日に開催された、「みんなのHR博覧会 byミキワメ」の基調講演の文字起こしです。各テーマに沿って、「はたらく」を「よく」するを徹底的に語り尽くしていただきました。

田中さん自己紹介

飯田:皆さんこんにちは。ミキワメを運営している株式会社リーディングマーク代表取締役社長の飯田です。この時間は、組織の心理的安全性を高めるロードマップと題しまして、Unipos株式会社代表取締役社長CEOの田中弦さんにお越しいただいています。田中社長よろしくお願いいたします。

田中:よろしくお願いします。

飯田:今日は人事の方も多く、「Unipos知ってるよ」「使ってるよ」という方も多いのではないかと思います。実は私自身もUniposというプロダクトの大ファンで、社内でも熱狂的に使わせてもらっています。

このUniposというサービスは、そもそも従業員の心理的安全性を高める効果を狙って構築されたプロダクトです。Uniposの活用有無に限らず、心理的安全性という概念が今大きく組織論の中で注目されています。

田中さんはこの領域の第一任者で、今日は20分ほど基調講演をご準備いただいています。ぜひ皆さんと一緒に心理的安全性、そしてそれをどう高めていけばいいのかを学んでいきたいと思っています。

では早速、会社の紹介と自己紹介をしていただいたのち、基調講演に移っていきたいと思います。田中さんよろしくお願いいたします。

田中:はい、よろしくお願いします。Uniposの代表をしている田中と申します。今日はあまりUniposの宣伝にならないように、心理的安全性の高め方について話していきたいと思います。そのなかで、少しだけUniposの話もできれば幸いです。

早速私の自己紹介に入ります。もともとソフトバンクに新卒で入りました。で、そのあと何社か会社を作っていて、16年経営しています。今Uniposという心理的安全性を高めるサービス1本に絞ってやっています。

心理的安全性がチーム作りにもたらす効果

田中:まず、心理的安全性といろいろ言われてますよね。いろいろ言われているんですけど、心理的安全性安って?という基礎的なことを話してもしょうがないと思いますので、「一体全体何がいいのだろう?」という話をします。

まず、とにかく世の中変わってきてますね。たとえばさっきデータを見ていたのですが、40代の方は6割ぐらいの方が転職しているんです。新卒で同じ会社にずっといます、というのは少なくなったように思います。

あとは心理的安全性を高める以外のマネジメント。いわゆる上意下達で、「新人は3年修行してろ」というマネジメントをする意味が、かなり薄れてきたかなと思います。なぜかというと、もう答えを誰も知らない、社長も知らないしマネージャーも知らない。ましてや部下も知れない。そういった世界になってきたと思うんですね。

これはもう明らかにそうかなと思っていて、やはり戦争起きるとかは誰も占えませんし、インフレになると誰も占えません。海外から突然競合他社がやってきてということも、昔よりはるかに多くなってきたので、みんなで意見を出し合って組織を運営していかないと、なかなか危機に対応しきれなくなってきました。

「田中さん心理的安全性ってやったほうがいいんですか?」とよく聞かれるのですが、やったほうがいい、悪いではなく、やらないとマズいという話だと思います。なぜなら、今後すごく平和な世界になって競合が誰も現れなくて、競争も厳しくなくなる、なんてことは絶対にありません。どちらかというと、日本はどんどん少子高齢化になっていくので、生き残るのに大変な世界になってきます。そうすると、やはり知恵や脳みその数で勝負したほうがいいと思います。

心理的安全性を損なう要因と結果

田中:それでは「心理的安全性はどうやったら損なわれるか?」という話ですけれど、(スライドの)左上に「そんなこともわからないのか」とか「こんなこともできないのか」とか、「勝手に余計な仕事を増やすな」「いちいち意見するな」と書いてあります。これ、思わず言ってしまいませんか?僕正直、5年ぐらい前までは普通に言ってたなと思います。

この5年で世の中大きく変わり、心理的安全性という概念の研究が進んでいます。「こういうセリフを言っていると、部下や組織のパフォーマンスが明らかに落ちます」という研究が世界中で行われている状況です。

当然これ(心理的安全性の低い環境)でも機能はするんですよ。でもこれは言ってみれば、軍隊的マネジメントに近いんです。みんながこの会社でずっと勤めるぞ、という同質性の高い組織だったら別にいいんですけれど、そうではなくなってきたので、こうした(スライドの)4つのことはもう言っちゃダメです、本当に。

