講演レポート

「DeNAから学んだ『”センス”や”飲み会”で終わらせないための人材育成・マネジメントの型』」

2023年3月20日、株式会社リーディングマークによって開催された「みんなのHR博覧会 by ミキワメ」において、株式会社EVeMの長村禎庸氏と株式会社Momentorの坂井風太氏が、「DeNAから学んだ『”センス”や”飲み会”で終わらせないための人材育成・マネジメントの型』」と題して講演しました。講演要旨は次のとおりです。

長村氏の自己紹介

長村:私は、リクルートを出たあとにDeNAに勤めました。DeNAのときに初めてマネージャーになり、そのマネジメントの経験を活かしてハウテレビジョンという会社に入社しました。2020年にはEVeMという会社を創業し、ベンチャー企業の経営者やマネージャーにマネジメントを教える仕事をしています。

長村:自社が提供しているサービスは2つあります。1つが「EVeM for Business」という、法人向けのマネジメントトレーニングです。累計で500人以上の方に受けていただき、高い満足度を誇っています。

もう1つが「Emo」という個人向けスクールです。色々な会社のマネージャーが参加するスクールで、3か月に1回の頻度で実施しています。

坂井氏の自己紹介

坂井:坂井と申します。私もDeNA出身で、新卒入社後に子会社の代表などをしていました。それと同時に人材育成やマネジメントの形式知化といった領域を担当していました。現在は株式会社Momentorという会社の代表を務めています。

簡単に自社事業を紹介します。スライド資料に示されている図が重要で、上の部分が「ミッション・ビジョン・バリュー」であったり、1on1の導入といった組織施策に該当します。この上の構造への取り組みに終始しても、組織は変わりません。この下の部分のほうが重要で、本質的な組織基盤構築が大事ということです。

組織を形成しているのが各ユニットリーダーであったりマネージャーであったりするので、この対象層に対して正しいマネジメントを理論的かつ実践的に指導する点に重きを置いて事業を展開しています。

組織の成長が失速するパターン

飯田:組織の成長が失速したり、行き詰まってしまったりする原因としては、どういうパターンが多いのでしょうか?

長村:マネージャー不在の組織だと、経営者が直接メンバーへマネジメントすることになります。それだと限界があるので、次第に新しいことへ着手できなくなり、組織が停滞してしまいます。

また、単にマネージャーが増えればいいという問題でもありません。やり方や流派は人それぞれなので、経営者とマネージャーの間で共通の会話ができずに、組織が停滞してしまうケースがあります。

例えば「戦略」という言葉ひとつとっても、定義を一致させるのは困難です。言語や共通の型がないことが、組織的な活動が進まない原因になることもあります。

概念や言葉の共通理解を深める

飯田: 概念や言葉の定義を揃えていくという点について、坂井さんはどのように考えますか?

坂井:共通言語化することで、問題を正確に把握し、対応策を練ることが可能になります。

「この時ってこうだよね?」といった部分がスムーズになるため、組織で無駄に悩む時間が減ります。そういった意味でも共通言語化は重要なポイントです。

ただ私は、パッチワーク型のマネジメントには懐疑的です。「心理的安全性が流行っているからやってみよう」という考えでは、マネジメントのバランスが崩れてしまいます。「また経営と人事が流行りの理論を拾ってきたんだな」と従業員に反応されるため、推奨していません。

組織効力感が低下したときの対処法

飯田:組織効力感が一度停滞したり下がったりしたときは、どのようにして再びブーストしていけますか?

坂井:組織効力感は、世の中で「モメンタム」と言われているものです。そのモメンタムには2種類あると思います。1つ目は、「売り上げが伸びてます」「こういうPRをやっていきましょう」といった花火型のモメンタム。エナジードリンク的なもので、あまりおすすめしません。組織基盤からアプローチしたほうがいい。

少し話が脱線しますが、自己効力感だけにフォーカスする組織は危ういです。自己効力感の高い人材を採用し育成しても、「組織効力感」のマネジメントを怠ると、問題が生じる可能性があります。

自己効力感が高い人と組織を繋げる方法

飯田:自己効力感の高い人と組織を結びつけるためには、どのようなアプローチが必要になるでしょうか?

坂井:結局は、個人の目的と組織の目的がセットでないといけません。お金を稼ぐこと以外のものが対話を通じて見つけられなければ、人材を繋ぎ止めるのは難しいと思います。

内発的動機は伝播していきます。組織はオセロみたいなものなので、自己効力感が下がってくると「誰も寄り添ってくれない、辞めようかな」となってしまう。ミドルマネージャーの存在が重要で、オセロで例えると四隅はミドルマネージャーです。その部分に正しい理論や実践知を入れていかないと、自然と組織効力感が落ちていきます。

ミドルマネジャーを育成するポイント

飯田:ミドルマネージャーを育成するためには、何が大事になりますか?

長村:マネジメントには型があります。それを最初にたくさん学び、その後状況に応じて引き出す訓練をしていくことがポイントです。また、マネジメントは一つの事象に対して一つの型ではなく、応用問題のようにその時々で適切な型を引き出す必要があります。

型とそれを引き出す能力があれば、どんな人でも一定のパフォーマンスは出せます。個人的にはこのやり方が一番いいと思っています。

マネジメントのあり方

飯田:マネジメントのあり方についてはいかがでしょうか? 

坂井:私の言葉ではありませんが、ある方が「マネジメントの仕事は成果を加速させること」と言っていて、すごく共感しました。マネージャー本来の役割は、その一点といえるのではないでしょうか。

飯田:長村さんはどのようにお考えですか?

長村:マネジメントにおいては、過去の経験や思い込みに頼らず、最新の考えや理論を客観的に説明できる必要があると思っています。セオリーや理論は常にアップデートされていくものであるため、常に最新の知識を持ち、ロジカルに説明できることがマネジメントに必要な要素です。

心理的柔軟性を担保する方法

飯田:心理的柔軟性という言葉がありますが、これを担保していくためにどういうことが必要になってきますか?

坂井:グループコーチング形式で他者との対話機会を設けることで、自分の当たり前が当たり前でないことに気づけます。心理的柔軟性は、変わるべきところを変え、変えなくていいところは変えないという力です。他者との比較や対話を通じて「べき論」に疑問を抱けるのが、組織内対話の効用だと思います。

締めのメッセージ

飯田:残り時間がわずかとなりました。最後に締めの一言をお願いします。

坂井:今日特にお伝えしたかったのは、1点目が組織効力感の重要性。そして2点目が、自社の当たり前が本当に当たり前かを見直す機会を設ける必要性についてです。これらのポイントをサポートするために、私や長村さんの会社が存在するということです(笑)。

長村:私も坂井さんも、一定の理論や型を提供する事業を展開しています。ただし、「なぜそれが必要か」という問いなしに我々の提供する型を利用するのは危険です。「フレームワークを埋めるだけ」「やるべきことをやるだけ」ではなく、なぜそれが大事なのかという点を、自分たちで噛み砕きながらやっていく。それが良いマネジメントに繋がります。

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