これを言ったら普通に転職していきますよね。あと一回言ってしまうと、あとから誤解を解くことにカロリーやルールが必要なので、やらないほうがいいです。

心理的安全性とチーム成果の関係

田中:先ほど、研究成果が出てるという話をしました。(スライドの)これが一番面白いと思います。成果が高いチームと成果が低いチームを2つ様々な因子で比べてみたところ、すべての因子において心理的安全性の高い因子のほうが、成果が出ることがわかりました。

たとえば1つでも「差がほとんどありません」「むしろ逆転しています」という話だったら別ですけれど、心理的安全性が高いチームはちゃんと成果が出せることが様々な項目でも飛び抜けていることがわかってきています。

そうすると、やはり心理的安全性の高いマネジメントなり組織を作っていったほうが得で、マネージャーも楽になるわけです。マネージャーが苦労して心理的安全性を一生懸命上げるのではなく、そのほうがリターンやパフォーマンスが上がるからやる、そういうものだと思っています。

心理的安全性を担保するための重要な要素

田中:次は、心理的安全性を担保するために重要な要素という話です。褒めることだと思うんです、最初は。ただ、褒めるのは難しく感じられるかもしれません。それはですね、「リーダーが全部答えを持っている」と思い込んでしまうのが原因です。

リーダーが答えを持っていなければ、「それいいね」「それすごいね」とやってあげられやすいですよね。称賛とリーダーが答えを持っていないことは、表裏一体だと思います。

この間、日本ラグビーフットボール協会の初代コーチングディレクターを務められた中竹竜二さんとお話ししていたのですけれど、彼がすごく面白いことを言っていました。「とはいえ、リーダーが答えを持っていないと認めるのは難しくないですか?」と聞いてみたら、簡単ですとおっしゃって。

昨日ミーティングで、ちょっと高圧的なことを言っちゃったな、と思ったとするじゃないですか。そうしたら、次の日に「あれちょっとやり過ぎちゃったね、ごめんね」と言えばいいと。

毎日認めてしまえば、リーダーが答えを持っているから称賛ができないとか、答えが出ているからリーダーが苦しくなるとか、そういったことがなくなるよねという話です。まずはリーダーの心を解放するのが結構重要かなと思います。

僕も結構「社長なんだからしっかりしてください」と言われると、ちょっと辛いんですよね。僕も社長初めてなんだけどな、という話なので(笑)。そうじゃなくて、お互い答えを持っていないのだから、お互い知恵を絞り合ってやろうね、となっていけばいいですよね。

称賛を通じて関係性は向上する

田中:たとえばよくあるのは、部下が改善点に気づいてくれました、上司に提案しましたと。この時に2つ分かれ目があって、「いいじゃん!」と言ってもらえるのと、「組織に対して何を言っているんだ、まだまだ100年早いよ」みたいな話になってしまうと、もう二度と組織のために行動するのがプラスとはならないので、ここは結構な分かれ目なんです。

注意したくなる気持ちもわかります。改善点も未熟かもしれません。とはいえ、組織のために行動することがプラスだと思う人を無数に増やしていかないと、自分ばっかりが大変になっちゃいますよね。マネージャーがものすごく大変になっちゃうので、ここは結構分かれ目かなと思っています。

田中:あとですね、上司と部下の認識のズレも結構あります。たとえば、間違いや足りない点を指摘する場合、管理職の人はそんなにやっていないと思っているけれど、一般社員はすごく指摘されていると思っていたり。

また、感謝・貢献に関しては、管理職のほうが「十分やっている」と思っている一方で、一般社員は管理職ほど十分とは感じていない。

ここのギャップが激しいと、心理的安全性は絶対に生まれません。この結果は、ほぼ一般解だと思っています。こういうズレがあるんだなと思うと、やはり足りない点をあまり指摘せず、どちらかというと貢献に対して感謝を示してギャップをうまく埋めてあげると、「組織のために行動するのってプラスだよね、マイナスじゃないよね」というふうになっていくと思います。

新たな時代において「最初に」やるべきことは協働の基礎づくり

田中:結局、最初に心理的安全性を高めるために何をすべきかというと、お互いの特性や考え方、価値観を含めて、対等な立場で働ける土台を作ることがとても重要だと思っています。

組織づくりの進め方に関して、いきなり会社全体を変えようと考えると大変です。まず、チームを変える。そのためにはリーダーが変わる、リーダーが答えを持たないという話ですね。そして、Uniposを導入する。これはちょっと宣伝です(笑)。

あとは組織風土改革ですね。これは一番後回しになりがちですが、最高の投資だと思っています。10年後20年後も、皆さんの会社に社員は入ってきます。その時に「いやちょっとこの風土は……」といったように、この組織に貢献するのは面倒くさいな、と思われる風土にしたくはないですよね。

風土は変えるのに時間がかかります。早めに対処する必要のあるものと思ってます。ですので、否定されるかもみたいな不安感というよりも、やはり安心感を基本の態度として部下に接するのが心理的安全性を高める方法だと思います。

ただですね、ちょっとUniposの話をすると、お互い褒め合う、称賛するのはすごく重要なのですが、一対一で褒め合っていても残念ながら広がっていかないんですよね。まずチームからと思っても、チームも今やリモートワークになってバラバラな所にいたり、働いている時間が違ったりします。たとえば、午前中は送り迎えしている人も普通に存在するわけです。

そうすると、これをどうやって広めていくのかが重要になってきます。広めていくには全員が見られる状況にするのが重要だと思っていて、それはUniposのテクノロジーがお手伝いできるところだと思っています。

(スライドを見せて)こんな感じでチャットツールのようにシンプルに出来ています。一番重要なのは、全公開でお互いどういうことをやったのかを賞賛し合うところがポイントです。

一対一でこっそりやると、賄賂になってしまうんですよね(笑)。あとは、先ほど申し上げたとおり、みんなに広がっていかない。他の人たちがどういうふうな行為・行動をして、この会社のために何かやってあげたんだということを共有し合うことが、心理的安全性や風土を大きく変えていくものになっていくと思います。

ちなみにUniposは、現在数万人に使っていただいています。アクティブユーザー数は8割超えています。ここがミソで、たとえば社内報って僕すごい素敵なものと思うんです。ですが、8割の人が見るかというと、それはちょっと否だと思うんですね、残念ながら。

そうじゃなく、リアルタイムに起きている出来事や貢献が面白いんですよね。たとえば、「今日雨がすごい降っていて、そんな中で頑張った」ということが面白いわけで、それを3か月後に「あのとき雨降っててよかったよね」と言っても、別に面白くないんですよね。

こういうリアルタイムで小さな貢献も認めてあげることが、非常に尊いし面白いので、8割の人が参加します。8割の人が参加すると、会社は変わるんです。1割の人が社内報を読んだとすると、1割の人が変わります。僕はできれば8割の人を変えることが重要だと思っていて、そのためには「リワード」と読んでいるのですが、いわゆるポイントがやり取りされます。

大体30円から100円ぐらいが1回のうちにやり取りされます。会社にとって重要な情報を社員の人が出してくれた対価なので、そこをサボってしまうと、誰も好き好んで自分や他人の活躍をシェアしません。シェアするために払うのは、すごく大事な投資じゃないかと思っています。

(スライドを見せて)もともと僕はダンボールを切り抜いたんです、8年前に。心理的安全性とか人的資本経営とかの前に作ったものです。8時間とか一緒に働いている割には、お互い知る状態になることは、周りの5人ぐらいで精一杯なんじゃないかなと。30人とかになるとバラバラになってしまい、誰が何をやっているのかが非常にわかりづらくなると思います。

Uniposを使っていただくと、誰が何をやっているのがはっきりわかり、相互理解が促進します。

(スライドを見せて)今このような方達と一緒にやらせていただいています。店舗型から金融から様々な産業で実績がありますので、「自分はこんなのに向いていないんじゃないかな」という方ほど、僕らどちらかというと燃えるタイプなんです。ぜひご一緒したいと思っています。

Uniposでどれくらい成果が出るの?という話なんですが、(スライドの)右側見ていただくとわかるように、圧倒的にコミュニケーションが取りやすくなります。皆さん、上司・部下間や同僚間で悩んでいるかもしれません。ですが実は、部署間のコラボレーションが会社にとって一番重要にもかかわらず、ここを高めることがあまりできていないんですね。

チャットツールを入れたから部署間連携があるかというと、他の部署のチャットエリアにそもそも行かないんですよね。部署を越えて・またいで良いものを作ろう、というふうにやっていると思うので、そこの一番出てこない情報をUniposで出してみると、圧倒的に成果が出ると思っています。

最後はロードマップの話です。難しいのですが、いきなり心理的安全性を上げよう、と言ってもあまり変わらないと思っています。まずお互いがどういうことをやっているの?という基礎の部分を作っていただきます。

心理的安全性が上がると、挑戦の数は増えていきます。そして、そのあとに風土が作られていきます。風土って環境だと思うんですね、土壌と言ってもいいと思うんです。その土壌を作るためには、「誰か何をやっているか」「心理的安全性が高いか」「自律的な行動が生まれているか」という3点があってはじめて風土が大きく変わっていくのだと思っています。

以上です。

飯田:ありがとうございます。今日から実践できる内容をたくさん盛り込んでいただいたと思います。

ちなみに、Uniposを入れると組織に非常に良い影響があります。実は昔そういうことをブログに書いたこともあり、個人的にも非常にオススメできるサービスだと思っています。詳しくは「ミキワメ Unipos」などでググってご一読いただければと思います。

昭和型の厳しい組織風土をどのように変えていけばいいのか?

飯田:いくつか質問していきます。「組織風土改革をしよう」とか「相互理解を深めましょう」と言っても、なかなかできない職場も多いと思います。特に時代が変わりつつある中で、いわゆる昭和型の厳しい社会、厳しいフィードバックを得ながら成果を出してきた原体験が強い方だと、どうしても自分にも部下にも厳しくしてしまったりしがちです。結果として、心理的安全性が損なわれる、ということがよくあると思います。

まずこうした風土があったり、そのような癖を持つマネージャーや経営者がいらっしゃった時に、どのように変えていくといいでしょうか?

田中:そうですね。「でも、全部自分で答えを持っていると、逆に不安じゃないですか?」という話だと思うんです。もちろん決めるのは経営者だと思うんですけれど、色々な案があったりバックアップ案があったりして、「もしこの案がダメでも次にいこう」といったように、選択肢があればあるほど企業の生き残る可能性が高まる、という話だと思います。

どちらかというと、心理的安全性が高い組織と高くない組織と、どっちが選択肢増えますか?という話です。

心理的安全性の高い組織のほうが、明らかに選択肢は増えます。ですので、別に難しいことでもなんでもなく、そっちのほうが得だという話だと思っています。もちろん、色々な研究結果も出ていますから、嘘ではありません。

一方で「俺しか答えを知らないんだ、他の人は言うこと聞け」とやると、じゃあ僕たちは考えなくていいな、となって選択肢が減ってしまいますよね。

自分も答えを知らない、と経営者が開示することの重要性

飯田:ありがとうございます。先ほど、無知・無能・邪魔、そして否定的な表現、こういう形でメンバーとコミュニケーションを取ると、組織の心理的安全性が損なわれるというお話がありました。

昔はそういうことを言っていた時代もあるとお話されていたのですが、田中さんが「心理的安全性が高いほうが色々なアイデアが出てきていいじゃないか」と気づき、無知・無能・邪魔、否定的な表現を人にかけなくなるきっかけとなったエピソードはありますか?

田中:そうですね、経営危機を迎えたり離職が続いたときが何度もあったりとか、色々な課題に直面していました。そのときに一人で悩んでいると、だんだん精神的に病んでくるわけです。

あるとき「いやぁ今悩んでいるんだよね、どうしたらいいかな」と僕は答えを持っていない、みんなから色々知りたいと素直に言ったら、みんなすごく意見を出してきてくれたんです。そうか、絶対こっちのほうが会社の生き残る確率が上がるな、と素直に信じられたので、そこからですかね。

飯田:そのときは会社も苦しい時代だと言っていましたが、具体的にどのような声が従業員から上がってきたんですか?

田中:たとえば「この事業、僕に任せてください」とか。え、任せていいの?という感じで。社長や経営者は現場を離れているので、最新のことがわからなくなってくるんです。ですので、明らかに任せたほうがいい。でも「僕が考えるから」と言っていたら、僕に任せてくださいという発言は出てこなかったわけで。

あ、色々ご質問いただいていますね(笑)。

飯田:いくつかピックアップしていきます。

目立ちにくい部署や役割の人を賞賛していく方法

飯田:心理的安全性が大事ということを、皆さん認識されたんじゃないかと思います。ただ、どうしても褒められやすい仕事や目立つ仕事があった時に、公平感が出ないとか、もらえるピアボーナスの額が違ってこないですか?といったご質問をいくつかいただいています。

目立ちづらい部署や役割の方を賞賛していくには、どうすればいいでしょうか?

田中:やはりリーダーが気をつけてあげることがすべてだと思うんです。様々な会社でUniposを導入してきた中で、「みんな目立たないと思っていたけれど、こういう想いを持ってやっていたんだ」といった声をすごくいただくんですね。

営業の人が目立つのは、普通なんですよ。十分に目立っているので、別にいいんです。目立たない人がフィーチャーされるのが、ピアボーナスのいいところです。一番を決めるものじゃなく、毎日やるものなので。毎日活躍する人はいないので、十人十色の活躍が見えるということです。

それほど不公平感が生じにくいのが、ピアボーナスだと思います。

リーダーの意識を変える働きかけとは?

飯田:ありがとうございます。ちなみに、まずリーダーから実践していくという話をいただきましたけれど、リーダーがそもそも心理的安全性の重要性に気づいていないとか、気づいていたとしても、Uniposの利用や人を褒めることに対して前向きではない、そうした行動が苦手なケースもあると思います。

そうしたリーダーを変えるためには、どのような働きかけをするといいでしょうか?

田中:この間ある会社で面白いなと思ったのが、新規事業プランコンテストを出している部署と出していない部署を、Uniposでデータ分析してみたんです。そうしたら、明らかにUniposを送り合っているほうがたくさん意見が出せるので、新規事業プランコンテストの量が違いました。

新規事業プランコンテストが会社にとって重要だとしたら、会社に意見を出すことがいかに得かをちゃんと評価してあげることが、とても重要だと思うんです。

全部社長の力で新規事業を考えているので、一切いりません。部下はただ働いていればいいんです、という組織であれば、心理的安全性を別にやる必要もないと思うのですが、そんな組織は存在しないと思うんですよね。

ですので、少しでも意見しづらい状態を無くすことが重要です。ぬるい組織なんじゃないですか?みたいな話ではなくて、重要なのは言いやすい組織だということです。ぬるい組織というのは、おそらく言いづらい組織だと思うんです。みんなぬるいから、別に何も言わなくていいじゃん、となってしまうのではないでしょうか。

心理的安全性の高い組織でも、厳しさもあっていいと思います。お互いストレートに言い合うので、ちょっと傷ついたりもします。ですが、それだけ意見が活発に出ることが、何よりの価値だということですね。

飯田:たしかにそうですね。敬意を持って話すことと、感じたことを忖度なくきちんとコミュニケーションすることは両立できますよね。

田中:そうなんです。ストレートといっても、傷つけてはいけないんです。傷つけてはいけないんですけれど、対人関係のリスクがあるからといって、自分の意見を言わなくなることがよくないんです。

飯田:なるほど、ありがとうございます。

心理的安全性の担保をどう測定するのか?

飯田:ピアボーナスにかかわらず、心理的安全性が高いチームを作ったマネージャーや、エンゲージメントスコアの高いチームを作ったマネージャーを称賛する・評価するというのは、よくある議論だと思います。

一方で、それが行き過ぎてしまうと、活動が形骸化してしまう点も。このあたりのジレンマがあると思います。そもそも、メンバーの心理的安全性が担保されていることをチームの責任者の評価と紐付けるべきか、また、個人の心理的安全性が担保されているかどうかをどう測定するのか、この2点を教えていただけないでしょうか。

田中:評価はなかなか難しいと思います。まず、成果を上げた人が評価されるのは当然だと思います。いくら心理的安全性が高いチームを作れたからといって、成果の上がらないチームを率いていたら、それは評価に値しません。やはり成果がまず第一です。

一方で、色々な研究を見てみると、明らかに心理的安全性を高めたほうが成果を出せることがわかってきています。したがって、ある程度評価に入れてもいいと思っています。

Uniposのユーザーさんで、目安以上の回数をマネージャーが送ったら加点評価します、というふうやっている会社があります。減点形式ではありません。そうすると、送ったほうがいい、称賛したほうがいいとなってきますよね。

心理的安全性が高いのを評価の第一項目にすると、成果が上がらないこともあるので、まずは成果が第一。ですが、その成果の重要指標として心理的安全性が大事なので、加点で評価していきましょう、という流れであればいいのかと思います。

飯田:それはすごくいいアイデアですね。心理的安全性が行き渡った組織を作るという大きな目標を最初から掲げてしまうと、結構難しいものです。まずは賞賛し合えるようにしよう、称賛行動を多くしよう、といったように、変えられるアクションから一歩一歩取り組むのが大切なんですね。ありがとうございます。

経営側が心理的安全性に興味がない場合、どうすればいいか?

飯田:質問がガラリと変わります。本セミナーの他のセッションも含めて、色々な新しい考え方・いいチームの作り方はわかったけれども、経営陣がわかってくれない、という現場の皆様の悲痛な叫びが寄せられています。

「経営に意見を言うと、組織から排除されます。また、社員がスパイとなり、経営に社員の言動を報告するようなチームについてはどう思われますか?」と。これはかなり激しいパターンかもしれませんね。経営が心理的安全性を担保することに興味がないとか、むしろそういう動きを封じ込めようとすることはよくあると思うんですけれど、その場合、現場からどのように組織風土改革を進めていけるでしょうか?

田中:そうですね。まずUniposを入れましょう、というのもありだと思うんですけど(笑)。数百社に対して提供しているサービスなので、同じ業界でもこういった事例がありますよ、こういうふうに変わりましたよ、という情報やノウハウが蓄積されています。ですので、そこは相談していただきたいと思っています。

もう一点としては、まずUniposなしで経営陣の方と対話することから始めなきゃいけないのですが、経営陣があまりにも凝り固まっていたら、転職してもいいと思います。やはり、お互い答えを持っていない世界じゃないですか、僕らこの会社が好きです、だから生き残りや競争力を高めるために色々なオプションを持っておきませんか?と提案してみる。それを否定はしないと思うんです、さすがに。

そのためには、結局色々な人の意見が自由に出る環境があったほうがいいですよね、と。ここはまず握れる部分だと思っています。そこを否定しちゃう人もいるかもしれませんけれど、最近では理解を示す人も増えてきているように思います。

心理的安全性と規律は両立しうる?

飯田:なるほど、ありがとうございます。ちなみに経営のオプションを増やす、フラットに意見が出るようにしていく話がありましたが、一方で組織内のルールや規律をまずしっかり作り、経営者やマネージャーの持ち場にいる人たちが決まったことをしっかりとやっていくこと、つまり、フラットさよりも規律を作ることが組織において重要である、というマネジメント論もあると思います。そういう考え方についてはどう思われますか?

田中:心理的安全性と規律は成り立つものだと思っています。いわゆる軍隊的な規律ではなく、たとえばある程度柵があります、この柵の中であれば自由にやっていいよ、と。枠があってその中で自由にやるという話と、意見の言い方から敬語の使い方まで全部決まってます、という規律の種類もあります。そこのギャップはちゃんと埋めたほうがいいかもしれません。

柵もなしに完全放牧するわけではないんです。柵というのが心理的安全性で、この中であったら誰にもバカにされず、主張しても認めてもらえる、といった環境があると、みんなが活躍できると思います。

飯田;今の議論は非常に重要ですね。自由さと規律・ルールは二律背反的に捉えられがちですが、柵もなく野に放つのは逆にバラバラになってしまったり、不安になったりする部分もあると思います。どこまで柵を狭くするのか、広くするのかというのは、会社の考えによって違ってくるかもしれません。

きちんと規律を作ることと、心理的安全性を高めていくことは二律背反ではない。そこを認識することが重要ということですね。

心理的安全性な組織をチーム一丸となって作るために必要なポイント

飯田:色々な会社さんから聞く話があります。経営陣は心理的安全性が大事だと思っている、現場もそう思っている。ただ、マネージャーが様々なしがらみに縛られている中で、なかなか心理的安全性を体現できなかったり、推進できなかったりするパターンがよくあると。

各レイヤーの目線を揃えて、かつ心理的安全性な組織をワンチームで作っていくために、どういうふうにしていけばいいでしょうか?

田中:先ほど講演で少し申し上げたように、いきなりすべてを変えるのは難しいと思います。色々な会社で多いのは、いくつかチームを作り、心理的安全性の高い組織を作ったほうがパフォーマンスが上がると証明されていき、成果が出た上でやっぱりそうだよね、と横展開していく。それが王道だと思います。

心理的安全性に興味がある人、そういう環境を作ってみたい中間管理職の人をピックアップして、実験的にやってみるのが一番いいかもしれません。心理的安全性を測るものや社内アンケートのように、データをトラッキングする方法はたくさんあるので。

どこの部分が変わったのかがはっきり数値でわかれば、感覚で思っていたけど数字で見たらそうじゃないんだな、というふうに納得しながら進められます。いきなり全部やるより、パイロットでいくつかやるのがいいと思います。

飯田:きちんと心理的安全性を高めようとか、そのための第一歩として賞賛していこうということですね。

高圧的な態度で接してしまう上司・マネージャーを変えるためには?

飯田:非常に良いアイデアだと思うんですけれども、どうしてもちょっと気づけば高圧的なことを言ってしまうとか、皮肉っぽい意見を言うことが癖になっている方もいらっしゃいますよね。

心理的安全性が大事だ、ということに同意してもらえない場合もあるかもしれません。また、同意はしているけれども、つい癖でそうなってしまうパターンも多いと思うんです。そういう人に進化・変化していただくために、どのようなアプローチが有効でしょうか?

田中:中竹竜二さんに教えてもらった、次の日に速攻謝る、これが有効だと思います。「あれはちょっと言い過ぎだと思わなかった?ちょっと反省しているんだよね」「次直すにはどのように言ったらいいかな?」と、全部自分の頭で答えを探すのではなく部下に打ち明けていくと、部下のほうも受け止める能力が上がり、上司も変われる。ですので、まずは謝るのが一番いいと思います。

飯田:だんだん自分自身が変わることもそうですけれど、たとえ間違えても、間違いかけた瞬間に指摘してもらえたり、少しずつ望ましくない言動を減らしていけたりできれば、信頼関係を深めていけますよね。

田中:やはり上司の方は偉いし、ノウハウや経験も持っています。ですが、上司というのが役割だということを忘れてはいけません。偉くて間違いのない上司、となってしまうと、全部自分でやらないといけなくなってしまうので、結局みんなに助けてもらったほうがいい。さっきの議論に戻ってしまいますが、中間管理職の人が押し潰されないように、答えを他の人に求めていくのが大事だと思っています。

飯田:第一歩として称賛する文化を作ったり、それが自然にできない人も謝ったり、部下の方に指摘していただきながら少しずつ変化していくアプローチが有効だということですね。

企業の飛躍的な成長には、熱量・熱気が必要となる

飯田:そういう空気感ができた会社の次に起きる課題としては、どういう課題が多いですか?

田中:やはり、非連続な成長が起きるかどうかだと思います。心理的安全性が担保されていて、みんなの脳みそがたくさん使えるようになっていけば、線形の成長は実現できます。今度、飛躍的な成長を促すためには、心理的安全性の次の要素、熱狂が必要になってくるんです。

「このリソースと機会を使い、どうやったら新しいことができるか?」「さらに2倍3倍の成長を目指せるか?」という非連続の成長では、脳みその数だけじゃなく、エネルギーや情熱が必要だと思います。それが掛け合わさってはじめて非連続な成長にいけるのではないでしょうか。

飯田:そうした熱量・熱気を組織の中で生み出すポイントやヒントはありますか?

田中:これはUniposを使わなくても、できることがあります。それは、社員の良い行動を何回も咀嚼することです。一回褒められてMVPをもらったけれど、あとはずっと忘れられたりする時もあると思うんですよ。そうではなく、何度もこれがいいんだ、これがうちの会社にとって非常に素晴らしい行動なんだ、というのを3か月に1回とか半年に1回、全社集会を使って褒めてあげる。みんなの前で褒めてあげて、上司が「なぜその人の行動が素晴らしいのか」を解説・解釈してあげる。

こうしたことを繰り返すのが重要だと思っています。ですので、リアルタイムじゃなく、過去のことを含めて、「なぜその行動が良かったのか」という点を見てあげるのがいいのかなと思います。

飯田:ありがとうございます。早いものでまもなくお時間となります。本日は心理的安全性の重要性を知るだけでなく、一歩一歩の努力の積み重ねで心理的安全性を作れるんだ、というイメージをみなさんに持っていただけたように思います。

この時間はUniposの田中社長にお越しいただきました。どうもありがとうございました。

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